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【第77回】メロディックに弾く極意② 3ステップで磨くメロディ感覚  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

メロディックに弾く極意、パート2です! 前回は、メロディックに弾くための“練習の題材”について話しました。まだ見ていない人はそちらの動画もご覧ください。今回は、その題材にどう取り組めばいいか、つまり練習方法がテーマです。

練習の第一段階:イメージする

はじめにフレーズの音程やリズムを確認したら、ベースを置きます。そして、参考音源があるなら細かいニュアンスまでじっくり聴き取って、イメージできるようにします。音源がない場合も、フレーズの完成形を自分なりにイメージします。この“イメージ”がどれだけリアルか、っていうのが大事です。ちゃんとイメージを持っていないと楽器の演奏はただの指の運動になってしまいがちなので、まずイメージありきです。

練習の第二段階:歌う

メロディとは何か? もとをたどれば歌です。だから、ベースで取り組む前にまず歌います。できるだけ自分のイメージに近づくように口で表現します。“ウマく歌う”のが目的ではないのでウマいヘタは気にせず、脳内イメージと同じ“雰囲気”が出るように工夫します。

ここでポイントがふたつあります。

①ブレス どこで呼吸するか

まず大事なのはブレスです。歌や管楽器の場合、どこで、どう息を吸うかはすごく大事なことですが、それ以外の楽器は呼吸を無視しても演奏できちゃいます。でも、ベースでもピアノでもドラムでも呼吸は超重要です。演奏に必要ないのに、なぜ呼吸が重要なのか? それは音楽の原点は歌だから。歌と呼吸はワンセットです。だからメロディックな演奏には呼吸が欠かせないんです。呼吸のない演奏は聴いていて何か不自然だったり聴きづらかったりします。

息を吸う位置や吸い方を変えるとフレーズのニュアンスも全然変わるので、どれがフレーズに合っているか、どういう呼吸が自然か探ります。

②抑揚、強弱

次に大事なのは強弱とか抑揚ですね。これは、例えば“Aメロよりサビが大きい”というような大きな視点での強弱ではなくて、ひとつのフレーズのなかで、この音は強い、これは中くらい、こっちは弱い、というミクロな視点での強弱、抑揚です。

フレーズを歌うとき、“ドゥン”とか“ブン”とか“ダン”とかのシラブルとか擬音を当てはめて歌うと思いますが、そのシラブルを変えるとフレーズの雰囲気が変わります

例えば、以下のフレーズを“バ〜ドゥバドゥバドゥ〜”と歌うのと、“バ〜バドゥバドゥバ〜”と歌うのでは全然違う感じですよね。“ドゥ”より“バ”のほうが強いというか存在感があるので、抑揚が変わります。

どういうシラブルがそのフレーズの雰囲気に合うか探ります。

練習の第三段階:歌に合わせて演奏する

歌ったフレーズがいい感じになってきたら、歌いながら歌に合わせて演奏します。この順番が大事で、“演奏に合わせて歌う”んじゃないんです。あくまでも歌が先で、歌のニュアンスに演奏をできるだけ近づけます。

この手順で練習すると、もし歌がいい感じならベースの演奏もいい感じになるし、なんとなく手クセで弾いちゃうことも避けられます。手クセで弾くのって、脳内のイメージ優先ではなくて、指が動くままに弾いちゃうということなので、あまり音楽的ではないんです。自分の演奏レベルにフレーズを落とし込んでいくのではなくて、そのフレーズのあるべき姿を思い描いて、歌って、そこに合わせて演奏技術を磨いていく。それが音楽です。

ということで、①最初にイメージを作って、②イメージに合わせて歌って、③歌に合わせて演奏する。これがメロディックに演奏するためのめちゃくちゃいい訓練になります。

次回は、歌のニュアンスに演奏を近づけるための具体的なテクニックの使い方がテーマです。石村順でした!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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