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INTERVIEW – 須藤満 [TRIX]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto

18年連続リリース継続中!
歩みを止めないバンドのコロナ禍2作目

元カシオペアの熊谷徳明(d)と元T-SQUAREの須藤満(b)を中心に結成され、 フュージョン・シーンの2トップである両バンドのDNA を受け継ぎながらその王道をひた走るバンド、TRIXが8月にニュー・アルバム『RING』をリリースした。2004年のデビュー以降、2013年にはバークリー主席卒のAYAKI(k)、2017年には有形ランペイジの佐々木秀尚(g)といった若き才能をバンドに迎えながら、毎年必ず1枚のオリジナル・アルバムを発表してきた彼ら。コロナ禍においても歩みを止めることを知らないスーパー・フュージョン・バンドによる、“人と人との繋がり”をテーマにした18枚目のオリジナル・アルバムについて、須藤に話を聞いた。

制作の部分においては、“コロナになったから”
というのは我々の場合なかったんですよ。

━━デビュー以来毎年アルバムをリリースし、これまで歩みを止めずに活動してきたTRIXは、昨年からのコロナ禍をバンドとしてどのように過ごしていましたか? 

 基本的にはこれまでとあまり変わっていないですね。幸運なことに2020年に関しては、夏過ぎからコロナが一時期よりは下火になっていたり、もちろんライヴハウスの皆さんが感染対策をすごく頑張ってくださったりしたこともあって、ツアーもできましたしね。コロナ禍にあっても、アルバム制作に支障はないだろうという熊谷(徳明/d)リーダーの判断のもと、去年のアルバム(『PRESENT』)も今回のアルバムも問題なく作れるだろうということで、 “じゃあ今年もアルバムは作りましょう”という流れになっての現在という感じです。

━━今作『RING』の制作プロセスも、過去のアルバムとさほど変化はないのでしょうか?

 TRIXは、レコーディング前に全体でのリハーサルというものをほぼやったことがないし、全員一緒に“せぇの”で録音するということもないんですね。全員がそれぞれデモと譜面を作ってメンバーに回し、各自が家で練習しながらある程度消化したのち、録音場所である熊谷くんの家のスタジオで彼と一対一で試行錯誤しながら作るというスタイルは昔から変わってないんです。この部分においては、“コロナになったから”というのは我々の場合なかったんですよ。

━━今作をもってTRIXはデビュー以来18年連続でアルバムを出し続けていることになります。これって本当にすごいことだと思いますが、毎年出すことの難しさはどんなところにありますか?

 アルバム全9〜10曲の構成としては、熊谷くんの曲が6〜7割で、あとのメンバーが1曲ずつというような割合なのですが、僕なんかは曲を作るのに時間がかかる人なので、年1曲を作るのにもわりと頑張るんですよ。この歳になってくると1年って早くて、近年は“この前作ったのにまたか”みたいな感覚もありつつ(笑)。だから僕に関して言うと、大変なのは曲作りの部分ですかね。熊谷くんはものすごいなといつも感心しています。毎年それだけの曲数をアルバムに向けて作るわけで。

『RING』
キング/KICJ-848

━━毎年アルバムを作ることには大変さがある一方で、バンドや作品にとってのポジティブな影響もあるのでしょうか?

 やはり年1作というタームが決まっているからこそ、楽しみにしてくれている方にとっては、次の希望が予定されるという面はあると思います。やっている側としては、記憶がなくならないうちに次の作品に取りかかれるのは良いことですね。曲作りに関しても、前作を踏まえて今作では新しいことにトライしようとか、みんないろいろ考えているだろうと思います。

━━今作は、困難な状況にある社会情勢も受けて“RING=人の輪”や“人と人との繋がり”というテーマが掲げられていますが、音楽的には“こういうサウンドにしよう”など、メンバー間での共通認識などはありましたか?

 全体の6割7割の曲を書いている熊谷くんは、リーダーとしても“今回はどうしよう”みたいなものを毎回考えていると思うんですけど、デモ制作に入る段階で、熊谷くんから“今回はこういうキーワードで曲を作ってくれ”みたいなオーダーがあるわけではないし、メンバー内でそういうことについての話し合いっていうのが特にあるわけじゃないんです。ただ熊谷くんがずっと言っているのは“ポップで聴きやすくてキャッチーで、何か引っかかるもの”ということで。それはリズム面だったりメロディ面だったり、楽曲全体のフィーリングだったり、いろいろあると思うんですけど、“カッコいい!”であれ“なんだこれ?”であれ、引っかかることが大事で。今作の彼の6曲についても、とにかく聴いてくれる人の耳に何かしらフックするものという発想のなかで作っていると思いますね。

━━須藤さんが作曲した「Big Time」は、どういった発想から曲作りが始まりましたか?

 まず熊谷くんからの6曲がやってきて、それに対して最初に浮かんだのが “3拍子系のファンキー・フュージョン”っていう、TRIXの曲で言うと「Recollection」風な3拍子モノということ。それで考えるなかでメロが最初にできて、コードづけをしていくなかで、“あ、今年はオリンピックがあるじゃん”となり、ファンファーレ的なイントロを発想しました。

━━3拍子系の途中でラテンを感じるようなリズムが入ってくるなど、1曲のなかでグルーヴの変化が感じられる曲になっていますね。

 そうですね。曲作りでセクションごとにどう変えていくかっていうのは考えるところなので。全体のサウンドを変えていくやり方もあれば、実際のプレイ内容を変えることもあるし、いろいろな手法があると思いますが、僕は演奏内容を変える形でセクションの違いを作っていくことが多いと思いますね。

━━デモをメンバーに送ってからのバンドとしての化学反応みたいなものはありましたか?

 デモの段階でブラスのサウンドも大筋までは自分で考えてみんなに渡したのですが、ブラスに関してはAYAKI(k)くんが自分のビッグ・バンドをやっているので、音的な部分もフレーズも含め、アレンジをお願いしまして。サウンド的にすごい生のブラス・セクションっぽいものになっていると思います。あれは彼にやってもらわないとああいう風にはならなかったという感じですね。ギターのバッキングに関しても、僕はあそこまでは考えてなかったので、レコーディングの段階で佐々木(秀尚/g)くんがやってくれました。

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