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    【第113回】「ベースは◯楽器だと思え」ピッキングの瞬発力をアップさせるイメージとは?  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

    • Text:Jun Ishimura

    今回は、右手のピッキングの瞬発力を上げるのに役立つイメージの話です。

    右手のピッキングの肝のひとつは瞬発力です。別の言い方をすると、指が弦を通過するスピードが速いのが基本で、ヌルッとした遅い弾き方はあまり良くないです(あくまでも基本なので例外はあります)。この瞬発力を養うエクササイズはいろいろありますが、今回はエクササイズではなく、その前の段階の話です。

    身体を動かすとき、まず脳内の運動イメージが先行して、そのイメージに沿って身体が動くらしいです。つまり、実際に身体を動かすエクサササイズはもちろん大事なんですが、それに先行する運動イメージが間違っていると出てくる動きにも問題が起きるんですね。ということで、今回のテーマは、ピッキングに必要な瞬発力を身につけるための運動イメージの話です。

    伝説的なバンド“ゴダイゴ”を作って育てたプロデューサーで、僕のリズムの師匠であるジョニー野村さんの教えのひとつが“ベースを打楽器だと思って演奏しろ”でした。これで僕の右手のピッキングが大きく変わりました。これが具体的にはどういうことなのか、ジョニーさんが見せてくれた説明を再現します。

    座って、膝の真上に左手を浮かせます。この左手が3弦、膝が4弦、右手がピッキングする指だとします。指弾きで一般的なアポヤンドで弾く場合、3弦を弾いた指は4弦に触れて止まりますよね(両手と膝で表現)。

    さて、3弦(膝の上に浮かせた左手)を弾く場合、この3弦そのものをなんとかしようというイメージで弾くのではなく、その先にある4弦(膝)を指(右手)で叩くイメージで演奏しろ、と言われました。

    まず、左手(3弦)はいったん脇に置いて、右手(指)で膝(4弦)を叩きます。当然、右手(指)の動きのイメージとしては、膝(4弦)を叩く瞬間がゴールです。この膝(4弦)を叩く軌道の途中に左手(3弦)があるので、必然的に右手(指)が左手(3弦)を通過して、弦が振動する、という感じです。この“通り過ぎる”感覚が大事です。

    気を付けてほしいのですが、“ベースを打楽器だと思え”とか“3弦を弾くときは4弦を叩くつもりで”というのは例え話なので、文字通りに受け取らないでください。“力任せに弦をぶっ叩け”と言っているわけではないんです。大事なポイントは2点。

    ポイント① 瞬発力

    “打楽器”とか“叩く”という例えは、要するにピッキングの瞬発力が大事、ということです。たとえば“シンバルを叩け”と言われたら、手首のスナップを効かせてスティックを素速く動かしますよね。スティックでシンバルをゆっくりなでたりはしません。ベースの場合も、ヌルっとした動きで弦をなでるのではなく素速い動きで弾け、という意味です。 これは、力任せに弾いたり、乱暴にガシャガシャ指をバタつかせることではないです。必要なのはスピード=瞬発力だけで、力は抜いたほうがいいし、最終的には指が動く距離もコンパクトにしたほうが良いです。つまり、小さく、軽く、素速く動かす。これが大事です。

    ポイント② 弦を通過する

    弾く弦はあくまでも通過点で、弾き終わったあとに指を乗せる弦がゴール、というイメージで弾くことが大事です。これによって自然と瞬発力が生まれます。

    これを言われたころ、僕はヌルッとした弾き方をしていて音も抜けない感じだったんですが、練習するときにこういうイメージを持って取り組み続けたことでピッキングの瞬発力が上がっていきました。皆さんもぜひ練習に取り入れてください。石村順でした!

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    石村順
    ◎Profile
    いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

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