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INTERVIEW – ハマ・オカモト[OKAMOTO’S]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto

メンバー内コラボレーションで開花した
“プロデューサー”としての才覚

“メンバー・コラボレーション・アルバム”なる、一瞬“?”が浮かぶような新奇なコンセプトを銘打った新作『Flowers』を2023年1月25日に発表したOKAMOTO’S。この“メンバー・コラボレーション”というコンセプトであるが、つまりはメンバー間でプロデュースを行なうというもので、ハマ・オカモトはオカモトコウキ(g)作曲の「いつも、エンドレス」、オカモトショウ(vo)作曲の「オドロボ」の2曲でプロデューサー兼共同作曲者としてクレジットされている。ということで当インタビューでは、ベース・プレイについても解説してもらいながら、“プロデューサー”としてどのようにこの2曲を完成に導いたのかということを中心に話を聞いてみた。“譜面は読めない”と語るハマが手がけるプロデュースのアプローチとは? そして、ジャズやフュージョン出身の技巧派プレイヤーたちの存在抜きには語れない“80’sサウンド”を参照したことで見えてきたという“ロック畑のミュージシャンだからできること”とは。近年存在感を増す同世代のジャズ系ミュージシャンたちへの眼差し、新しいスラップ・フォーム、そして昨年ドラマ主題歌で話題となったSTUTS率いるMirage Collectiveでのプレイについてなど、さまざまな話題に触れながら今の思考を赤裸々に明かしてくれた。

安全地帯、久保田利伸さんの初期、SING LIKE TALKING、
シャンバラあたりをアレンジの参考にしています。

━━今作の“メンバー・コラボレーション・アルバム”というコンセプトはどこから出てきたのでしょう?

 脈々と伏線みたいなものはありました。OKAMOTO’Sは基本的にはヴォーカル(オカモトショウ)とギター(オカモトコウキ)のふたりが作曲者ですが、2年ほど前からふたりの共作クレジットが増えてきたり、あと前作の「For You」という曲で僕がアレンジを担当して、編曲者としてクレジットされたり。そういう流れがあったので、前作を録り終えたときには“次は各々タッグを組むのもおもしろいかも”みたいな話は出ていたと思います。今回、“コラボレーション・アルバムって言えばいいんじゃない?”というのは確か僕が発言したんですけど、ちょっとおちょくりたかったというか。最初に“コラボレーション”と銘打っておいて、蓋を開けてみたら“メンバー内コラボでした”というのは、トンチが効いていておもしろいんじゃないかと。

━━ハマさんは今回、コウキさん作曲の「いつも、エンドレス」、ショウさん作曲の「オドロボ」で共同作曲者かつプロデューサーとしてクレジットされています。2曲にはどういう形で関わったのでしょう?

 コード進行とメロディをゼロから作ったのは作曲者のふたりで、構成とか曲調とかに関しては最初のデモ段階からかなりイジらせてもらったというイメージですね。

━━ちなみに過去には、吉澤嘉代子さんなどの作品でプロデュース業を経験していますよね?

 住岡梨奈とか吉澤嘉代子とかにそういう形で呼んでもらったことはあるんですけど、僕は曲は作れないので“デモをどう発展させるか”に加担するような名目でのプロデュースという形でした。今回もそれの延長線上という感じです。

『Flowers』
アリオラジャパン
BVCL-1237〜8
(CD+BD、完全生産限定盤)

━━「いつも、エンドレス」では、最初コウキさんからどんなデモが届きましたか?

 最初はざっくり1コーラスのデモをもらった気がします。全然こんな感じではなくて、そもそもタイトルも違っていたんじゃないかと。

━━80’sな匂いを感じさせるタイトルですよね。

 タイトルについて僕からは“、”だけ入れさせてもらいました。一世風靡セピアの「前略、道の上より」(1984年)にも“、”があるんですけど、多分ここから来たんでしょう(笑)。この曲はサウンドで言うと、70年代後半から80年代前半の海外のダンス・ミュージックと、これは「オドロボ」もそうなんですけど、安全地帯や久保田利伸さんの初期、SING LIKE TALKING、あとは櫻井哲夫さんと神保彰さんのシャンバラとか、このあたりの曲をアレンジの参考にしています。シャンバラの「SOLID DANCE」(1989年)っていう曲が僕すごく好きで、こんな感じのことをやりたいとはずっと思っていて。とはいえ80年代っぽくゲートやリヴァーブをゴリゴリにかけるかはすごく迷ったところではあって、時代感を強くしすぎるとコミック・ソングっぽくなっちゃうので、その塩梅には気をつけました。

一世風靡セピア「前略、道の上より」

━━なるほど。ちなみに安全地帯はどのあたりを参考にしましたか?

