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【第79回】メロディックに弾く極意④“神は細部に宿る” ベースでメロディックに歌うテクニック 後篇  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

“神は細部に宿る”なんていう表現がありますが、メロディックに弾くための仕上げの段階でも、この“細部”、ディティールが大事になってきます。ということで、メロディックに弾く極意、パート4!

前回(※)に続き、さらに歌っぽいニュアンスを出そう、ということで今回は“装飾音”がテーマです。
第76回 メロディックに弾く極意① えっ、ベースでアレ、弾けないの?
 第77回 メロディックに弾く極意② 3ステップで磨くメロディ感覚
 第78回 メロディックに弾く極意③ ベースでメロディックに歌うテクニック 前篇

例えば、ハイ・ポジションでこんなフレーズを弾くとします。まずは全部ピッキングして、抑揚や強弱もつけずに弾きます。

当然、なめらかな感じはしなくて、棒読みしてる感じです。

少しなめらかに

では、これまで見てきたアプローチをしてみましょう。たとえば、ハンマリングとプリングを使って弾いてみます(Ex.1)。

①ハンマリング
全部ピッキングする場合と比べると、少しなめらかになります。

②プリング
これも少しなめらかになりますね。

これはこれで悪くない感じです。でも、さらにもう少しニュアンスをつけたい。もっと歌っているような感じを出したい。ここで出てくるのが“装飾音”です。

装飾音でさらなるニュアンスを

装飾音というのは、名前のとおり“音を飾る”ことです。

例えば、音を揺らすやり方。代表的なのはトリルです。メインの音符と2度上の音を細かく行き来します。短2度の場合もあるし長2度の場合もあります。音を伸ばしている間ずっとトリルする場合と、1〜2回しかしない場合とがあって、本来は呼び方が違うみたいですが、個人的には全部トリルって呼んじゃっています。

あと、厳密には装飾音とは呼ばないのかもしれないけど、音を揺らすという意味ではヴィブラートもあります。

それと、音を付け加えるやり方。“装飾音符”と言って、本来の音の前に短い音をつけます。だいたいはハンマリングやプリング、スライドでなめらかに音をつなげます。

それから、フレーズの最初や最後に、グリス・アップグリス・ダウンでニュアンスつけたりもします。

あと、チョーキング(ベンド)もありますね。

これらのテクニックをいくつか使って、同じフレーズを例えば次のように弾いてみます。

だいぶ歌っているようなニュアンスが出てきたかな、と。右手で弾いているのは赤い音符だけで、左手でいろんな表現をしています。

①グリス・アップ
いきなりAの音を弾かずに、1〜2フレット下あたりで弾いて、左手をすべらせてAの音に着地します。

②ハンマリング
Ex.1でもやっていたハンマリングです。

③グリス・アップ
ここは①と同じくピッキングしてグリス・アップという形でもいいんですが、ここでは右手では弾いていません。ゆっくりやると、直前のC音を弾いたあとD音のあたりをハンマリングして音を出し、そのままグリス・アップしてE音に着地しています。

④ヴィブラート
次のG音を押さえたまま、手を左右に小刻みに動かしてヴィブラートをかけています。

⑤装飾音符(スライド)
本来のD音の半音上のE♭音を弾いてからスライドでD音に降りてきます。

⑥プリング
そのまま、Ex.1でもやったようにプリングでC音を出します。

⑦トリル
最後のC音を弾いた直後に、スライドで半音上のD♭音に行ってすぐC音に戻っています。

ほぼ1音ごとにいろんなテクニックを使っているので難しそうに見えますが、ひとつひとつはシンプルなので、最初のうちは個別に練習すればいいですね。だんだん組み合わせていって最終的にはフレーズ全体をつなげて弾くわけですが、大事なのは、ひとつひとつていねいに表現することと、同時にフレーズ全体の流れを大きく捉えることです。ディティールをおろそかにすると雑な印象の演奏になってしまいますが、かといってディティールばかり注目して全体の流れを見ていないと、それはそれでメロディックな演奏にはならないので、細部と全体、両方に意識を向けておくことが大事です!

石村順でした。

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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