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【特別鼎談】木下正行(locofrank)× JOJI(dustbox)× gure(HAWAIIAN6)

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Yoshika Horita

俺らはみんな歳も歳だけど、
“まだまだ終わるつもりなんてないよ”って気持ちをみんな持ってる。
━━JOJI(dustbox)

━━唯一locofrankのみベース・ヴォーカルになりますが、今作一曲目を飾る「if」では、各所に歌メロと絡み合った高速のオブリがあって絶妙なフックになっていたりと、アルバム全篇を通しておもしろいベース・プレイが満載でした。

木下 この「if」って曲、実はドラムのよこしん(横川慎太郎)が作ったんですよ。デモの時点である程度のベース・ラインはできていて、そこから俺が手を加えていったんですけど、自分が歌うメロディに沿ったオブリなり、欲しいと思うフレーズを入れていったんです。彼が作ってきてくれたコード感は自分のなかにもないものだったので、自分自身も良い発見でしたね。

JOJI この曲を聴いたとき、すごく緻密な構成だなって思った。最初聴いたときニヤニヤしたもん。よこしんは後入りなのにちゃんと“ロコを作ってる”ってびっくりした。

木下 (森)勇介のギター・アレンジもうまくハマったし、いいバランス感でアレンジできたと思います。俺が一番気に入ってるベース箇所がCメロ部分で、メロディ感や展開に合わせてベース・ラインを構成できました。ヴォーカル・メロディとの兼ね合いも含め、試行錯誤した一曲でしたね。俺が作曲した「Ephemeral Magic」はドストレートなベース・ラインなんだけど、これもBメロがキモで。歌メロの音符が少ないから、どうしてもベースでわちゃわちゃしたくなったんですよね。

gure こういうラインの持って行き方が、まーくんは本当に上手だと思います。

木下 gureはウネウネするやつ、JOJIはいろいろ描けるやつ……ベース的目線で見てもバラエティがありますね。それぞれのベーシストとしての個性にも注目してほしい一枚かな。

gure うん。同じメロディック・パンクの枠組みではありつつも、みんなそれぞれ個性を発揮しているので、それも含めて楽しんでもらえたらと思います。

━━さて、11年ぶりのスプリット・アルバムとなった『THE LAST ANTHEMS』を改めて振り返り、どのような作品になったと思いますか?

JOJI まず第一に、前作からの11年間で3バンドともひとりづつメンバーが変わったけど、新しく加入した人間がみんな間違ってなかったってことを決定づける作品になったと思う。そして何より、みんな好きなように、自由にプレイできているのが伝わってきますよね。

木下 “11年”ってさ、小学生が大人になるくらいの期間だけど、この期間でみんな良い風に歳を重ねて、良い意味でも悪い意味でもいろいろなことを経験できた。コロナ禍みたいな苦行を受けたのも大きなことだよ。でも誰も見ていないところでも歯を食いしばったバンドだからこそ、自由とか楽しさって部分をもう一回取り戻すことができたし、そういうものが詰まった一枚だと思う。後入りのメンバーって、加入したときに背負わなくてもいいようなプレッシャーを背負うことになるけど、各バンドともに結果的に後入りのメンバーがバンドを引っ張っていく側になってる。これってすごい努力だと思う。

gure “後入りでも自分らしくやればいいじゃん”って言われることもあったけど、“お前に何がわかる”って思ってたからね。オリジナル・メンバーと同じことをしなきゃいけない、追いつかなきゃいけないって思い込んでた時期もあったし、お客さんが審査員に見えていた時期も正直あったから。

木下 しかもgureは『THE ANTHEMS』ツアーのエクストラ公演のタイミングで入ってきたじゃん? “こいつバカなのか?”って思ったもん。チケットを買うくらい好きなバンドに加入するってことは嬉しいことだと思うけど、同時に重責でもある。だから俺とかジョッさんみたいな、いろいろと話を聞いてくれる人の存在も大きかったと思うんだよね。でもいっときgureに対して、ジョッさんめちゃ厳しかったよね。“言い過ぎだぞ”ってくらいに。

JOJI 俺はgureに“HAWAIIAN6のベーシスト”として存在していてほしかったんだよ。でもこんなキャラだし、なかなか下っ端感が抜けずに、結果悩んじゃって。でもだんだんと自分を見せ始めて、今回なんて5弦ベースを導入してる。やっとベーシストとして成熟し始めたのかなって思ってるよ。

gure オリジナル・メンバーと同じことをしなきゃいけないって思ってやってみたものの、無理だって気づけたのが大きかったのかも。だからこそ見えた世界があるし、今回のレコーディングだって楽しかったって思える。これからまわるスプリット・ツアーも楽しみですしね。

木下 “こいつどうでもいいや”って思ったら何にも言わないですから。この3バンドってクセモノ揃いだけど本当に大切な仲間だし、だからこそ11年を互いに切磋琢磨できたんだと思う。そもそも40代半ばのバンドが3組も集まるってめっちゃおもしろいじゃないですか。だから音楽が好きな人も、興味のない人も、どんな視点でも良いからおもしろいって思ってもらえたら嬉しいです。

JOJI そうだね。“ハワイアン、ダスト、ロコがまだ現役でやってて、11年ぶりにおもしろいことやるみたいよ”とか、どんな入りでも良いから、何かしらこの作品に興味を持ってくれたら幸いですね。

━━最後に聞かせてください。この3バンドで3枚目のスプリット作を制作する可能性は?

gure それで言うと、“LAST”って、特に“最後”って意味じゃないんですよね。

木下 そう。最後だと“FINAL”になる。もちろん最後になればいいなんて今回も11年前も思ってないですけどね。だからここで言う“LAST”っていうのは、映画の『ラスト サムライ』と同じく、“最後まで残り続けた”って意味なんですよ。

JOJI どういう形になるかはわからないけど、また何かおもしろいことをやりたいですね。俺らはみんな歳も歳だけど、“まだまだ終わるつもりなんてないよ”って気持ちはみんな持っていますから。

gure まさか自分がプレイをして2枚目をリリースするとは思いもしなかったですけど、“LAST”には“続く”みたいな意味もあるので、“また集まんの?”ってところに僕は少し期待しています。

木下 前作から11年経ちましたけど……正直言います。あと11年後は無理です(笑)。もし5、6年後にリリースしたらまたこうやってインタビューしてください(笑)。

JOJI まだまだ頑張らないとね。こんなおっさんたちでも、バンドをやればワクワクできる。でもステージに上がったらただのおっさんバンドじゃねぇってものを見せられると思う。だからぜひスプリット・ツアーにも遊びに来てほしいですね。

4月18日発売のベース・マガジン2024年5月号【SPRING】でも、『木下正行(locofrank)× JOJI(dustbox)× gure(HAWAIIAN6)』の鼎談記事を掲載しています。

本誌では特別企画『疾駆する低音旋律~The Melodic Punk Bass!!!!!!』に関連し、メロディック・パンクにおける3者のベース概念のほか、ベース・プレイへのこだわり、愛器紹介など、計6ページのヴォリュームでお送りしています。

同号では、新井和輝(King Gnu)を表紙に迎え、各視点から総力特集しているほか、DIボックスをフィーチャーした機材特集、ベーシストIKKEを講師に迎えたスカ・ベースの奏法特集など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!