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複雑なアンサンブルをポップに魅せる
多彩なベース・アプローチ
どこまでもポップなサウンドと物語を描くように紡ぎ出されるアンサンブルで、唯一無二の世界観を創出するロック・バンド、ネクライトーキー。その緻密に計算されたサウンドはロック・シーンのなかでもひと際存在感を放っている。5月19日に発売されたメジャー2nd作『FREAK』は、彼らの真骨頂でもある突き抜けたポップ・センスと多彩なサウンドが存分に楽しめる一枚だ。ベーシストの藤田は複雑に絡み合うバンド・アンサンブルにおいて、下支えしつつも随所で印象的なベース・アプローチを展開。加えて細やかなサウンド・メイクでグルーヴの根幹を担っている。若手注目株のロック・バンドが示す“最新型ポップス”の形とともに、彼女のベース・プレイの裏側に迫っていきたい。
“おじさんが小気味よく踊ってる感じのベース”というオーダーもありました(笑)
━━藤田さん、朝日(g)さん、カズマ・タケイ(d)さんの3人はもともとロック・バンド、コンテンポラリーな生活として活動していたわけですが、どのようにしてネクライトーキーは結成されたのですか?
私たちがコンテンポラリーな生活をやっていたとき、朝日は“石風呂”という別名義でボカロPもやっていたんです。ネクライトーキーは、このボカロの曲をやるために、彼が新たに作ったバンドなんですよ。結成にともなって朝日が自分でメンバーを集めていったんですけど、結果として私とカズマ・タケイはこのバンドでも活動をともにすることになりました。
━━コンテンポラリーな生活と音楽性などを差別化する狙いはあったんですか?
一番異なる点は女性ヴォーカルでボカロの曲をやるというコンセプトですね。コンテンポラリーな生活ではできない音楽をやりたいという思いも、彼のなかにあったと思います。
━━ちなみに藤田さんはいつからベースを弾いているんですか?
高校生のときに始めました。中学のときにポルノグラフィティが大好きだったんですけど、好きな曲の作曲者のクレジットを見たら当時のベーシストのTamaさんの名前があったんです。それをきっかけにベースに興味を持つようになりました。高校の軽音楽部時代にはいろんな音楽に触れるようになったんですけど、特に大きな存在だったのはゆらゆら帝国ですね。ほかにはレッド・ホット・チリ・ペッパーズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、カサビアンといった洋楽バンドのコピーもしていました。
━━では好きなベーシストは?
うーん……正直、私は“このベーシストが好き”っていうのがあまりなくて(笑)。ただ、専門学生のときにジャコ・パストリアスを知ったんですけど、その凄さに圧倒されました。
━━今作『FREAK』は前作から約1年4ヵ月ぶりの作品です。本作にはどのような思いやコンセプトが込められているのですか?
私たちの場合、明確なコンセプトというものは毎回なくて、できた曲を集めていくことで一枚の作品になる感じなんです。今作は前作と比較すると、よりシンプルな考え方で作っていった印象がありますね。ただ、シンプルでありつつも時間をかけて一枚を作りたいという思いはありました。
━━なるほど。曲作りはどのような手順で行なわれるんですか?
前作までは朝日がある程度作り込んできたデモをもとに曲を作り上げていくことが多かったんですけど、今作ではリフのフレーズだけとかギターとメロディだけを持ってきて、そこに対して各メンバーのニュアンスを加えることで曲作りを進めていきました。
━━ベース・ラインはどのような流れで作るんですか?
曲によっては“このリフを弾いてほしい”という感じで明確なオーダーをされることもあって、それに対して自分でアレンジを加えていきます。ただ今作だともっさ(vo,g)が作曲した曲で“おじさんが小気味よく踊ってる感じのベース”というオーダーもあったんです(笑)。そういった作曲者の意図を自分で消化しつつベース・ラインを構成していきます。
━━朝日さんとは付き合いも長くなっていますが、朝日さんの楽曲にどのようにベースを入れ込むかは、自分のなかでポイントがはっきりしていますか?
コンテンポラリーな生活では、朝日が作ってきた曲をいかにぶっ壊すかという方向性だったんですけど、ネクライトーキーでは下支えしつつベースができることを探ったり、フックを入れて楽曲をキャッチーにしたいという思いがあるんです。またウワモノにギター2本とキーボードがいるので、それらをしっかり支えることにも徹するようにしています。ただ彼は好みとして“ベースらしいベース・ライン”が好きなので、そこは意識してフレーズを作るようにしているんです。
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