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【特別鼎談】木下正行(locofrank)× JOJI(dustbox)× gure(HAWAIIAN6)

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Yoshika Horita

11年ぶり2度目の邂逅が示す
結託した信頼関係

衝撃のコラボ作『THE ANTHEMS』から11年━━locofrank/dustbox/HAWAIIAN6の3バンドが再びタッグを組んだ2作目のスプリット・アルバム『THE LAST ANTHEMS』が4月17日にリリースされた。各バンドともにメンバー・チェンジなどを経て、11年ぶりに邂逅を果たした3バンドの一枚には、進化を遂げた屈指の楽曲群が収録され、国内のメロディック・パンク・シーンを牽引し続ける確かなプライドが感じられる。ここでは3バンドのベーシストに集結してもらい、2作目の制作に至った背景、そして今作に収録されたそれぞれのベース・プレイへのこだわりについて語り合ってもらった。本鼎談から“11年ぶり2度目の邂逅”に秘められた3者の特別な思いを感じ取ってほしい。なおベース・マガジン本誌5月号では、Web版とは別内容の鼎談を6ページで掲載しているので、そちらも要チェックだ!

『THE LAST ANTHEMS』
locofrank×dustbox×HAWAIIAN6
IKKI NOT DEAD/XQDB-1027

ツアーが始まったら、“このフレーズどうやって弾いてんの?”って
ふたりに聞きに行くと思います。
━━木下正行(locofrank)

━━ locofrank×dustbox×HAWAIIAN6による11年ぶり2枚目のスプリット作『THE LAST ANTHEMS』がリリースとなりましたが、発表時には“まさかまたこのコラボが実現するとは!”という驚きもありました。2枚目を出すに至った背景から教えてもらえますか?

JOJI “2枚目を作る”って最初に言い出したの、実は俺なんよ。東北かどっかのライヴのとき、MCで言ったんだよね。

木下 えっ、そうだったんだ。HATANO(HAWAIIAN6/d)さんだと思ってた。

JOJI MCで、“またロコダストシックスやるから!”って、何にも決まってないのに俺が言っちゃったの。そしたらもうみんな苦笑い。“ちょっと、お前何言ってんの?”みたいな(笑)。

木下 でもみんなのなかにももう一回やりたいって気持ちはあったと思うよ。

JOJI 各バンドの状況的に、“今はそのときじゃない”って感じもあったと思うんだよね。自分たちのことだけで精一杯みたいな。でも俺はご存知のとおり、“何かを起こしたい、おもしろいことをしたい”って常に考えてる人間だからさ。

gure いつの頃からか、自然発生的に2枚目の準備が進んでいきましたよね。時期をいつにするかとか、どんどん話が具体的になっていった。

木下 “次もあるんだ”って徐々に意識し始めたというか。この3バンドで作品を出すのは『THE ANTHEMS』(2013年)が最初で最後かもなって思ってた部分もあったけど、“別にみんな普通にやってるし、またやればええか”って感じだったんだよね。

JOJI  2枚目を作ることで、各バンドとも次のスタートへのきっかけになればいいと思った。結果的におもしろい内容になったし、ファンのみんなも沸いてくれたから良かったよね。

gure 僕の場合、前作のときはいちファン、いちリスナー側でしたから。お客さんとして前作のツアー・ファイナルにも行きましたし。だから正直、最初はあんまりピンと来ていない部分もありましたね。

JOJI だから3バンドともにメンバーがひとりづつ変わってるっていうのも見所だし、そういう意味で前作とは違う意味合いも含まれてるんだよね。

━━前作『THE ANTHEMS』からの11年を振り返ると、gureさんは前作のリリース直後にHAWAIIAN6に加入、locofrankとdustboxはともにドラマーの脱退/加入など、各バンドともにさまざまな動きがありましたもんね。

