PLAYER
UP
INTERVIEW – ヴィクトリア・デ・アンジェリス[マネスキン]
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Translation:Mariko Kawahara
- Photo(Live):Yoshie Tominaga
- Photo(Artist):Francis Delacroix
- Photo(Bass):Takashi Yashima
私のベースの先生が言っていたことがあるの。
“君よりうまいベーシストはもちろん山ほどいるけど、君は自分のバンドでやらないといけないことを完璧にやっている”って。
──マネスキンは「MAMMAMIA」「ZITTI E BUONI」など、とにかくキャッチーで鮮烈な印象を残すベース・リフが楽曲の中心にあるものが多いですよね。そういったベースのプレイ・スタイルはどのようにして形成されましたか?
単に曲作りのスタイルがリフから始まるものだったからだと思う。私たちが最初に書いた曲もベース・リフから始まる曲だった(笑)。ライヴを重ねてサウンドを模索していくなかで、エフェクト・ペダルを使うことでベース・リフをより際立たせることができるようにもなっていった。
──「MAMMAMIA」など、ベース・リフをギターとユニゾンさせるアプローチも多いですが、曲作りの際はギターとベースのどちらからリフが生まれることが多いのでしょうか?
「MAMMAMIA」はベース・リフから始まった曲だったけど、これに関しては曲によって毎回変わるかな。さらに私たちの場合は、1曲のなかでも各パートの役割は常に変化していて、例えば「ZITTI E BUONI」ではヴァースはギターから始まるけど、ブリッジではベースが楽曲を引っ張っている。私たちはお互いにインスパイアし合ったり影響し合いながら、それぞれのプレイを生み出しているの。
──ちなみに「MAMMAMIA」のベース・リフはファズを踏んでいるようなトーンですが、ここで使用した機材は?
ライヴではProCo製RATと、effettidiclaraというイタリア製ハンドメイド・ブランドのAGATA(Over Drive)も使っている(※エフェクター・ボードはベース・マガジン2022年11月号に掲載)。スタジオでは、もっといろんなペダルを使っているけどね。
──普段、ベース・ラインはどのようなプロセスで考えていきますか?
インプロヴァイズすることもあるけど、頭のなかにメロディが浮かぶこともあって、それをベースで弾いてみる。でも大抵はジャムから生まれることが多いかな。ひとりで弾いたり、ドラムに合わせて弾いたりしているうちにベース・リフが生まれることもある。
──あなたの考える、いいベーシストの条件とは?
どのバンドでプレイしているかによると思う。私のベースの先生が言っていたことがある。“君よりうまいベーシストはもちろん山ほどいるけど、君は自分のバンドでやらないといけないことを完璧にやっている”って。だから、バンドのサウンドに個性を添えられるものであればいいんじゃないかな。もちろん、うまくなるためにテクニックは役に立つけど。“自分のスタイルを理解する”ことで無限の可能性が広がると思う。もちろん、セッション・ミュージシャンとして別のアーティストのためにプレイする場合は完璧にプレイしないといけないけど、自分のプロジェクトであれば一番大事なのは“明確なヴィジョンを持つこと”だから。自分の求めるサウンドに対するアイディアがあって、バンドをどうしたいかがわかっていて、ベストなやり方でそれを達成することが大事だと思う。
──デビュー以来、ダンエレクトロのベースを使っていますが、気に入っているポイントはどこですか?
あのトーンが大好きで、とても独特な音だと思う。以前はフェンダーのプレシジョン・ベースしか使っていなかったけど、ツアー中に腰が痛くなっちゃったこともあり、ショート・スケールの軽いベースが欲しいと思った。そんなとき、確かザ・フーのビデオでダンエレクトロ製のLonghornを初めて観て、“あれは一体何?”と思ってすぐに買ったの。すごく小さいベースで、リハーサル用で使えればいいと思っていたんだけど、実際に弾いてみたらかなり気に入った。私たちのアルバムを手がけたプロデューサーも、“ディストーション・ペダルと組み合わせることで、すごくユニークなトーンを生んでいるよ”と言ってくれて、それからはダンエレクトロを使っている。2年か1年半ほど前のことだったかな。
──『Teatro D’Ira Vol.I』のレコーディングでも、ダンエレクトロのベースを使っていますか?
このアルバムのレコーディングは3日でやったんだけど、全部ダンエレクトロのベースで弾いている。どの曲も“せぇの”で5テイクずつぐらい弾いて終わりという感じで、スピーディに録っていった。その前のアルバムまではレコーディングではプレシジョン・ベースをメインで使っていて、ジャズ・ベースも持っていたんだけどね。
今回の来日でメイン器として使用されたダンエレクトロ製Longhorn Bass。韓国製で、シリアルナンバーは“089730”。“このベースは数ヵ月前に手に入れたばかりのもので、確か今年作られたものだったと思う。今、私はダンエレクトロとエンドースをしているから、ベースがたくさん送られて来るんだ(笑)”。写真は8月18日の豊洲PITでの単独公演時に撮影したもので、ステージ裏にはチューニング違いのベースを含む計6本のLonghorn Bassが用意されていた。このほかのベースや、アンプ、エフェクター・ボードも含めたこの日のライヴ使用機材は、次号のベース・マガジン2022年11月号で一挙紹介予定。そちらもチェックしてほしい。