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シンプルの奥に潜むベースの魅力
ソウルやファンクなどのブラック・ミュージックを核に据えつつ、現代的なポップ感を体現したサウンドで注目を集めるLUCKY TAPES。このたび発表された4thアルバム『Blend』では、これまで彼らのサウンドを華やかに彩ってきたホーン隊の起用を抑え、ヒップホップ的手法を取り入れたシンプルで落ち着いた楽曲をメインに据えている。ベーシストのKeityにとっても、これまでとは違うアプローチが求められた作品だというが、シンプル=簡単ではない、隅々まで神経の行き届いたグルーヴが心地よい仕上がりとなっている。
ベースは下に潜ってウネウネして一定のグルーヴを出す。
ヒップホップな質感は出したいところでした。
━━前作『dressing』はバラエティに富んだアルバムでしたが、新作の『Blend』は落ち着いた楽曲が多く、統一感のある曲が並んでいます。新作に向かうにあたり、バンド内で話していたことはありますか?
いや、これといった話はしていませんね。『dressing』のときにはロック調の曲もあったんですけど、それはたぶん(高橋)海(vo,k)くん的にライヴを想定していたんだと思うんです。でも、ライヴ活動が止まったり、自粛で家にいることが多くなって、出てくるものがそういうものじゃなくなってきたというか。それで“チル”じゃないけど、家のなかでひとりでゆったり聴けるような曲調が多くなったのかなと思います。
━━確かに、これまでのキラキラとしたポップスとは違う方向性の楽曲ですよね。
これまではLUCKY TAPESといえばホーン隊っていうイメージも強かったと思うんですけど、自粛期間中のリモートRECということで、今回はホーン隊もあまり入れていないですし。ただ、今までは逆にホーン隊というところに縛られていた部分もあるのかなと思っていて、それとは違う作り方ができたのは良かったと思っています。ウワモノはギターのリフとかが多くなって、ちょっとスッキリしたサウンドになったというか、普段の生活に馴染むようなアルバムになったのかなと。
━━ヒップホップ的な要素も強いです。
そうかもしれないですね。今はヒップホップのサウンドが主流だし、ビート・ミュージックとか、そういったトレンドも取り入れてそうなったんだと思いますね。
━━Keityさんとしては、海さんからそういったテイストの曲があがってきたときにはどういう感想だったんですか?
今までは生ドラムでやっていた部分が打ち込みのビートに変わったことで、ベース・ラインはもっとシンプルでもいいのかなっていうのは思いました。海くんからも“シンプルに”とは発注をもらっていたので、ベース・プレイ自体も全体的にこれまでとはガラッと変わりました。あんまり弾きすぎないんだけど、でも印象的なフレーズを残すようにするっていうイメージでしたね。
━━ビートが打ち込みになると、グルーヴ・メイクがよりベースにかかってくるという気がします。
それは難しいところでもありました。例えばゴーストノートを一発入れるか入れないかとか、グリスの入れ方やヴィブラートの仕方でグルーヴが違ってきたりしますから。そういう部分では、フレーズ自体はシンプルながらも、こだわった部分がけっこうありましたね。あと今回は全部宅録で作っているんです。ミックスやマスタリングも海くんがやっています。ベースも僕が自宅で録音したものなんですけど、けっこう今回の作り方が肌に合っていたなと思っていて。時間に縛られないというか、家でゆっくり考えて自分のペースでできるっていうのがすごく良かった。
━━自宅録音の環境は?
DAWはLogic Proを使っていて、オーディオ・インターフェイスはタスカムのもので、DIはルパート・ニーヴ・デザインのRNDIをかましています。音作りはMXRのbass d.i.+を使っていて、DAW上でイコライザーやコンプレッサーをかけたりとかはしますけど、このセットが基本ですね。
━━「BLUE feat.kojikoji」や「No Sense」は、サブ・ベースが足されているのかなと思うくらい、非常にずっしりとしたロー感がありますね。
それはたぶんbass d.i.+のカラー・スイッチのおかげかもしれません。海くんのミックスはローをめちゃくちゃ出すんで、自分の録り音でもそこらへんは強調しました。
━━「BLUE feat.kojikoji」は、下へもぐりこむようなサウンドですが、親指弾きですか?
いや、これは指弾きでフロント寄りで弾きました。そんなにパキパキせず、下でもぐっている感じを狙いましたね。
━━「No Sense」も非常に抑制された音色で、フレーズ自体は細かいですが、具体的なフレーズを聴かせたいというよりは、“波感”というか、ウネる感じが伝わればいいというように感じました。
そういう部分が伝わっていれば嬉しいですね。今作はギターが華やかさを担っているので、ベースは下にもぐってウネウネして一定のグルーヴを出すという、ヒップホップな質感は出したいところでしたから。