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細野悠太が語る“クリックに縛られない”グルーヴと、細野晴臣バンドでの経験【『Commonplace』インタビュー後篇】
- Interview : Shutaro Tsujimoto (Bass Magazine Web)
- Photo : Hiroki Obara
記事の前篇はこちら。
同じフレーズを4回弾いたものを、ずっとコピー&ペーストしているんです。
⸺4曲目の「やってくる!」も、7拍子の曲ですね。
そうです。一番最後だけハチロクになるんですけど、それまではずっと7で通す曲です。ベースは、同じフレーズを4回弾いたものを、ずっとコピー&ペーストしているんですよ。こんなことを言っていいのかな(笑)。あまり知られないほうがよかったかもしれないですけど……いや、大丈夫です。そのほうがいいので。
⸺生のバンドだけど、どこか機械的な感じがあるのも、この曲の良さですよね。実際に弾いたフレーズをループさせているからこその、おもしろさがあるのかなと思いました。
確かに。ちょっとサンプリングっぽくなっていくというか。ギターもそうなんですよ。弾いたフレーズを繰り返しているので、生っぽいんですけど、そのあたりでおもしろくなっているんじゃないかなと、個人的には思います。
⸺同じフレーズをコピペするとなると、そのワンフレーズがすごく重要になりますが、このリフはどうやって生まれたんですか?
でも、かなりぱっと出てきたものを、軽い気持ちでずっと使い回している感じなんです。ループを聴きながらだったかな。最初にDAW上で、オルガンのコードの“パパパパパ”という音を入れて、ドラムも入れて。それに合わせて、たぶんギターかベースを入れたんです。どちらが先かは覚えていないですけど、“とりあえず入れてみよう”と入れたものが、そのまま今の状態になっています。ベースとギターは、本当に最初から変わっていないですね。
⸺続いて5曲目の「Pipeline=ABSOLUTE EGO DANCE」です。この2曲を組み合わせるアイディアは、いつ頃からあったんですか?
これは一番最初のライヴからやっていますね。「Pipeline」と「ABSOLUTE EGO DANCE」を合わせるという構想自体は、最初のライヴよりも前から音くんのなかにあったみたいなんです。それを1回目のライヴでやって、そこからずっとやっています。
⸺この曲のベースは、軽快なオクターヴのニュアンスがすごくいいですね。カバーするうえで何か参考にした演奏はありますか?
本当ですか? 嬉しいです。もともと参考にしている音源があって、細野晴臣がロンドンで「ABSOLUTE EGO DANCE」を演奏している動画が、YouTubeにあるんです。
⸺2018年の、高橋幸宏さんや小山田圭吾さんが飛び入り参加して演奏する映像ですね。
この動画、おもしろいですよね。途中で坂本(龍一)さんも出てきて。これが映像として残っているのは、すごく嬉しいことです。
⸺「ABSOLUTE EGO DANCE」の悠太さんのベースは、音価も絶妙だなと思いました。このプレイ自体は難しくないんですか?
そうですね。ベースは、そんなに難しいというわけではないんです。僕のなかにある感じというか、スッとできましたね。
⸺個人的には、このベースはめちゃくちゃうまいなと思っていました。ラウンド・ワウンド弦で、普通に2フィンガーで弾いているんですよね?
そうですね。ただ、「Pipeline」のところはパーム・ミュートで、「ABSOLUTE EGO DANCE」から2フィンガー、という分け方はしていたかもしれないです。アルバムを通して、右手の弾き方は2フィンガーかパーム・ミュートの親指弾きのどちらかですね。

⸺「commonplace」では、マエストロのリズムマシン、Rhythm King MRK-2を使っています。導入した経緯を教えてください。
もともと音くんが、細野晴臣のジャケットなども手がけている岡田崇さんと親交があって。岡田さんが“マエストロはもう自分では使わないから”と、半永久的に貸してくれることになったんです。実は1stアルバムでも使っている曲があるんですけど、今回も“じゃあ使おうか”と、とりあえず鳴らしてやってみた感じですね。
⸺次の曲の「どうも」でもマエストロが使われていますね。
「どうも」は一番最後にできた曲で、音くんの家にマエストロがあったので、それとギターだけでデモを作ってきたんです。それをみんなに聴かせて、聴いた1週間後くらいにはレコーディングしていたと思います。
⸺「どうも」のような歌モノにベースを入れるのは、悠太さんにとって新鮮なことですか?
