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    Interview – Sacchan[DEZERT]

    • Interview:Kengo Nakamura
    • Photo:Taichi Nishimaki(Live)

    エゴを廃し、インプットに専念した等身大アルバム

    2018年発表の『TODAY』で大胆なサウンドの変化を起こし、2019年発表の前作『black hole』でより幅を広げた音楽的実験を展開した4人組ロック・バンド、DEZERT。前作リリース後のライヴ活動を開始した矢先にコロナ禍に見舞われ、その活動を止めざるを得なかった彼らが、ニュー・アルバム『RAINBOW』をリリースした。自らが考える“いい曲”や“カッコいい曲”を、よりストレートに出したようなバンドの強さを感じさせる本作は、ベーシストのSacchan曰く、“インプットのためのアルバム”だという。その真意を聞いた。

    自分の我は出していなくて、
    もうシンプルにしたほうがいいんじゃないかと。

    ━━コロナ禍ということで、バンドの活動にもさまざまな影響があったと思いますが、前作『black hole』以降はどんな期間でしたか?

     2019年の11月に『black hole』を出して、そのお披露目ライヴを2020年の2月から池袋のBlackHoleで7デイズ行なうつもりだったんですけど、ちょうどその途中で“明日からライヴはできません”という状況になったんです。そこから1ヵ月くらいは“どうなるんだろう?”っていう雰囲気で、とにかく様子を見るって感じでしたね。結局、コロナ禍ということになって、予定していた活動ができなかったり思うように人に会えなかったりもしたんですけど、個人的には、わりとすぐにその状況を受け入れていました。もちろん、ライヴが中止になったのは悔しいし、予定していたものがなくなってしまったことは悲しかったんですけど、こうなったのは僕たちだけじゃないし、もう仕方がないというか。コロナ禍で、いろんなバンドが配信ライヴっていう方向に進んでいましたけど、僕たちはあんまり配信ライヴに魅力を感じられていなくて。どうしてもお客さんの前で、ひとりでもいいから直接聴いてくれる人がいる前でやりたいっていうヴォーカルの意志もあったので、活動をある種バサッと止めたんです。無理してすぐにバンドとして何かをしようって感じではなくて、どちらかというと個人のスキルを伸ばす活動として、ヴォーカルは何かをやってみるとか、ドラムは何かを勉強してみるって、一旦はそういうところにいきましたね。

    ━━Sacchanは個人としてどういうことをしようと?

     まず休みました(笑)。休みつつ、僕はデザインとかもやるので、そっち方面になっていくのかなと思っていたんですけど、千秋(vo)がソロの曲をYouTubeにアップするのを手伝ったり、結成のときからお世話になっている池袋BlackHoleの救済プロジェクトをやったりというところで動いていましたね。休んではいたんですけど、暇はしていなかったっていうイメージがあります。

    ━━そこから新作『RAINBOW』にはどのように向かっていったんですか?

     去年の末くらいに、ようやくライヴができるかできないかが見え始めて、11月にLINE CUBE SHIBUYAでライヴをやったんです。そこでは、まずはメンバーが元気な姿を見せるべきだろうっていうことで、この状況下でDEZERTが何を発信していったらみんなは嬉しいんだろうか響くんだろうかっていうところをテーマにやったんですけど、そのライヴが見え始めたくらいから、新しい作品を作ろうっていうところに向かっていった気がします。

    ━━具体的にどういう作品にしたいかという気持ちはありましたか?

     『TODAY』『black hole』とアウトプットをしてきて、これ以上進化したいと思ったときに、このアルバムをインプットの時期にしようっていうのは、楽器隊のテーマとしてありました。僕たちも10年やってきているとはいえ、楽器とか音について、まだまだ知らないことがたくさんあるので、レコーディングのチームを新しくして、ある種、そういう人たちにちゃんと委ねるというか。もちろん自分たちが“こういう風にしたいです”っていう事前の打ち合わせはしましたけど、基本的には与えられたものに対して、僕たちがどういうアプローチをするかっていうものにしたいなと思っていました。弾き手とか歌い手とか、実際に曲作りをするのは僕たちだから必然的にバンドの色は出ると思っていたので、そのうえで、その曲を伝わりやすく聴きやすくカッコよく、新しいチームで具現化してもらうという感じですね。

    『RAINBOW』
    DEZERT
    MAVERICK
    DCCL-238〜240(初回限定盤【レイ盤】)
    DCCL-241(通常盤【ンボウ盤】)

    ━━自分たちのやり方に固執せず、客観的な意見を吸収したということですね。ベースはわりとシンプルなアプローチの曲が多いですよね。これもその新しい体制によるところが大きいのですか?

     かなりシンプルですよね。アレンジャーさんもチームにいらっしゃったので、事前に“僕はこういうのが好きです”というような自分の趣向は伝えたうえで、自分でフレーズを考えて持っていって、それに対してどうするかを相談して作っていきました。今回は、ほぼほぼ自分の我は出していなくて、もうシンプルにしたほうがいいんじゃないかということが多かったですね。僕としても『black hole』を作ったときにけっこう反省点があって。フレーズがややこしすぎると、ライヴで具現化するのが大変だなっていうところに至ってしまったんです。初歩的と言えば初歩的なんですけど(笑)。

    ━━常に、そことのせめぎ合いという部分もありますからね。

     そうなんですよ。どこまでやったらライヴで映えるギリギリなのかなっていうところを、もう一度見直そうかなと思っていたところでもあって。プレイする側としてライヴを楽しむんであれば、シンプルにしたほうが大音量で鳴ったときにもわかりやすいですし。そこにまた落ち着いた感じはありますね、自分が持っていったフレーズも、基本的にはデモに対して変なハズしのアプローチは、今回はいいかなっていうところでしたね。

    ━━以前、レコーディングは歌まで録り終わったパラ・データを聴きながら、一番最後にベースを入れるということでしたが、今回は?

     今回はいたって王道で、ドラムのあとにベースを録るというやり方でした。ただ、今回が悪かったというわけじゃないですけど、やっぱり僕はあとに録りたいなと改めて思いましたね(笑)。もちろんプリプロは終わってますけど、録りながら若干変わっていったりもするものだと思うので、それを想像しながら余地を残して録るっていうのが、僕はあんまり得意じゃないみたいで。全部録り終わったあとに、パズル・ゲームみたいなニュアンスで録っていくほうが、僕の性には合っているのかなって。

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