どの曲も同じように愛が注がれている。
━━「野球」については、ストレートなロック・サウンドである種原点に立ち返っているようなところがあったのでしょうか?
いや、ふざけているだけでしょう(笑)。まあ、それも曲の“始まり”というか、きっかけがふざけているという感じです。自分たちはよくやるんですけど、みんなでプリプロをやるときに、曲作りのテーマをもらうんですよね。それで、誰かが言ったのが“野球”やったから、天理高校(高校野球の有名校)のテーマをとりあえず引用して、あとからバンド・サウンドが始まっているというだけなんです。そういった風にきっかけはふざけているけど、打球音のサンプリングとかはくそ真面目に入れている感じですね。
━━あの打球音、すごいですよね。“カキーン!”っていう硬さが絶妙で。
プロ野球選手は木製バットだけど、みんながイメージする打球音って金属バットでの音に近いと思うんですよ。そうやって打球音ひとつをとっても音像についてめちゃくちゃ真面目にふざけたことをやっています(笑)。この曲はコロナ禍になる前にライヴでやっていた曲で、会場の場所によって繁くんが“かっとばせよ〜”の部分をご当地に替え歌して歌ったりしていて思い出深いですね。
━━なるほど、わかりました。今作についての話を聞いていて、数々の遊び心から音楽への愛を感じるアルバムだと感じました。ご自身で振り返ってみて、どういったアルバムだと思いますか?
遊び心というのももちろんやと思うんですけど、“おふざけで自分たちが楽しいっていう遊びから始まっていることをどれだけ真面目にやるか”というのが自分たちのバンドのカラーでもあると思うんですよね。“ちゃんとした良い曲”というものがあって、それに対して向かっていくのと同じように、ふざけた曲でもカロリーや情熱を注ぎ込む。それは、今回は特にコロナ禍においてやれることは全部やって、試せるものは全部試すっていうようなことを考えていましたね。そのなかで“これ!”っていうのを探して、それが違ったらもう1回ゼロから作る、みたいな。そういう意味で、ものすごい心血を注いだ作品ではあるなという気はしています。だから、聴く人が聴いたらとっちらかったアルバムやとは思うんですけど、全部において、何かしらの情熱なのか愛なのかが込められていると思います。
━━“愛”。アルバムのタイトルにもあるキーワードですね。
どの曲も同じように愛が注がれているので、それによってアルバムの統一感が生まれているのではないかと自分たちでは思っています。
EQUIPMENTS
BASS
OTHERS
◎PROFILE
さとう・まさし●2月1日生まれ、京都府出身。高校に入学してからベースを弾き始める。その頃に岸田繁(vo,g)と出会い、くるりの前身バンドを結成。その後、立命館大学の音楽サークルでくるりとしての活動をスタートする。1998年にシングル「東京」でメジャー・デビュー。国内にとどまらず、海外にも活躍の幅を広げ、ロックを基盤に実験的な試みで新たなサウンドを模索し高い評価を得ている。これまでに12作のフル・アルバムなどを発表。2021年4月28日に13作目となるフル・アルバム『天才の愛』をドロップした。
◎INFORMATION
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