NOTES

関係者が語るバカボン鈴木 – 01

サエキけんぞうの証言

響きを追及してる人だから、真髄は響きにある

 僕はバカボンのチョッパーが好きでね。タイムの正確さに加えて躍動感というか、ヴォリューム感があるというか。それが両立してる人ってなかなかいないですよ。国際級じゃないかなって思う。しかもバカボンは、ロックっぽい指弾きもいいですし、ウッド・ベースやスティックのプレイもいい。

 バカボンは、どんどんソロを出したほうがいいと思う。響きを追及してる人だから、真髄は響きにあると思うんですよ。彼ならソロだけでも聴かせられると思うし。本人はきっと、自分の響きとは何か?ということと向き合いながらやってるから、その響きを単独で聴かせてもいいんじゃないかな。ロン・カーターなんかもそれでアルバム出してますからね。

 ソロ・アルバム以外の希望がもうひとつ。マイケル・ジャクソンの「スリラー」のPVに、恐怖映画風の笑い声が出てくるんだけど、バカボンがそれをライヴでやったことがあって、すごい盛り上がったんですよ。だから、それのレパートリーを増やしてほしい。爆発力がすごすぎるんで(笑)。ベーシストだけじゃなくて、パフォーマーとしても開花してほしいですね。

さえき・けんぞう◯1958年、千葉県出身。徳島大学歯学部在学中にミュージシャン・デビューしたのち、1983年パール兄弟を結成し『未来はパール』で再デビュー。個人では作詞家、プロデューサーとして活動の場を広げる。作詞家としては、沢田研二、小泉今日子、モーニング娘。など多数のアーティストに作品を提供しているほか、アニメのテーマ曲も多く手がける。映画、マンガ、ファッション、クラブ・カルチャーなどに詳しく、そのマルチな才能を生かして著作も多数。
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関係者が語るバカボン鈴木 – 02

笹路正徳の証言

全体を見渡したうえでベースの立ち位置を考えて、
その主張度まで調整できる。

 アレンジャーとしては本当にやりやすい。仕事によっていろんなタイプの音楽を要求されるんで、バカボン呼んでれば困らない(笑)。レコーディングは数え切れないくらいやってます。バカボンはスタジオでは、普通にスタジオ・ミュージシャンですよ。本人は違うって言うかもしれないけど。なんでもできます。譜面も強いし。

 変な言い方だけどバカボンって、バカボン色ってのを、出すことも引っ込めることもできるんです。全体を見渡したうえでベースの立ち位置を考えて、その主張度まで調整できる。もちろん、これは絶対バカボンでしょっていうプレイもあるんですよ。主張もできるし影にもなれるっていうね。頭では考えてないかもしれないけど、本能的にそうしてるんだと思う。そういうところがいいなと思います。

 バカボンって、おそろしく手先が器用。ベースのソフト・ケースで壊れたところなんか自分で縫ってたりしますから。昔、仏像を彫ってたって聞きましたけど、そのせいかな。ミュージシャンと手先の器用さって関係あるのかわからないけど、バカボン見てると関係あるんじゃないかと思ったりしますね。だってハタチから楽器を始めてプロになるなんて、まず考えられないですよ。ほとんどのミュージシャンは、中学生か遅くとも高校生からやってますから。上達のスピードがおそろしく速かったんじゃないかな。

 これからもお付き合いは続くでしょう。ああいうミュージシャンだと曲に対していろんなアプローチができるから。一緒にやってると、方向的にそっちじゃなくて、みたいなことがたまにある。それを言うと、ああそうかって全然違うことをやってくれる。たとえば、音数が多いとき、もっとシンプルにとかね。あと、ソウルっぽくとかロックっぽくとか言うことはあります。そうするとフレーズなんか指定しなくても、いい感じになるんです。ベースは何しろ重要なんですよ。まず歌があって、次に重要なのはベースですから。

ささじ・まさのり○1955年生まれ。J-POPからジャズまで、幅広く活躍する東京出身のプロデューサー、作編曲家。大学4年でジャズ・ピアニストとしてプロ・デビュー。その後はスタジオ・ミュージシャンを経て、1979年には凄腕ミュージシャン・バンドとして注目を集めたMARIAHや、渡辺香津美のKAZUMI BANDなどに参加する。並行してアレンジャー、プロデューサーとしての評判を高め、阿川泰子やゴスペラーズ、椎名林檎、スピッツ、コブクロ、森山直太朗など、膨大な数のアーティストを手がけている。
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