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【特別鼎談】木下正行(locofrank)× JOJI(dustbox)× gure(HAWAIIAN6)
- Interview:Koji Kano
- Photo:Yoshika Horita
壮大なイメージの曲にしたかったので、
ベースらしいウネリを全面に出すべきだと思ったんです。
━━gure(HAWAIIAN6)
━━ベース的に気になったのは、HAWAIIAN6の「No Age」、「The Ocean」では明らかにローB弦の音が鳴っていることです。メロディック・パンクで5弦ベースを使用するというのはかなり珍しいですよね?
gure 使ってみたいから使ってみた、っていう初期衝動的な感じですかね。
木下 それはこのジャンルではあまり5弦を使っている人がいないからって意味もあるの?
gure うん、もちろんそういうのもあったね。
JOJI ようは調子に乗ったってことだな。
木下 でもなんで5弦を使ったのかは聞きたかったんだよね。正直、“そんな振り幅いるか?”って思ったし……だから俺もジョッさんと同意見。“調子乗ったんだろうな”って(笑)。
gure でもいきなりってことではなくて、前のシングルでドロップDを試していて、その感触が良かったっていうのもひとつの理由。だから“もっと低く潜ってもイケるだろう”って判断で5弦にしたっていうのもあるし、ハワイアンのベース・フレーズって縦横無尽に動くから、嫌なところで腰高になっちゃうところが以前から少し気になってたんだよね。5弦にすればロー・フレットで縦の移動ができるから、もう少し下に潜った状態で分厚さと動きが両立できると思ったんです……っていう調子の乗り方ってことでいい?
木下 ええこと言うやん。やっぱり、お前のそういうところがいいところなんだよ。
JOJI そうね。そこがgureのいいところ。だからお前はもっと調子に乗ったほうがいいんだよ。俺が5弦なんか使ったらパニックだわ。
木下 さっき初めて5弦ベースを触らせてもらったけど、歌いながらこれ弾くのはちょっとキツイわ。
JOJI ラウド系だったら普通だけど、このジャンルで5弦を使うのって……やっぱりただの調子乗りだわ(笑)。でもこれを突き詰めたら唯一無二の個性になると思う。
木下 そういう意味だとgureは先駆者だな。
JOJI 突き詰めたら絶対カッコよくなると思うし、お前が5弦を使うことで、“メロディック・パンクでも5弦を使っていいんだ”って考えになると思うんだよ。ベースの可能性を広げるって意味でもすごい決断だと思うよ。
gure まだまだ試行錯誤の段階だけど、“全然アリだな”って思ったのでもっと突き詰めていきたいですね。
━━「The Ocean」は低音域から高音域まで、グリスのニュアンスが際立ったメロディアスなフレージングで、緻密な和音の使い方も見事です。ベース・フレーズが楽曲の中心として存在していますよね。
gure 壮大なイメージの曲にしたかったので、ベースらしいウネリを全面に出すべきだと思ったんです。フレーズにはかなり悩んだんですけど、頭に浮かんだものを思い切り詰め込んだって感じですかね。
木下 この曲のベース・ライン、めちゃくちゃ好き。狙いどおり壮大なイメージでウネウネしてて、してやったりなプレイだと思う。このベースが楽曲のスケールを広げてるよね。
JOJI うん。このプレイがやりたくて5弦を使ったんだろうなって思った。
gure 潜水艦のごとく、潜ってから急浮上するイメージでラインを作ってみました。2サビの入りの急にベースが出現する感じとか、けっこう狙いどおりにできたかなと思います。ファズをかけたベース・ソロは(安野)勇汰(HAWAIIAN6のvo,g)さんの発案なんですよ。どうしてもここでベース・ソロを入れてほしいって。
JOJI 勇汰も大人になったな。そんなこと言うようになるなんて。アイツからベース・ソロなんて言葉が出てくるとかびっくりだよ。
gure 言われたとき僕もびっくりでしたよ。それに歪ませ方も“絶対ファズってお願い”って。ファズ特有の歪み方がキモで、ブリッと前に出てるクリーン・パートと比較すると、ファズをかけたことでソロなのにちょっと引っ込み気味になる。そのギャップがおもしろいなって思います。ちなみに最後はハウらせなきゃいけないんですよ。だからライヴだとスピーカーにベースを向けて、戻ってすぐ踏み変えるっていう、大変だけどおもしろいパートですね。
