PLAYER

UP

INTERVIEW – Keity [LUCKY TAPES]

  • Interview:Kengo Nakamura

先輩たちからけっこう口すっぱく、
“ベースは音の長さと音の切り方だから”って言われるんです。

━━「Mars」は曲を通して“ダッダッダー”というリズムが核になっています。鍵盤は音をつなげて弾いていますが、ベースは最初の2音はスタッカート気味で弾いていて、その音の長さがキモになっていますよね。

 ここも海くんとすごく詰めた気がします。特にサビはけっこう難しかったですね。ゴースト・ノートを入れるか入れないかもそうだし、スタッカートの具合を変えるだけでもグルーヴが全然変わって、それはすごくおもしろかった。

━━譜面に表わせないところですよね。今作では、そういうプレイが全体的に多いと思います。

 そうですね。前のアルバムはけっこう弾きまくっていたんですよ。僕も歳を重ねるにつれて、やっぱりベースってそういうところじゃないなって思ってきたのかな(笑)。サポートの現場とかでは年上のミュージシャンと一緒になることが多いんですけど、そこで先輩たちからけっこう口すっぱく、“ベースは音の長さと音の切り方だから”って言われるんです。自分のバンドにもちゃんと反映されたのかなっていうところで、そこらへんを頑張ってきて良かったなと。

━━「3:33」はかなりゆったりとしたビートですが、ベースは細かい3連を感じて弾いていますか? ロング・トーンで伸ばすところもありつつ、フレーズが入るところはゴーストノートの1音や休符を入れるタイミングといった細かい部分でハネる感じを出しています。

 この曲では、けっこう細かい音符を意識して頭のなかで鳴らしていますね。ゴーストノートとかも入って、けっこう細かいリズムだし、今回は打ち込みのビートなので、ベースが流れやノリを出していったほうがいいのかなと思って。

━━「Over」はループ・リフになっていますが、シンプルでありつつ、絶妙にキャッチーな部分を織り込んでいます。

 この曲は、最初のデモでは海くんが弾いたシンプルなギターが入っていたので、それに対してベースはちょっと音数が多めのものを出したんですよね。そこに(高橋)健介(g,syn)のギターが乗っかってきたら、けっこう弾きまくっているじゃないですか。これはベースがうるさいなと思って、シンプルな方向で弾き直したものがこれです。ただ、耳に残るベース・ラインということは意識して。

「Over」 Official Teaser Video

━━最初の音数の多いベースを生かすために、“ギターはちょっと抑えてくれない?”っていう方向ではなかったと。

 いや、海くんからも“もうちょいベース・ラインはシンプルにしてもらえないかな?”っていう要望はありました。この曲はギターがカッコよかったので、僕が引いたほうがいいなぁとは自分でも思いました(笑)。ベースって、あんまりエゴを出さないほうがいいのかなっていう気持ちは、最近になってわかってきました。前は弾きまくっていましたけどね(笑)。差し引きの要領がわかってきたというか。

━━前は“弾きたい!”って感じだったんですか?

 “俺のベースを聴け!”ってほどではないですけど、ちょっと主張は強めだった気がします。ただ、今の音楽を聴いていると、引き算の音楽っていうイメージが強いんですよ。洋楽とかでも、余計なことをしていないというか。ベース・ラインとかも気が利いているんですよね。それが今っぽさになっているのかなって。今回はそこを目指してベース・ラインを作っていったイメージもありましたね。

━━収録曲には、アコギの弾き語り的でベースの入っていない「生活」のような曲もあります。こういう曲を“LUCKY TAPES”としてやることに抵抗はありませんか?

 全然ないですね。むしろ、海くんがひとりで弾き語りみたいなこともしていったら、もっと良くなるんだろうなというのは思っていて。前回のツアーで、海くんの弾き語りパートを2曲くらいやったんですけど、外で観ていて、すごくいいなと思って。改めてメンバーの歌声を外で聴く機会ってあんまりないですけど、僕も楽しかったし、これはいいことだなと。

━━なるほど。さて、本作を作り終えて改めてどういう感想ですか?

 生活に馴染むような作品になったかなと思います。そんなにアップテンポの曲があるわけでもないし、新型コロナの問題とかいろいろと大変なことはあるけど、焦らずいこうというか。ベースについては、シンプルさっていうのはこのアルバム一貫してのキーワードだったので、それはうまくできたのかなっていう自信はありますね。LUCKY TAPESはあくまでポップスなので、耳に残るフレーズだったりとかメロディに合わせたフレーズも弾いていたりしますし、シンプルだけど意外と考えられているっていうところを聴いてほしいですね。

━━聴いているときに感じるシンプルさと、実際に演奏するときのシンプルさが、イコールにならないような、コピーしてみて初めてその大変さに気づくような玄人感のあるプレイな気がします。

 そう思っていただけるのが嬉しいですね。派手じゃないからわかりにくいところだと思うんです。でも、ベースの楽しさって、そういうところだと思うんですよ。これをライヴでやるっていうのがまた難しいんですけど、僕も頑張りますので、ぜひコピーしてみてください(笑)。

◎Profile
けいてぃ●前身バンドとなるSlow Beachを経て、2014年6月に高橋海(vo,k)、濱田翼(d/2016年に脱退)とともにLUCKY TAPESを結成。のちに高橋健介(g,syn)が加入する。2015年に1stアルバム『The SHOW』を発表し、2016年にはフジロックフェスティバルにも出演する。ホーン・セクションや女性コーラスなどを加えたライヴ・パフォーマンスも高い評価を得ている。2018年にEP『22』でメジャー・デビューし、同年メジャー初のアルバムとなる3rdアルバム『dressing』をリリース。2020年11月25日に4thアルバム『Blend』を発表し、12月5日(土)には東京・六本木EX THEATERにてワンマン・ライヴ“「Blend」 release one-man live”を開催予定だ。

◎Information
Keity 
Twitter Instagram

LUCKY TAPES 
HP YouTube Twitter Facebook Instagram