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    INTERVIEW – 兼子拓真[DEZOLVE]

    • Interview:Koji Kano

    それぞれの引き出しを用いて音楽を追及していく姿勢が大事だと思うんです。

    ━━「Landscape」の中盤にも長尺のベース・ソロがありますが、こちらにはコーラスがかかっていますか? 今作のベース・ラインでは特にエフェクティブなパートですよね。

     このソロはピックアップのバランサーを変えつつ、リヴァーブとコーラスをかけてジャコ(パストリアス)みたいなニュアンスを出してみました。メロウなんだけど喋る、でもちゃんとフュージョンぽさがあるっていう塩梅を目指したんですけど、そういう意味では「Beyond the Sunset」とはまた違ったコンセプトのプレイになりますね。

    ━━では、今作の録音で使用したベースを教えてもらえますか?

     メインはフェンダー・カスタムショップのマスタービルド・シリーズのジャズ・ベースです。現行品の新品なんだけどヘヴィ・レリックがしてあるので、僕のなかではヴィンテージと現行品のハイブリッドなイメージ。めっちゃヴィンテージ・ライクなローが出る渋いジャズベなんだけど、新品だからセッティングを詰められる。この竿でバキバキなフュージョンをやることの意味は大きいと思っています。2本目はマイクルルの5弦JBタイプで、メイプル指板のアッシュ・ボディということもあってバキバキのスラップ曲で使うことが多いです。3本目はロスコーの5弦モデル“LG3005”で、今っぽい感じとか、洋楽寄りなサウンド、ジャズベでは表現できないようなニュアンスを出したいときに使っています。基本的にはフェンダーを使うことが多いですね。

    ━━イメージとしては“5弦、アクティヴ、ロー・アクション・セッティング”みたいなイメージがあったんですけど、実はスタンダードな4弦ジャズベだったと(笑)。

     そうなんです。このジャズベをメインで使っていることを昔の自分が聞いたらびっくりすると思います(笑)。もともとはアクティヴでバキバキな感じが大好きだったし、そういうイメージを持たれていると思うんですけど、今はもう“ジャズベって最強かも”って思っていて。どんな曲にも馴染みやすいし寄り添いやすい、世界観を作って音楽的に鳴ってくれるって意味ではDEZOLVEに一番適した楽器だと思います。

    フェンダー・カスタムショップ製マスタービルド・シリーズのジャズ・ベース。1964年仕様の一本で、スラップ曲のほかロング・トーンを要するバラード曲など、幅広い楽曲で活躍する不動のメイン器だ。“フュージョン竿をちゃんと持ったほうがいいかなと思って購入しました。ヴィンテージ・チックなんだけど、ジャンルを問わず活用できるサウンドがすごく好みです”。

    ━━さて、本誌2月号の“70年代クロスオーバー特集”ではフュージョンの先駆けとなったクロスオーバーについてアンケートにお答えいただきましたが、改めてDEZOLVEの奏でるフュージョンとはどんな音楽だと考えていますか?

     どうしてもフュージョンって“技巧、テクニックで演奏しよう”って考えが先行してしまうと思うんです。でもそれって、音楽として表現したいことがあるからテクニックを使うっていう本来の目的とは逆になっちゃいますよね。だからまず第一に音楽を成立させるために技巧を選択するというか、インストゥルメンタル・バンドとしてそれぞれの引き出しを用いて音楽を追及していく姿勢が大事だと思うんです。その考え方がDEZOLVEには明確にあるし、それが強さだと思っています。いろいろなアプローチはあるけど、あくまでも音楽が先行していることを貫けるのがDEZOLVEの良さだと思っています。

    ━━最後に、DEZOLVEのベーシストとして今後活動していくうえでの抱負を聞かせてください。

     サポートを始めた頃は3人がうますぎて謙遜してしまった結果、良くないプレイにつながってしまった。だから今は3人に追いつけ追い越せの精神を持ちつつ、自分にソロを回されたときの音楽的な語彙力をもっと増やしていきたいです。あと今回僕は作曲をしていないんですけど、今後は作曲という面でも自分の音楽表現をしていきたいと思っています。3人も“曲を書いてよ”って言ってくださるので、これからは自分の作品についても追求していきたいと思っています。そのうえで自分の可能性、表現やプレイの幅が広がるベースを弾けるようになりたいですね。

    兼子の足下。左がマルチ・エフェクト・フロアボード・システムのLine6製Helix Floor。右のアウト・ボードのラインナップは、上段右から時計回りに、フリーザトーン製PT-3D(パワー・サプライ)、FMR Audio製A.R.C.(コンプレッサー)、TECH21製サンズアンプ・ベース・ドライバーDI(プリアンプ)、フリーザトーン製JB-82S(ジャンクション・ボックス)、Pike Amplification製VULCAN XL(プリアンプ)、MXR製bass d.i.+(プリアンプ)。アウト・ボードのペダルをセンド/リターンを介してHelix Floor内に取り込んでおり、Helix Floorにて各ペダルを制御している。実機でしか表現できない音色はアウト・ボード、空間系や飛び道具系はHelix Floor内蔵の音色を使用している。兼子はHelix Floorに関して、“現場で急に音色を求められたときのマルチ・エフェクターとしての対応力もすごく優秀。重宝しています”と語る。

    ◎Profile
    かねこ・たくま●1998年11月2日生まれ、茨城県出身。中学生でベースを始め、高校生のときにYouTubeに投稿した「U Can’t Hold No Groove」(ヴィクター・ウッテン)のカバー動画で注目を集める。現在はアイドルマスターシンデレラガールズ、IDOLY PRIDE、DIALOGUE+、東山奈央といったアーティストのサポート・ワークに加え、2022年11月には4人組フュージョン・バンドDEZOLVEに加入。2023年2月15日に6thアルバム『CoMOVE』を発表している。

    ◎Information
    DEZOLVE Official HP Twitter  YouTube
    兼子拓真 Twitter YouTube