 本当にベタに「ワインレッドの心」や「真夜中過ぎの恋」とか。プロデュースした2曲とも、ギターのサウンド感は完全に安全地帯をお手本にしています。「オドロボ」のギター・ソロのイメージは布袋さんですけどね。それから「いつも、エンドレス」のイントロは、オデッセイっていうアメリカの3人組の「Going Back To My Roots」という曲の徐々に楽器が重なっていく感じがカッコいいと思って参考にしたり。プリプロはコウキさんの家でサポートのBRIAN(SHINSEKAI/k)も呼んで3人で作ったんですけど、今挙げたような曲を最初にみんなで聴いてから作業に入っていきました。

━━「いつも、エンドレス」はベース・リフが超重要な曲ですよね。このリフはどのタイミングでできたんですか?

 デモにベースが打ち込んであったわけではなかったので、みんながいる状況で試しながら考えました。ベースを最初に入れて、そこにギターや鍵盤を積んでいったという感じで。あ、鍵盤の話でいうと「いつも、エンドレス」のシンセのメイン・フレーズ(0:27〜)は、つんく♂さんリスペクトです。フレーズの最後で半音下がって上がる動きがありますけど、これつんく♂さんの手グセで、いろんな曲に入ってるんですよ。でも何回説明してもニュアンスが僕以外に全然伝わらなくて。そこが今回一番苦労したところかもしれないです(笑)。

━━そうだったんですね(笑)。ところで、“プロデューサー”という話題で言うと、好きなプロデューサーを挙げるとすると誰になりますか? ベーシスト兼プロデューサーとして活躍している人もけっこう多いですが。

 やっぱり亀田(誠治)さんが一番最初に出てきます。初めて“プロデューサー”というものを認識したのが亀田さんで、完全に亀田さんフリークとして育ってきたので。ただ、いかんせん僕は楽典がないので譜面が読めないし、仕事ぶりをお手本にすることはできないんです。“プロデュースってどこからどこまでなんだろう?”というのは自分のなかでもいまだに不明なところではありつつ、自分がやっていることもこれはこれでひとつの形なのかなとは思いますけどね。

━━頭のなかやレコード棚の音楽ライブラリーからリファレンスを挙げながら、アレンジやサウンド感の方向を示していくという。

 そうですね。で、それが一番やりやすいのは自分のバンドですよね。失礼を働いても大丈夫というか、身内なら無茶を言うこともできるので。そういった意味ではすごくやりたいようにやらせてもらいました。

━━ベース・プレイでは、「いつも、エンドレス」のメイン・リフはチョーキングでしょうか、音程の揺れ感をあえて入れているのが、すごくフックになっているなと。

 ヴィブラートをかけていて、普通の感じで行かないですよね。あれは転調したアウトロで気づいたらすごく顕著にやっていて。ツルっと1曲を通して録ったのであまり細かく直してないですし、計画してやった感じではなかったですけどね。意図してやったのは、弦を新しいものに張り替えたっていうことぐらいかな?

━━Bメロではハマさんがリード・ヴォーカルも取っていることにも驚きました。サビでのハマさんのコーラスも、デュエット感が楽曲の時代感にバッチリ合っていますよね。

 それも全然計画的なものではなかったんです。基本はコウキが歌う形で進んでいたんですけど、Bメロが1回しか出てこないというのもあって、いきなり違う人が出てきてもおもしろいかもって。普段だったら、そこはショウさんなんですけどね。それでBメロの一ヵ所だけというのもアレなので、サビのハモリもガッツリ歌いますかという流れでした。両方とも、歌録りの当日に決まったことですね。ベースは歌うことを想定して弾いてはいないので、難しくてちょっと困っています(笑)。

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