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    【Sago New Material Guitarsが紡ぐベーシストの絆】田村明浩(スピッツ )× グレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)

    • Interview:Koji Kano
    • Photo:Chika Suzuki

    全然違うバンドのベース同士で、しかも50オーバー。
    こんなこと世界初なんじゃない? 
    ━━グレートマエカワ

    ━━今回Sagoにて“兄弟ベース”を製作したのは、スピッツのファンクラブ“Spitzbergen”の会報誌内で連載している“低音さんいらっしゃい!”での対談がきっかけとのことですが、田村さんはこれまでにSagoで3本のモデルを製作しています。グレートさんは以前からSagoのことは知っていたんですか? 

    グレート もちろん知っていましたよ。鶴の神田(雄一朗)くんとか、UNISON SQUARE GARDENの田淵(智也)くんがSagoを使っているのを知っていたし、それこそ田村くんがステージで使っているのも観ていましたから。というか田村くんはいつからSagoのベースを使っているんだっけ?

    田村 俺とSagoの出会いは、昔sleepy.abと対バンしたとき、ベースの田中(秀幸)くんがSagoを使っていて気になっていたんです。その話を同じくSagoを使っていたthe pillowsのピーさん(真鍋吉明/g)に話したところ、高山(賢/Sago New Material Guitars代表)くんにつなげてくれたんです。最初はネック材にサーモ・ウッド(編註:木材を無酸素状態で高熱処理したのち乾燥させ、材中の水分や油分を揮発させ剛性を高める技術)を使っているということが特徴的だなと思って、今でこそ多くのブランドが使うようになりましたけど、当時は世界的にも珍しかったんですよ。サーモ・ネックを使うとサウンドにヴィンテージの風味が出たりとか、新品では味わえないような音が出せるってことで、自分の使っているヴィンテージ楽器との違いが気になったし、そういう新しいことにトライしてるって部分にすごく興味が湧いた。それでまず一本試しに作ってもらったんですけど、そのベースが思った以上に良かったので、またもう一本作ってみようかなって流れでした。あと最初に自分のメイン器のネック・シェイプとかを全部測ってくれて、理想のネック形状をプロファイリングしてもらえたことも大きかったかな。

    グレート 病院の診察みたいな感じだよね。今回の兄弟ベースを製作するうえで自分のベースもプロファイリングしてもらったんですけど、自分の理想を理解してもらえると、次も頼みやすいですよね。

    田村 うん、やっぱりネックはベースで一番重要な部分だから、二本目以降もネック・シェイプは変えずに製作してもらいました。

    田村明浩
    Profile
    たむら・あきひろ●1967年5月31日生まれ、静岡県藤枝市出身。1987年に4人組ロック・バンド、スピッツを結成。1991年にシングル「ヒバリのこころ」、アルバム『スピッツ』を同時発売しメジャー・デビュー。ミリオンセラーを記録した「空も飛べるはず」「ロビンソン」「チェリー」をはじめ、「春の歌」「魔法のコトバ」「優しいあの子」など、これまでに多くの大ヒット・ナンバーをリリースし、国民的ロック・バンドとして現在も精力的に活動を展開している。2022年までにシングル45枚、オリジナル・アルバム16枚などを発表している。
    Official HP

    ━━田村さんのモデル“SB-55GT”とグレートさんのモデル“SB-53GT”には各所にいろいろな違いがありますが、田村さんのモデルは20フレット、グレートさんのモデルは21フレットですよね。これはお互いのバンドに合わせた選択ということですか?

