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    INTERVIEW − 関谷友貴[TRI4TH]

    • Interview:Kengo Nakamura

    “ジャズ”を拡張する革新派ウッド・ベーシスト

    パンクやスカの要素を取り入れた“踊れるジャズ”を標榜し、ロック・バンド顔負けのアグレッシブなライヴ・パフォーマンスが話題を呼んでいるライヴ・ジャズ・バンド、TRI4TH(トライフォース)。世界的にも“ジャズ”がさまざまなジャンルとクロスオーバーし、新たなカッコ良さの指標として注目を集めているなかで、彼らの存在はますますおもしろいものとなっている。そのサウンドをより興味深いものにしているのが、既存のウッド・ベースの概念を拡張し続ける関谷友貴だ。

    TRI4THでの自分のポジションは、
    サッカーでいうところのボランチ。

    ━━『Turn On The Light』はメジャー3枚目となるアルバムです。フィーチャリング・アーティストを迎えたり、カバー曲を入れたりしていますが、作品の構想はこのコロナの状況下になる前からあったんですか?

     そうです、まったくこんな状況になるとは思っていなかったですけどね。録音自体は3月頭から始めていて、主要曲はすでに録った状態でした。それから緊急事態宣言が出てレコーディングがストップして、レコーディング・スタジオもバラしになっちゃって、ポカンと空いたときにこの曲たちを見つめ直してみたんです。“このアルバムに足りない曲はなんだ?”って。それで緊急事態宣言が明けてからこのアルバムの脇を固める楽曲たちが補完されました。「Sailing day」や「EXIT」、「Move On」、「Bring it on」、「Corridor in Blue」などがそうやって最後にできた楽曲です。

    ━━「Sailing day」は楽曲自体もJポップ的な展開の曲で、ウォーキング・ラインを基調にしながらもバスドラと合わせたシンコペーションのつけ方、フレーズのつなぎ方など、ポップス感のあるエレキ・ベースのような細かい動きをしていますね?

     この曲は自分が原曲を書いたんですけど、もともとは激しいロックの曲でした。そこからメンバーでディスカッションを重ねて、アレンジしては消し、しては消しっていうのを繰り返して、結果、数えてみたら14回もリアレンジしていた曲です。ドラムとのマッチングやグルーヴ感も当初のものとはかなり変わりましたね。コード進行ははじめから終わりまで全部同じ4小節のループで、コードも5つしか使っていないんです。でも、そこでひとつのストーリーを作るために、シンコペーションの位置やベース・ラインを変えたりしています。コード進行の束縛がありつつも自由に羽ばたくことができた曲かもしれないですね。

    ━━ベース・ラインは構築して作るタイプですか?

     基本的に自分は全部アドリブでやっちゃうタイプなんですけど、最近のバンドの傾向としては構築しがちです。ただ「Sailing day」はわりと手グセで一筆書きでいった感じですね。

    ━━歌モノのJポップで使われていてもおかしくないフレージングですよね。

     ベースはホーンとドラムの架け橋にならないといけないので、ホーンとのマッチングも考慮しつつバスドラやアクセントを考えて弾いたので、それがJポップのベースっぽく聴こえる要因かもしれないですね。

    ━━「For The Loser feat.KEMURI HORNS」は、まさにスカ・パンクという楽曲で、TRI4THの持ち味が出ています。

     この曲はフィーチャリングでKEMURI HORNSに入ってもらったんですけど、実は僕、高校生の頃にKEMURIのコピー・バンドをやっていたんですよ。僕のスカ・パンクのルーツともいえるバンドの方々と共演できて感極まるものがありましたね。

    左から、織田祐亮(trumpet)、関谷、伊藤隆郎(d)、藤田淳之介(sax)、竹内大輔(p)。
    『Turn On The Light』
    ソニー/SECL-2619

    ━━ベースのフレーズはルートと5度を使ったオルタネイティング・ベースなので、これがすごくスカ・パンク感を出してます。でも、ただのスカ・パンクじゃないと感じさせるのが、ウッド・ベースならではのベースの音色の太さで、例えるならすごく太いプレベの音という感じです。

     なるほど! 僕、1961年製のプレベを使い始めたときに自分は、ジャズベよりプレベが好きだなって思ったんですね。あと、今のウッド・ベースについているマグネット・ピックアップも、駒から見てけっこうプレベの位置に近いんです。そういう要素もあって、ああいったサウンドになっている気がしますね。

    ━━フレージング的には、ピアノ・ソロの間奏の後半では8ビートのウォーキングにして勢いを加速していきますね。ああいうプレイを聴くとベースが楽曲のエンジンなんだなと感じます。

     TRI4THでの自分のポジションは、サッカーでいうところのボランチだと思っていて。基本は守っているけど、隙があればいつでも攻められるぜ! フロントに行けるぜ! って感じで常に狙っています。

    ━━そのときに、どのタイミングでどういう感じでフロントに行くかがベーシストのセンスが出るところですよね。

     そうなんですよね。あんまり前に行きすぎても下がスカスカになっちゃうし、守りすぎてもあんまりバンド・サウンドにならないんですけど……。この曲はうまいことバランスが取れたかなと思います。あとこの曲、半音下げで弾いてるんですよ。

    ━━それこそエレキで、ラウド系のバンドではダウン・チューニングも多いですけど、ウッド・ベースで半音下げですか(笑)。

     ウッド・ベースの概念をぶち壊しています(笑)。基本的にジャズの人はやらないですよね。後半に一瞬、E♭の音がランニングでドーンと出てくるんですけど、普通のチューニングだとそれが出ないので……。あと、この曲はキーがD♭なんですが、D♭は開放弦が使えないから弾きにくくて大変なんですね。フレットレスと同じでウッド・ベースも開放弦を使ったほうが安定するので開放弦を使いたくて、半音下げだといい感じでできました。

    Turn On The Light』 トレーラー映像
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