普段、音くんが作るデモは、歌メロをハミングしたり、もにゃっと歌ったりしていることが多いんです。だから、しっかり歌われたものを聴きながらベースを付ける機会は、あまりなくて。でも「どうも」のデモには、最初から最後までしっかり歌が入っていたんです。最初から最後まで、完全に歌っている状態で。そこにベースを合わせるのは、新鮮だったかもしれないですね。
⸺2番のAメロでは、ドラム・パターンが変わって、ベースも少し細かく動くようになりますね。
あれも、その場のノリなのかな。ドラムに反応した感じですね。ドラムがそうなったから、ベースもそうなったんだと思います。
⸺10代の頃に、歌モノをコピーすることはありましたか?
ONE OK ROCKの「完全感覚Dreamer」とかの後ろでベースを弾いたりはしていました。僕がやりたかったわけではないんですけど。本当に、それくらいしかないですね。CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINも歌モノではありますけど、ベースを入れる段階では、歌がないことがほとんどなので。
クリックを聴いている曲はあまりないですね。曲の途中でテンポや拍子が変わることが多いので。

⸺「Dad Rock」は、イントロのベースが印象的です。
これも1stアルバムを作っている頃には、もうあった曲です。仮タイトルは“おとっつぁん”だったんですけど、「Dad Rock」に変わっていましたね。
⸺5度の音を使った、ハズむようなフレーズですね。
このイントロは、実は難しいんですよ。音くんはわりとタイムが揺れる人で、僕は“聴いてから弾くタイプ”なので、ふたりだけで始めると、どうしても僕がうしろにいくんです。すると音くんも僕を聴いて後ろにいくので、どんどん遅くなってしまう。そういうことがライヴで頻発して、ちょっと気をつけようと思った曲ですね。ドラムが入ってしまえば、もう大丈夫なんですけど。
⸺“聴いてから弾くタイプ”と、ご自身を客観的に捉えているのが興味深いです。それは直すべきものなのか、個性なのか、どう考えていますか?
人から言われて、“確かにな”と思ったんです。バランスだと思いますね。まわりの音にちゃんと合わせていくという、いいところでもあると思っているんですけど、単にタイム感がないとも言えるので。本当にバランスかなという感じです。
⸺「かくしごと」は、リフを繰り返しながら、コードが変わるときにオクターヴ上の音をひとつ入れるフレーズが印象的です。
これも、ファーストくらいのときにはあったかもしれないです。まさにライヴ用にこしらえた曲で、音くんが勢いだけで作ったんですけど、最初にやっていた頃とは、形がけっこう変わっています。でも、ベース・ラインの基本的なリフは変わっていないですね。たぶん海老原くんがコードチェンジに対して1拍早く叩いているのに反応してできたリフだった気がしますね。
⸺ライヴ用に曲をこしらえるというのは、例えば“速い曲が欲しいね”というのが起点になったりする感じですか?
そうですね。あとは本当に初期の頃は、尺を稼ぐためというか。“とりあえず長い曲がないとやばい”みたいな。ライヴっぽい曲はあったほうがいいですね。僕らのメンタル的にも、ずっとシリアスにやっていると、しんどくなってくるので。
⸺シリアスにやる、というのは?