    田村 自分の持っている三本のSagoベースのうち、一本はスケールが短くて半音上げで使っているモデルなんですけど、これはスピッツに半音上げチューニングの曲が多いこともあって、完成したベースのネックをFのピッチのものに差し替えてもらったモデルなんです。逆にスケールを長くした、半音下げのEフラットのピッチのモデルも作ってもらったんですけど、いずれもすごく良かった。そのなかでフラカンはライヴでは半音下げっていうのを知っていたから、“どうせだったら半音下げを想定した、長いネックのモデルを作ってみない?”ってグレートに提案したんです。

    グレート この発想はおもしろかったですね。フラカンで使うにあたって、設計段階から半音下げを想定したモデルを作れるということだったのでお願いすることにしました。

    田村 俺はレコーディングだと面倒でカポとかをしちゃう人間なので、こういう考え方には大賛成。だから俺のモデルの開放弦は普通にEだけど、グレートのモデルは1フレット長い仕様にしています。

    グレート 正直“どんな感じなんだろう?”って不安もありましたけど、田村くんの持っている半音下げ用のベースを弾かせてもらって全然違和感がなかったので、“これならいけるし、使いやすいかも”って思ったので乗ることにしました。

    ━━いろいろな違いがあるなか、ブリッジは両器共通でバダス・ベースⅡを採用していますが、ここにはどういったこだわりが?

    田村 70年代ハードロックが好きな俺らとしては、ここもこだわった部分なんですよ。

    グレート イメージとして、バダスはガッツのある音が出るような気がする。だからOPBシェイプだからといって一般的なOPBのブリッジを付けるのではなく、見た目的にも存在感のあるバダスを選んだんです。

    田村 何ていうかオリジナルのOPBって、ブリッジの付いているあたりがちょっと貧弱な感じがするじゃないですか。それに裏通しだし。でも今回は裏通しにしたくなかったし、そうするとルックス的にもバダスをつけたほうがカッコよくなるというか、俺らの好みになるんじゃないかなと思ったんです。結果的にサステインの伸び方とか、サウンドにも貢献していると思います。

    グレート 2000年代のフェンダーにもジャズベやプレベにバダスのブリッジが付いているモデルがあるでしょう? そういうところも含めてバランスが良いような気がしていたし、田村くんの言うとおりバダスって音に良い影響を与える部分もある。だからバダスを選んで正解でしたね。

    田村 最初にバダスのパターン、OPBオリジナルのパターン、スパイラル・タイプ、ゴトーとかってSagoがシミュレーションした画像をいくつか送ってくれたので、見た目的にもすごくイメージしやすかったです。ブリッジ以外にもピックガードの形状もいくつかのパターンをシミュレーションして送ってくれたから、わかりやすかったし、おもしろかったですね。

    グレート ピックガードに関してもけっこう悩んだよね。いろんなシミュレーション画像を送ってもらうなかで、OPBのオリジナルのものも良かったけど、結局このブギー・タイプのものが一番おもしろいねって話になったんです。

    田村 うん、なんとなくこういう形のピックガードを作りたかったんですよ。今回はこのシェイプで作ってもらったけど、ピックガードなんて気に入らなかったらあとから換えちゃえばいいからね。最初はピックガードを透明にしてうしろに紙を入れれば着せ替えとかにもできるね、なんて話もしたりとか。

    グレート それこそ俺がメインで使っているベースは透明のピックガードだから、それもアリだったかもね。

    田村 だからピックガードのなかに“フラカン、ニュー・アルバム絶賛発売中!”とかって紙を入れてもいいわけじゃない? 

    グレート 宣伝ね(笑)。それで宣伝費を取ろうかって話もしていたもんね。

    田村 ライヴで行った各地のお菓子屋さんとかに、“ここに名前入れるからタイアップで2万円貰えませんか?”みたいなことも考えられるわけだから(笑)。

    グレート そんなん全然やるよ(笑)。もはや動く広告塔になりたいわ。

    田村 ……ってことで、将来的にはそういう風に変えられる可能性もあるのかなと思います(笑)。

    グレートマエカワ
    Profile
    ぐれーと・まえかわ●1969年9月27日生まれ、愛知県出身。1989年に中学・高校の同級生でフラワーカンパニーズを結成し、1995年にメジャー・デビューを果たす。2001年にメジャーを離れたあとは、ワゴン車一台で全国を回り年間100本を超えるライヴ活動を展開し、楽曲「深夜高速」とともに日本屈指のライヴ・バンドとして注目される。2008年にメジャー復帰し、2015年には日本武道館公演を成功させている。2017年、自主レーベル“チキン・スキン・レコード”を始動。またグレートは、うつみようこ&YOKOLOCO BANDとしても活動している。
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