PLAYER
UP
Interview – Sacchan［DEZERT］
- Interview：Kengo Nakamura
- Photo：Taichi Nishimaki（Live）
できあがっていく過程にも
エンタメ性がある気がするんですよね。
━━『RAINBOW』の初回限定盤には3曲のステム音源（各パートの単独音源）が収録されています。これはどのような意図で？
最初は“初回盤を作りたいよね”っていう話でした。それで特典として何を入れたら楽しいかなと。最初は歌だけ聴きたいよねっていう話になったんです。声だけ聴けるって、なんか聴いちゃいけないものを聴いている感があって楽しいんじゃないかなって。それで、だったらステム音源を入れちゃいましょうかっていう話になったんですけど、ちょっと前だったら、多分イヤだってバンドで言っていた気がするんですよ。
━━1曲通してベースの音だけを聴かせるって、なかなかシビアだったりしますもんね。
ですよね。弾き方とかアプローチに対してそんなに自信がなかった時期ってあると思うし、基本的にはあんまり出したくないものっていう認識はあったんですけど、もういいかなというか、そういうプライドも、ある種なくなったというか。何を聴かれても、これが俺たちだしって。それで、“あんまりベース、うまくないよね”って言われたところで、まぁまぁ、しょうがないよねって感覚に、最近なってきた部分がありますね。でも、聴いていておもしろいでしょとも思うんですよ。あとは、こういう時代になったので、“弾いてみた”をしたい人とかに向けてのアプローチもありますし。
━━「脳みそが腐る」は、ステム音源で聴くと、ここまで細かいリフを弾いているのかというのがわかっておもしろいですよね。あとDEZERTはYouTubeで、「ミザリィレインボウ」の各パート映像が順番に重なっていくという企画もやっていたじゃないですか。それも含めて、“プレイヤーの楽しさ”を伝えようとしているのかなとも思ったんです。
情報がとってもありふれている時代なので、できあがったものを提示して、それに対してどうのこうのっていう話だけじゃなくて、できあがっていく過程にもエンタメ性がある気がするんですよね。個人的にも、曲を作ったりミックスしていくなかで、ドラムがあってベースがあってギターがあってって、順々に音が重なっていくと結構ワクワクするというか。そういうストーリー性みたいなものが生まれてくれたらいいなと思って、「ミザリィレインボウ」の企画はやってみたんです。
━━なるほど。ところで、ライヴ映像を使った「カメレオン」のMVではカポをつけてプレイしていましたね？
僕はカポは結構使うんですよ。DEZERTは曲によってチューニングが違うんですけど、ある程度のフレーズならメインのチューニングで対応できるんです。でも、開放弦をガンガン使うフレーズだったら、チューニングを変えなきゃいけないじゃないですか。5弦にドロップ・チューニング用のペグは付けているんですけど、それでも2種類しかチューニング違いがないですよね。デジテックのDropでチューニングを下げる人もいますけど、やっぱり低音だとよじれる感覚があって、僕には合わなかった。僕はライヴでベースの持ち替えをあまりしたくないので、どうしようかなって悩んでいたら、カポがあるじゃんって。市販のカポだと強すぎるので若干調整をして、指で押さえているのと似た力加減くらいに調整して、フレットの真上を押さえる感じで使っています。カポをしていない状態の1〜4弦はレギュラーで、5弦を1音落としていますね。僕たちの曲で一番下がAチューニングなので、そこから上がる分にはカポで行きたいなっていうところですね。
━━「カメレオン」はピック弾きと指弾きを使い分けていますか？ イントロとAメロがピックのようですが。
ギターとユニゾンなので、とにかく硬い音にしてフレーズが見えるようにっていう部分が大きいんですけど、タイトに音を切るとかフレーズを見えさせたい場合には、それが指だとどうしてもイナたくなってしまう。そこは割り切って、親指に付けるタイプのピックを使っています。スタンダードな16分のフレーズとかも、聴こえ方がピックのほうがスピード感があってよかったりする場合もあるので、最近はその辺はピックに移行していますね。
━━最後に、現時点で『RAINBOW』を総括すると、どんなアルバムになりましたか？
そもそもの、僕たちがインプットするための作品だったっていうのに関しては、個人的にはとっても目的を達成できたと思います。インプットするって決めていた分、かなりいろんな部分でストレスなくできたんですよね。サウンド面に関しては葛藤はありましたけど、悩まなくて済んだから気持ちは楽だったというか。そこを人に任せたからこそ、結構ナチュラルに楽曲たちと向き合えたと思うんです。いらない邪念が全部なくなったというか。わりと今の素のDEZERTがしっかり出せたアルバムなんじゃないかなと思いますね。
