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INTERVIEW – Jun Yokoe[PLASTICZOOMS]

  • Interview:Koji Kano
  • Photo:Yuki Sugiura

“足し算と引き算”の考え方でベース・ラインを構成する

━━「Swallow」はAメロからのギターと噛み合った、転がるようなリフ的なベースがアンサンブルの中心になってますね。この曲は生ベースですが、どんなプレイを意識しましたか?

 この曲は90’sのオルタナ、具体的にはアリス・イン・チェインズとかからの影響が強いんですけど、デモ段階で先にギターのアレンジが固まってきたので寄せていきましたね。特にサビ後半のベースはギターとユニゾンさせて曲にメリハリを出したりと。4分でボンボン弾くフレーズなので、どこか緩急を付けられないか探ってました。

━━分厚いバンド・サウンドのなかでもしっかりベース・サウンドが抜けてきて迫力がありますね。

 この曲ではTech 21のVT Bassで音を作っているんです。ミドルのつまみが付いてるし、リッチなハイが出てくれるので、いわゆる“サンズ感”が出過ぎずに汎用性の高い音が作れますね。今作は制作期間が長かったこともあって、音作りひとつにしてもエンジニアと細かく打ち合わせをしたり、いろいろと試しながら制作を進めました。

━━「A Dot」はベースが楽曲をリードしている印象です。随所に入ったスラップやAメロの細かいスタッカートなど、今作でも特にベースが映えていますね。

 この曲は一番ベースを録った曲です(笑)。難しかったっていうのもあるんですけど、Aメロみたいなドラムに合わせる部分がある一方で、コーラス・ワークに近いベース・ラインの部分もあったりと、キモとなる箇所も明確だったのでノリを試行錯誤しながら録音していったんですよ。

━━プラズでスラップを入れるのは珍しいのでは?

 ライヴではアレンジ次第で入れることもありましたけど、音源に入れたのは初めてかもしれませんね。僕らは音色の数が多いので、あまりスラップが映えなかったりするんですよ。でもこの曲はベースが主役のポジションだったこともあって遊べました(笑)。

━━ギターやシンセとシンコペしたフレーズもうねりを生んでいますね。ほかの楽器との兼ね合いも綿密に計算されているのでは?

 ほかの楽器フレーズとの兼ね合いを考慮したうえで、“足し算と引き算”の考え方でベース・ラインを構成するようにしているんです。歌も楽器のひとつだけど、やっぱり歌詞を乗せるぶん、お客さんに届く意味合いが違ってくるので、歌を聴きたい方にはその楽しみを一番に提供したいと思っています。

━━「Push n Drive」はバック・ビートと噛み合ったハネたベース・ラインが印象的ですね。ラストのサビ前のフィルなど、シンベのような音も聴こえますがどのような音作りをしたんですか?

 この曲は一番制作が難航した曲で、生ベースでシンベの音をカバーする感覚でサウンドを作っていったんです。具体的には古いミキサーを使ってヴィンテージ・ライクな歪ませ方をさせつつ、部分ごとに歪みの分量を調節しました。この曲はライヴではもう演奏していて、ワーミー・ペダルをオクターバーの代わりに使っておもしろく表現してるんです。ライヴから楽曲に持ってくる感覚も大切だと感じますね。

━━分厚いシンセ・サウンドが目立つなかで、あえて生ベースで弾いてますね。何か狙いはあったんですか?

 この曲はいかにもベーシストらしいベース・ラインということもあって、生ベースで録音したいと思ってたんです。ドラムは打ち込みか生かで迷ってたんですけど、圧倒的に打ち込みほうが良くて。結果、打ち込みのドラムが根底にありつつ、ウワモノでギター、生ベース、シンセで遊びを入れていこうという方向性になったんです。

「Push n Drive」Official Video

━━「Into The Colors」はシューゲイズ・チックなギターと生ドラムに対して、あえてシンベを使うことによって特異な世界観になっていますね。

 この曲はまずドラムを聴かせたい曲だったので、細かい音数や生ベースはそんなに必要としなかったんですよ。一曲を通して聴かせどころもたくさんある曲なので、C/D/Fの3コードでのロング・トーンのワン・フレーズのみで勝負しました。

━━なるほど。音色には特にこだわりがありそうですね。

 そうですね。今作は“サイケ感”というのがキーワードにあったので、それを前提に置きつつ楽器のエフェクトを構成していったんです。「Wiggle」という曲では録音したベース・ラインの波形を切って反転させたりもしましたね。細かいことですけど、こうすることで生まれる微妙な違和感をフックにしたかったんです。

━━シンベと生ベース、曲によってどのように分けてるんですか?

 シンベって独特の歪み感があるじゃないですか? なので生ベースにすることでその歪み感に淀みがでることが曲にとってアリなのか、ナシなのかでジャッジしているんです。今作でもミックスの段階でシンベの音色を変えることも多々ありました。ライヴだとまた考え方が違っていて、たとえば「The Worm」はライヴでは生で弾くことにしたんです。

━━生ベースで再現するのは大変そうですね。

 レギュラー・チューニングじゃ弾けないですからね(笑)。基本僕らの曲のチューニングはレギュラーかドロップDなんですけど、ベースにカポをつけることもあるんです。

━━ベースにカポを付けるのは珍しいですね。

 はい。スパイダー・カポっていう、弦一本一本にカポを付けられるものを使ってるんです。ちなみに「The Worm」ではドロップDで4弦だけ3カポを付けてます。あとやっぱり、シンベじゃなくて生を使うことなりの説得力を出すためにエフェクト選びにも気をつかいますね。“熱量を伝えるのはライヴ、作品全体を伝えるのは音源”でそれぞれ持つ意味も違うし、別ものですからね。

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