木下 locofrankは4年前に前任のドラムが脱退しまして。その際にオリジナル・メンバーで20周年を迎えられたこともあって、“このメンバーじゃなかったらバンドを辞めよう”と思って、ハワイアンとダストに“やりきったからバンドやめるわ”って言ったんです。そしたら“ふざけんじゃねぇ”ってブチギレられて。そのあと神戸にハワイアンとダストのライヴを観に行ったら、もうめちゃくちゃカッコよくて。“コイツらがこんなにカッコいいのに、ドラムが脱退したくらいじゃ辞める理由にならないな”って思いました。ハワイアンとダストは目の上のたんこぶでもあるし、かけがえのない仲間でもある。だからこそこの3バンドで2枚目を作れるっていうのは感慨深いですね。

JOJI 年齢を重ねてみんな40代半ばになったし、メンバーもそれぞれ変わったからこそ、前よりも楽しもうぜって気持ちが強くて。みんな手を抜かずに曲作ってきて、蓋を開けてみたら“オープニングの一曲目!”みたいな曲をみんな準備してて(笑)。曲順の組み方にはめちゃくちゃ悩みましたよ。

gure 僕がハワイアンに加入して11年になるので、ちょうど『THE ANTHEMS』とともに歩んできたわけですけど、正直、歩めなくなったタイミングもあったんですよ。コロナ禍に入ったあたりで気持ちがいっぱいっぱいになっちゃって……それがピークになったと同時に、バンドを辞めるって言ったんです。

JOJI あんときはひどかったよな。お前ブチギレてたもんな。でもそれはみんな経験してることだから。

gure でもなんだかんだで踏みとどまったからこそ今があって今作があるっていうのは、本当にありがたいなって思います。ロコとダストっていう切磋琢磨できる仲間が近くにいてくれたことが、踏みとどまれた理由のひとつでもあるし、頑張っている姿を近くで目の当たりにしてきましたから。

木下 やっぱり誰にもバンドを辞めてほしくないんですよ。自分らも含め、各バンドともにいろいろあったけど、それを経たからこその思いも今作には込められていると思います。

━━3バンドの楽曲が3曲ずつ並ぶということは、バンドごとに方向性や音楽性の違いはありつつも、比較されて聴かれることもあると思います。そこには対抗心みたいな気持ちもあるんですか?

gure もちろん、あるあるですよ。

JOJI それの塊ですよ。“ダストが一番カッコいい”ってみんな思えば良いと思ってる(笑)。

木下 “俺ら以外の2バンド死ね!”って思ってます(笑)。まぁでも本当にカッコいいと思う2バンドだからこそ、こういう気持ちになるというか、カッコよくてうまいバンドってたくさんいるけど、ダストとハワイアンは自分のコンプレックスをより顕にさせてくれるというか、羨ましくなる存在というか。そういうバンドだからこそ、“どういう曲作ってくるんだろう”とか、それぞれの出方を考えちゃうんですよね。

━━ではベーシストとしての対抗心みたいなものは……?

木下 それは逆になくて、“このプレイおもろいやん、どうやって弾いてんのコレ?”とか、感心させられます(笑)。だからツアーが始まったら、“このフレーズどうやって弾いてんの?”ってふたりに聞きに行くと思います。

JOJI 俺もないかな。でもやっぱり、ベース・ラインを一番に聴いちゃうかも。

木下 あとミックスの感じね。みんな録音したスタジオが違うから、“このバランスでベースを鳴らしてるんだ”とか、刺激になるよね。

JOJI スタジオは違えどレコーディング期間は一緒だったんですけど、ウチらのスタジオとハワイアンのスタジオが近かったので、ハワイアンのスタジオに遊びに行ったりしていたんです。そしたらgureがベースのレコーディングをしていて、“へー、こういう感じなんだ”みたいな(笑)。

gure マジで来ないでって思いましたよ(笑)。もう本当に嫌だった。手の内を見せることになりますから。だから気づかないうちに意識してるのかもしれないですね。

JOJI でもベースに関しては、各々が変わらずやることをやってるなって思います。期待を裏切らない“コレコレ!”ってプレイをしっかり入れ込んでくれてる。

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