シャッポの初期のライヴは、3人で演奏する時間が長かったんです。3人で30分くらいやって、そのあと5人になる、ということをやっていたんですけど、3人のときの曲は、全員の音がすごくよく聴こえるんです。室内楽っぽいというか、“聴かせる”状態になっていて。それが1曲くらいならいいかもしれないですけど、3、4曲となってくると、演奏する側も聴く側も張り詰めてしまう時間があって。“お互いのためによくなさそうだな”と思って、「コンボ!!!!!!!!!!」を作ったり、ライヴでのアレンジを変えていったりしていました。
⸺少し音を外しただけでも、目立ってしまいそうですね。
本当に怖かったですね。今でも、ライヴの最初のほうでやる3人の曲は怖いです。ミスをするとわかってしまうので。
⸺続いて10曲目の「山笑う」は、どのようにベース・ラインを作ったんですか?
まさにこれが、さっきシリアスと言っていた曲ですね。これもパーム・ミュートかな。ベース・ライン自体は、音くんに指示されている曲です。だいぶ初期の曲なので。これをライヴでやるのは、本当に怖いですよ。
⸺テンポもゆっくりなので、みんなで同じタイム感を共有するのが難しそうな曲です。
そうですね。1拍から次の1拍までの間がすごく長く感じるので、早くいったり、遅くいったりしてしまうんです。アイコンタクトもシリアスになる要因というか、“この人たちは、今音楽をやっているんだ”と思われる行為でもあるので。
⸺お客さんが何も考えずに踊るというより、じっくり鑑賞する感じになってしまうんですかね。
そうです。鑑賞される曲ですね。ライヴでは、もうやりたくないです。怖すぎるので。でも、曲としてはすごくよくできているなと思います。
⸺レコーディングでは、こうした曲もクリックを聴きながら演奏するんですか?
いや、クリックを聴いている曲はあまりないですね。「どうも」は聴いたかな。「かくしごと」はDTMで作っていますし、「近況報告」もクリックを聴きながら弾いたと思いますけど、アルバム全体では、ほとんど聴いていないと思います。「Pipeline=ABSOLUTE EGO DANCE」は、途中から聴くようなことをやったかな? ちょっと、あまり覚えていないんですけど。
⸺クリックを使わないのは、どういう理由からですか?
曲の途中でテンポや拍子が変わることが多いので。もちろん、クリックがあったほうがレコーディングは絶対にやりやすくなるんですけど、音くんの曲は、そもそも構成としてクリックがあると難しくなってしまうものが多いんです。でもクリックに合わせてないと、間違えたときに毎回全員で録り直すようなことになるので難しいですよね。特にドラマーは大変だと思います。ドラム以外は、最悪パンチインもできますけど。
⸺最後は「近況報告 (feat. Neibiss)」です。バンドでオケを作って、そこにラップを入れてもらったんですか?
そうですね。でも、これもDTMで作っていて、バンドで録ったという感じはあまりないです。ドラムは羽鳥宅で録りました。ベースも録ったかな? この曲はノリが難しくて。ディラ・ビートっぽいというか……ノリはレイドバックしてるんですけど、でもビートはニューオーリンズっぽいというか。慣れるまで、ちょっと難しかったですね。
⸺そういうビートにベースを合わせるときは、どんなところが難しいですか?
やりすぎると、これ見よがしになってしまうし、グリッドに沿っているわけでもないので。その中間あたりを狙うのが難しい感じがします。
おじいちゃんはその場で変えちゃうんですよ。たぶん無意識だと思うんですけど。その対応力は、すごく付きますね。

⸺昨年、細野晴臣さんのバンドのライヴを拝見しました。おじいさんのバンドでの経験を通して、ベーシストとして学んだことはありますか?
細野晴臣が直接何かを言うことは、あまりないんです。みんなに“こういう感じで”と軽く言うことはありますけど、ほとんど指示はなくて。“こういう感じにしたらいいかな”と、バックバンドのみんなで試行錯誤していくので、教えを受けるようなことはないですね。学びがあるとすれば、その時々で構成が違うことです。おじいちゃんはその場で変えちゃうんですよ。たぶん無意識だと思うんですけど。その対応力は、すごく付きますね。
⸺“ここでもう1回サビをやるんだ!?”みたいなことですか?