木下 あのパートってそんなことしてるんだ。細かいことやるね〜。ライヴで観るのが楽しみだわ。
━━個人的にdustboxの楽曲は、JOJIさんの奏でるベース・ラインの存在感がすごく強いと思っていて、幅広い音楽からのインスパイアを感じるんです。例えば今作の「Contrast」では、休符を生かしつつ、コード・トーンを綺麗に刻んだ印象的な動きを演出していて、いい意味でメロディック・パンクの枠組みでは括れないプレイだなと思いました。
JOJI ウチらはそこを狙ってるんですよ。ガツっとしたメロディック・パンクじゃなくて、自分たちにしかできない、ほかとは違うことをしたいと思っていて。「Contrast」に関しては、俺の好きなスウェディッシュ・ポップな感じのニュアンスを取り入れてみました。ほかの曲に関してもそうで、全曲ともにかなりこだわりましたし、“ロコとハワイアンにカブせたくない”って気持ちは持っていましたから。
木下 ダストの3曲はジョッさんのベースのいいところが全部出てると思う。そもそも、ジョッさんはある意味ベーシストではないと思うんですよ。曲のベースを構成するというよりかは、ベースでメロディを描いているというか。理論がどうとかじゃなくて、気持ちいい空間をベースで表現するのがすごく上手なんですよ。それはジョッさんがデザインが好きってところにも通じるかもしれないけど、“ベースはこういうものだ”って概念が良い意味で伝わってこないんですよね。
gure それは僕の5弦の話とある意味同じかもしれないですね。だからこそ聴く方もメロディックって枠組みに縛られないというか。
JOJI そうかもしれない。ってかそもそも俺の場合、理論がわからないから(笑)。
木下 “dustboxワールド”があると同時に“JOJIワールド”があるんですよ。だからgureの言うとおり、“メロディックはこうでしょ?”って変に囚われることもなく聴ける。それはハワイアンも一緒で、これだけの哀愁を放ってるメロディック・バンドなんて聴いたことがない。だからダストもハワイアンも先入観で聴くバンドではないと思うし、それがこの2バンドのおもしろさなんですよ。
JOJI ちなみに「Daybreak」のイントロのベースはSUGA(dustboxのvo,g)のアイディア。最初聴いたとき、“このベース・ラインすごいな”って思ったんだけど、ギタリストの作るベースってどこかクセがあるじゃない? でもそれだって個性に直結する大事な視点だと思うんだよね。だからそのアイディアをほぼ丸々採用した。でもBメロの細かい動きは俺のエゴというか、どうしてもああいうプレイを入れたくて。
gure やっぱり、メロディック・パンクのベースはBメロがカギになるんですよね。
JOJI そうそう。Bメロでベース動きがちっていう。ここは自分が好きな感じの、ちょっとジャジィなプレイを入れてみた。
gure JOJIさんはダブル・ストップの使い方が上手ですよね。JOJIさんのベース・ラインがバンドとしての個性につながっていると思います。
JOJI だからミス・タッチすると客に怒られるんだな。
木下 ようはそれだけベースを聴いてるってことだと思うよ。そして耳に残りやすいっていう。
gure 「Riot」のリフとか、その最たる例ですよね。
JOJI あのリフもさらっと考えたフレーズで、同じことをずっと弾いてるだけだよ。逆に緻密な考えでラインを作っているふたりはすごいと思う。
木下 いや、俺もどっちかと言えばジョッさん派だよ。そもそも俺はヴォーカルだから、歌メロとの兼ね合いのなかで、鳴らしたい音と欲しい音を考えちゃう。でも俺はベース・ヴォーカルで良かったとも思うんだよね。ベース・ヴォーカルだからこそ思いつくベース・フレーズもたくさんあるから。
JOJI でも歌が入っていないときのベース・ラインとか、めちゃくちゃアピールしてくるものもあるじゃん?
gure あれがまーくんのメリハリですよね。今作にもそういうプレイが満載。あれはジェラシーだなぁ。
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