PLAYER

UP

INTERVIEW-太輝[DEVILOOF]

  • Interview:Kengo Nakamura
  • Photo:Litchi(Live)

フレットレスをデスコアで使ったら
おもしろいんじゃないかなと。

━━太輝さんは「The Blackened Sun」を作詞作曲しています。曲作りは今作から始めたとか?

 曲作り自体は以前からちょこちょこしていたんですけど、自宅に作曲環境を整えてイチから作ったのは今回が初めてですね。今回のEPは「Damn」ありきで作った作品だから「Damn」が核になるのは最初からわかっていて、その次にできたのが、メロディがガッツリ入っている「False Self」でした。残りの曲はどうしようというときに、曲を作ってくる桂佑とRay(g)からは絶対に出てこないものを僕が作ったほうが、作品としてはおもしろくなるなと思ったんです。それで、デッドストックに入れておいた少しスラッシーな感じのデモを引っ張り出してきて。近年のエクストリーム・バンドたちが多用している電子音を、80年代のメタルっぽい音楽に打ち込んだらどうなるんだろうっていう実験的な曲でもありますね。

━━作曲はどの部分から始めることが多いですか?

 「The Blackened Sun」はイレギュラーな作り方で、“ここはすごく速いパートがあって、次はブレイクダウンがあって”みたいな全体像のぼんやりした展開が頭のなかでできて、そのぼんやりしたものをギター・リフで作っていきました。ただ、まだ世に出していないほかの曲たちは、どちらかというとメロディを入れる傾向があって、サビのメロディみたいなものから作ったりします。ほかのメンバーはあまりそういう曲は作らないので、今後、そういう要素は僕が持ち込めるといいなと。

━━ベース・サウンドに関しては、“ダークグラスっぽい歪み”というか、ラインの見える歪みになっていますね?

 そうですね。ただ、ダークグラスの音は僕も好きなんですけど、それが絶対的に素晴らしいものかというと完全には首を縦には振れなくて。どちらかというと、ダークグラスで構築されたメタルコアとかデスコアのサウンドがスタンダードになりすぎて、ダークグラスじゃない音でベースの音を作ってしまうと、聴いている人にどこか違和感を生じさせるようなレベルになっているのかなと。僕自身もリスナーも、“こういう音楽のベースはダークグラスの音じゃないと”っていう変なバイアスがかかっている気もして(笑)。

━━太輝さんの使用機材は、何と言っても7弦フレットレスというのが特徴的です。7弦フレットレスを導入したのはなぜですか?

 これも音楽的な話というよりは、戦略的な話になるんです。メタルコアやデスコアのバンドって、どうしてもベースにスポットライトが当たりづらいんですよね。有名なデスコア・バンドだったとしても、“じゃあ、そのベーシストの名前は?”と言われたら出てこなかったり。それであれば、ステージやMVで観たときに、“なんだアレは?!”って思わせるしかないのかなと。そのなかで、僕はスティーヴ・ディジョルジオがすごく好きだったので、フレットレスをデスコアで使ったらおもしろいんじゃないかなと思ったんです。せっかくだったら彼と同じベースを使いたいなと思って調べたら、アメリカのThor Bass(トール・ベース)っていう、カールっていうおじさんがひとりで作っている工房のもので、そこに連絡して作ってもらいました。そのときに、スティーヴ・ディジョルジオが6弦だったので、自分は7弦にしようと(笑)。あと、当時で言えば、完全なギター・ソロのユニゾンもゆくゆくはしてみたかったので、7弦ギターと7弦ベースなら、ギター・ソロも完全にユニゾンできるかなと。

━━チューニングはどうなっているのですか?

 DEVILOOFはドロップAチューニングで、EADGBEというギターと同じチューニングの6弦に、ローAが足されています。作ってもらうときも、“ドロップAチューニングでしか弾かないから、それにあわせてチューニングしてくれ”と伝えました。

━━そのほかのオーダーのポイントは?

 弦と弦の移動をしやすいように、弦間ピッチを狭くしてほしいとは言いました。マノウォーのジョーイ・ディマイオが使っているベースのネックがめっちゃ細くて弾きやすそうだなと思ったので。それでも太いですけど、普通の7弦ベースに比べるとネックは細いらしいです。木材に関しては、僕からお願いはしたんですけど、“こっちのほうがいいぞ”って感じでカールさんのセレクトになっています(笑)。スルーネックは僕のリクエストですね。あとピックアップは、知り合いのサウンドテックの人に相談してノードストランド製のものに換えてもらいました。ローの抜けがよくなりましたね。

太輝がメインで使用するベースは、米国ニューハンプシャー州でカール・トルキルドセン氏が製作していたThor Bass製MjölnirのDaiki Model。7弦ベースのフレットレスという超個性派モデルだ。ピックアップはノードストランド製へと交換しており、フロント・ピックアップには太輝のピッキングのアタックが強いことを考慮してポールピース間にテープが貼られている。トラスロッドは2本挿入されている。コントロールはヴォリューム、トーンと3バンドEQで、ヴォリュームのノブが欠損している。実際に手に取ってみると意外と重量は軽く、ヘッド落ちしそうではあるが、ヘッド側のストラップ・ピンは低音側ホーンの側面に取り付けられていることもあり、バランスは良好だ。ヘッドには角度がつけられているため、ナット裏側にはボリュートが設けられている。

━━弦は?

 ダダリオを使っています。6弦ベースのセットと、1弦用にはギター用のゲージを使っています。ローAは.125ですね。

━━使用するベースはThor Bassのみですか?

 去年からディングウォールのZ3を使い始めました。Thor Bassがかなり邪道というかカウンターなんで、王道のディングウォールを使ってみようと。普段7弦のフレットレスを使っておいてアレなんですけど、やっぱりディングウォールはローのピッチの安定度がすごいですよね(笑)。バシッときてくれる。

━━アンプやエフェクターは?

 フラクタル(オーディオ)がどんと置いてあるだけですね。昔はエフェクター・ボードも用意していたんですけど、ギターの愛朔とも話して、そんなに飛び道具的な音も使わないし、フラクタルひとつのほうが安定して音が出せるということで、ギターのふたりも含めて、全員フラクタルで完結させています。バンドの音としてもデジタルの音のほうが合うかなとは思いますし。

▼ 続きは次ページへ ▼