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    【ニッポンの低音名人extra】 – 岡沢茂

    • Text:Koichi Sakaue
    • Photo:Eiji Kikuchi

    関係者が語る岡沢茂

    水谷公生の証言

    休符が息に聴こえる兄弟

     風(かぐや姫の伊勢正三と猫の大久保一久によるデュオ。「22歳の別れ」がヒット)がツアーをやるにあたってベースを探してたとき、シゲルちゃんを紹介したのは僕。それまでサポートしてたミュージシャンが、ほかのアーティストを担当することになって、それで風のツアー・ミュージシャンを探してるところだった。シゲルちゃんはまだローディだったけど、幅広いプレイができるのがわかってたから推薦したの。その後彼がプロになってからは、僕がアレンジした曲のレコーディングで、ちょこちょこ彼にベースを頼んだりしてました。

     昔、兄のアキラちゃんと銀座ヤマハのスタジオで練習したことがあった。そのときは特定の曲をやるとかじゃなくて、もう“ドン、ツド、ドン”っていう8ビートのパターンをずーっとやるっていう、そういうグルーヴの練習だったの。そうするとね、パターンのなかの“ツ”の部分に“息”を感じるんだよ。楽譜で言えばただの8分休符なんだけど、それが息に聴こえてくるの。そんなのはそれまでアキラちゃんだけだったんだけど、シゲルちゃんもそうだったんでおもしろいなあって思ったよ。なんだろうね、その休符のせいで独特のグルーヴが出るっていう。音符と休符のコントラストがくっきりしてるの。しかも正確だし。

     僕がシゲルちゃんと一緒に回った最後のツアーは、浜田省吾だった。広島で、昼間の自由時間に僕は有名な穴子飯を食べたんだけど、これはシゲルちゃんに食べさせたいと思って、穴子弁当を買って、ホテルの彼の部屋のドアノブにかけておいたの。シゲルちゃん、それ食べて感激してたね。彼はさすが銀座生まれだからか、グルメなんだよね。食いしん坊というかさ。

     彼はすごく礼儀正しいね。明るい性格だけど、センシティブなところがあるから、ひっそり裏で悩んだりしてたこともあったみたい。優しいやつでね、母親の誕生日になると一緒にご飯を食べに行ったりしてた。

     彼も今や、加山雄三さんからも声がかかるようになってるし、稲垣潤一や甲斐バンド、ハウンドドッグとかからも大事にされてるみたいじゃない。僕としても嬉しいよね。僕は今、浜田省吾の作品(11月11日発売の『In the Fairlife』)にとりかかってるんだけど、シゲルちゃんにも何曲かベース弾いてもらおうと思ってます。

    みずたに・きみお○1947年生まれ。1966年にを結成 されたGSバンド、アウト・キャストでギタリストとして活躍。その後アダムスなどを経て、1971年にソロ・アルバム『A PATH THROUGH HAZE』を発表。1970年代後半には、歌謡曲からロックまで、幅広いジャンルで編曲家として活動する。太田裕美などアイドル歌手から浜田省吾などロック・アーティストまで、数え切れないほどの作品にギタリストやアレンジャーとして参加している。現在ギターは弾かなくなったが、アレンジやプロデュースなどで活発に活動を続けている。
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