そうです。怖いですよ。最初のバリ島でのライヴ(※2024年7月)からそれがあって、本当に死ぬかと思いました(笑)。
⸺ライヴは時代をまたいだ選曲を、今のバンドならではのアレンジで聴かせるステージでした。セットリストやアレンジは、どのように決めているんですか?
だいたいは、細野晴臣のセンスですね。もともと、今のバンドの前の編成でくくく(原田郁子、角銅真実)のふたりと3人でやっていたときがあって、そのときの曲をそのままやったりもしています。あとは、“この曲はやったほうがウケるだろう”というものも入れていると思います。たぶんマネージャーの意向もあるのかな。「薔薇と野獣」とか、“やったほうがいい”という曲も含めて。やっぱりポップスの人ではあるので。
⸺『MEDICINE COMPILATION』(1993)の時代の曲を、バンドで演奏していたのもすごくよかったです。
「AIWOIWAIAOU」は、シャッポで角銅さんと対バンしたときに、初めてやったんです。2日間の公演で、その2日目に細野晴臣をシークレットで呼んで。それでこの曲のことを思い出したのか、“自分のライヴでもやろう”となって、演奏している感じですね。

⸺ヴァンパイア・ウィークエンドの「2021」(2019年)のカヴァーも感動しました。歌詞も変えていましたが、誰のアイディアだったんですか?
本人です。でも、どうしてやろうと思ったのかは、ちょっとわからないですね。
⸺もともとヴァンパイア・ウィークエンドが『花に水』(1984年)をサンプリングした曲を、今度は細野さんがカヴァーしているんですよね。
そうですね。元の曲をもとにして。あれもいいですよね。
⸺ベースのプレイについては、細かいディレクションがあるわけではないんですね。
ないですね。ただ、最近1曲だけあったんです。「AIWOIWAIAOU」のアレンジがまた変わって、少しアフリカンっぽくなったんですけど、“こうかな”と思って弾いたら、“そうじゃないよ”ということがありました。リズムの解釈の部分で、説明するのは難しいんですけど。
⸺悠太さんとしては今後、ベーシストとして、どのようなところを深めていきたいですか?
ここにきて、基礎練習を全然していないので、ちょっとやってみようかなというくらいですけど。僕は最近まで、アポヤンドが何なのかもわかっていなくて。弦に対して縦に弾く、横に弾くというようなことも、本当は初心者のうちに通る道だと思うんですけど、そこをあまり通らずにきてしまったんです。
アポヤンドに限らず、そういう知識を身につけたいですね。楽器のパーツの名前なども、あまりわかっていないですし。楽器をやっている人って、みんな楽器に詳しいじゃないですか。僕はあまり知らないなと思うので、そういうことも含めて知っていきたいです。“自分はわかっていない”ということがわかってきたので、そこを打破していきたいですね。
Information
【LIVE INFO】
シャッポ ワンマンライブ
『Commonplace』VINYL Release Party “近況報告”

チケット一般販売中
受付URL:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2670245
<京都公演>
2026年10月10日(土)
京都 磔磔
OPEN 18:00 / START 19:00
<東京公演>
2026年11月8日(日)
東京 晴れたら空に豆まいて
OPEN 18:00 / START 19:00
主催:カクバリズム
企画・制作:カクバリズム
INFO:カクバリズム
【RELEASE INFO】
シャッポ『Commonplace』(LP)

2026.11.11(WED) Release
Catalog No.: KAKU-260
Price: ¥5,000(+tax)
Label: KAKUBARHYTHM
Streaming: https://ssm.lnk.to/commonplace
<収録曲>
SIDE A
01. ツービート
02. より良い人生
03. ありきたり
04. やってくる!
05. commonplace
06. どうも
SIDE B
01. Pipeline=ABSOLUTE EGO DANCE
02. Dad Rock
03. かくしごと
04. 山笑う
05. 近況報告 (feat. Neibiss)
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