すべての楽器の音数がすごいので、
僕は引き算の考え方で音を埋めていっています。

━━ベース・プレイでは、ギター・リフにユニゾンする部分とルートで“最深部”を支える部分がありますが、どのように弾き分けますか？

　僕自身は、完全にアタマからケツまでユニゾンが理想なんです。でも、それをDEVILOOFの曲でやってみたら、どうしても音がごちゃついてしまったりして。ルートで弾くとしても、ドラムがずっと16分のベタ打ちをしているときに僕も16分で弾いてしまうと、音がゴワゴワするからあえて8分で弾いてみたりはします。すべての楽器の音数がすごいので、僕は引き算の考え方で音を埋めていっていますね。1stシングルの『Ruin』を出したときに、僕はTAIJIさんやL’Arc～en～Cielのtetsuyaさんみたいな動くベース・ラインにしたかったので、最初にそういう感じのラインを付けたんですよ。そうしたら、“こんなにベースが動いたら、これはデスコアじゃないよ”って言われて。そこで僕は一歩引こうって決めました。

━━そこにプレイヤーとしてのストレスはないんですか？

　これはバンド全体のバランスの話なんですけど、僕がバンドのリーダーとしてバンドのマネジメントとか方向性を決めて、桂佑が曲関係のことを決めるんです。そして、これはお互いにノータッチでいこうっていうのが、暗黙の了解としてある。僕は桂佑の作る曲に文句を言わないですし、彼もバンドのマネジメントのことは何も言わない。そこのバランスですね。せっかくバンドをやっているんだから、その分野に知識のある人間が担当して分業でやるのがいいのかなと。

━━「False Self」はギターとのユニゾンも含めて細かいフレーズを弾いていますよね？

　これはかなりユニゾンしていますね。桂佑からの要望で“こんな感じにしてほしい”というメロディっぽいアプローチを入れていたりもします。「False Self」はメロディのある曲なので、こういう曲は動いているベースをつけやすいということもありますね。

━━ギター・ソロ前に高音弦でのタッピングっぽいフレーズ入れていますか？

　そこが桂佑から要望があった部分で、タッピングではなく普通に指で弾いています。うしろでけっこうヴァイオリンとかも鳴っていたので、ぶつからないようにフレーズをつけていきました。

━━太輝さんは指弾きがメインですが、このジャンルで指弾きというのは少数派ですよね？

　メタルコアやデスコアではピック弾きの人のほうが多いですよね。実は、中学の頃にベースの練習をしすぎて腱鞘炎になってしまって。僕も本来はベースを低いポジションで構えて、ピックでガシガシ弾くベース・プレイが好きなんですけど、30分もしたらピックが持てなくなってしまう。それで仕方なく指弾きをしている感じなんです（笑）。最近は腱鞘炎もマシになってきたので、ちょっとずつピックで弾く機会も増やしているんですけどね。

━━単純にテンポが速かったり複雑なリズムのリフがあったりと、なかなか指弾きでは対応しにくい部分もあるのかなと思います。3フィンガーも使いますか？

　基本的には3フィンガーを使わないと追いつかないですね。ピック弾きから指弾きに切り替えたときも、まずテンポが速すぎて指の筋肉がもたないので、30分のライヴでもとんでもないことになっていました。でも指の筋力を鍛えていって、なんとかワンマンもできるようになりました（笑）。

━━どうやって鍛えたんですか？

　コンビニのレジ袋に砂を詰めて、持ち手のところに指をかけて、指の力で袋を持ち上げるんです。

━━バーベル的な。むちゃくちゃ体育会系のノリですね（笑）。

　それをやり続けていたら、90分のワンマンも指弾きで弾き切れるようになりました（笑）。

━━では最後に、太輝さんが考えるベースの醍醐味とは？

　バンドを一番客観視できるポジションだと思うので、常に裏方・調整役でありながら、バンドのキーでもあると思います。それにベースは一番難しい楽器だと思っていて。ギターやドラムって速弾きをしたりすると、わかりやすく“ウマい”ってなりますよね。でもベースって、曲のなかでうわ～って速弾きをしてもうるさいだけだったりもするし、速いからといってウマいって評価されるわけでもない。いくらタイトに16分でプレイできたとしても、わかる人にしかわからなかったりもする。そういった意味でも、どこで出てどこで引くかのせめぎ合いが難しいし、そのバランスがおもしろい楽器だなと思います。