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INTERVIEW – 高松浩史[THE NOVEMBERS]

  • Interview:Kengo Nakamura Photo:Susie(Live)

さらにサウンドの拡張を推し進め
独自の世界を歩み続ける
オルタナティブ・ロック・バンドの真骨頂

オルタナティブ・ロック、80’sニューウェイヴ、ポストパンク、シューゲイザーを基盤に、イマジネーション豊かな曲想を展開するTHE NOVEMBERSが、通算8作目となるアルバム『At The Beginning』をリリースする。前作『ANGELS』でシンセ・サウンドへの大胆な接近を試み、大きな手応えをつかんだということで、本作では前作をさらにブラッシュアップしたサウンドをベースにしつつ、これまでにあまり表に出ることのなかった要素も取り入れて新たな表情も見せている。ベーシストの高松浩史も、これまでとは違った奏法やサウンドメイクに意欲的に取り組み、また新たな手応えをつかんだようだ。

昔は、“ハードロック”に
照れみたいなものがあって……

━━前作『ANGELS』から1年ということで、リリースのスパン的にはわりと早いですね。前作は3年ぶりのリリースでしたから。

 前作の『ANGELS』という作品が、自分たちにとってすごく感触が良かったというか、手応えがあった作品だったんです。そういう作品を出してツアーをやって、秋口にもライヴをやって、勢いがあるうちに次作を作ったらいいんじゃないかという感じでしたね。

━━個人的には、前作はギター・サウンドからシンセ・サウンドへと比重が移った、変革のサウンドだったと思いますが、振り返ってどう思いますか?

 そうですね。だいぶ変わりましたよね。でも、作り終わったあとに、“今回、ギターの比重が減ったな”と思う感じでしたし、そこまで意識はしていなかったんですよ。ただ、以前はスタジオ・ワークでバンドでセッションして曲を作るといった過程もけっこうあったんですけど、前作くらいから、作曲者である小林(祐介/vo, g)くんが、シーケンス込みで曲を持ってきて、それに対してバンドで肉付けをしていくというアプローチが多くなったので、曲の大元がシーケンス主体になったことが大きいのかもしれないですね。

━━新作『At The Beginning』は、そういったサウンドメイクの延長線上にありますよね?

 『ANGELS』の手応えが良かったので、『ANGELS』のもっとスゴいものを作ろうという感覚はあったのかなと思います。でも、バンド・サウンドとシーケンスが別ものというよりは、僕としては“シーケンスもバンド・メンバー”くらいの感じですね。

前作『ANGELS』のストリーミング試聴

━━そのシーケンス部分では、今作のほとんどの曲に、yukihiro(L’Arc~en~Ciel)さんがシーケンス・サウンド・デザイン/プログラミングで参加しています。それも、そういったシンセ的なアプローチをすることに明確に意識があったのかなと

 実は、バンドが全部録り終わったあとにyukihiroさんの作業が入ったんですよ。バンドがレコーディングする段階では、もともと小林くんが組んだシーケンスはあったんですけど、最終的にyukihiroさんがどういう風にしてくれるかはわからない状態でやっていたんです。なので、そこはあまり意識はしていませんでした。yukihiroさんが作業してくれたあとに聴いたものは素晴らしくて。こんなに変わるものなんだなという感動が大きかったです。

━━曲調でいうと、「理解者」はインダストリアルなリフがあり、メタル/ハードロック的な曲調ですが、特にBメロのドライブ感は“ハードロック”的ですよね。個人的には、ハードロックでもありつつ、ストーン・テンプル・パイロッツ的なものも感じましたけど。

 あはは。なるほど。

━━ああいうド直球なハードロックな感じって、THE NOVEMBERSとしてはこれまで出していなかった要素かなと

 そうですよね。今回のアルバムで頻出したキーワードみたいなものとして、インダストリアルとメタル、ハードロックっていうものがあったんですよ。それを感じていただけたのかな(笑)。

━━インダストリアルって、THE NOVEMBERSのサウンド要素として、すごく自然に受け取れるんですけど、いわゆる“ハードロック”って、ある意味正反対というか、そういうのキライなんだろうなと思っていたんですよね(笑)。

 昔は、“ハードロック”に照れみたいなものがあって……。わかりますかね?(笑)

━━わかりますよ(笑)。なんとなくまっすぐ男らしいというか

 そういう部分を敬遠してきたっていうとアレですけど、避けてきたんです。でも、この歳になって、今の状況とかもあるのかもしれないですけど、なんかすごくポジティブに捉えられるというか。カッコいいと思って取り入れられたのかなとは思いますけどね。

━━メンバーの世代的には、グランジやインダストリアルというのがドンピシャだとすると、ハードロックってひとつ前の世代っていう感覚ですよね。

 そうですね。でも、グランジでもハードロックの流れを継いでいる人たちってたくさんいたじゃないですか。もしかしたら、そっちのほうの影響があるのかもしれないですね。“ハードロック”単体というよりは、そのあとに出てきたグランジの人たちが、ハードロックの流れを持っていたというか。そういう人たちに近いのかもしれませんね。

━━そして、ラストに入っている「開け放たれた窓」はTHE NOVEMBERS流のシティ・ポップ?

 ほほう。これは、“80年代とか90年代初頭くらいのJポップの感じ”ということを言っていた気がします。ちょっとバブリーな感じで(笑)。そういう意味で、感覚的には近いものがあるのかもしれないですね。

━━ベースでは、前作ではミック・カーンがキーワードとしてありました。今回はそういうものはありましたか?

 なんだろう? さっきの話じゃないですけど、僕はハードロックの流れを継いでいるグランジの人たちのベース・サウンドはけっこう参考にしましたね。特定の誰かというよりかは、漠然としたイメージというか。

━━それって、ギターの下にいてサウンドのボトムを支えるという、ある意味ベースらしいアプローチやサウンドですよね。前作のミック・カーンはベースでも飛び道具のほうじゃないですか。

 そうですね。アプローチもそういったベーシックなものが多いし、サウンドメイクも、前作はけっこうガシガシ歪ませていたんですけど、昔のグランジの人たちって、ギターはアンプとかでしっかり歪んでいるんですけど、ベースは意外とクリーン・トーンだったりしますよね。だから、極力歪み感は抑えつつ、最低限の歪みで馴染ませる程度という意識でしたね。

前列左から、小林祐介(vo,g)、ケンゴマツモト(g)。後列左から吉木諒祐(d)、高松浩史(b)。
At The Beginning
MERZ
MERZ-209

5月16日(土)からはバンドキャンプのみでアルバム全曲ダウンロード先行販売を開始。
https://the-novembers.bandcamp.com/
5月27日(水)からはその他サービスでのダウンロード販売、各サブスクリプションサービスでのストリーミング全曲配信、各CDショップでの一般発売が開始される。

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