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【第78回】メロディックに弾く極意③ ベースでメロディックに歌うテクニック 前篇  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

メロディックに弾く極意、パート3です!

前回は歌の話をしましたが、今回はその“歌のニュアンスに演奏を近づけるにはどうしたらいいか?”がテーマです。

例えばこんなフレーズを耳コピしたとします。耳コピじゃなくてベーマガに載ってるフレーズでも、バンド・メンバーや自分が作ったフレーズでもいいです。譜面はストレートですが、少しバウンスしているファンク・グルーヴということにしておきます。

そして前回紹介したやり方でイメージや歌い方が定まってきて、例えば“この歌い方がしっくり来るな”となったとします。

僕が歌った感じをカタカナで無理やり書くとこんな書き方になるかなと思います。

そして、この歌の感じでベースを弾きます。歌のニュアンスをプレイに反映するにはどうしたらいいでしょうか?

弾き方①

まずはそのまま弾いてみます。

全部の音を右手でピッキングしているんだけど、これだと歌のニュアンスと違って平坦な感じ、硬い感じがします。例えばこのフレーズを全部“バ”で“バーバババババッ”って歌うと不自然な感じがすると思うけど、こうやって全部の音を右手で弾くと、そういう硬い感じの演奏になりがちです。もしメロディックに弾きたいなら、全部の音をピッキングしないほうがいいケースが多いと思います(もちろんケース・バイ・ケースです)。

弾き方②

では右手で全部弾かずに、ハンマリングとかプリングを入れてちょっとなめらかにしてみよう、ということでこんな弾き方にしてみます。

さっきよりなめらかといえばなめらかですが、歌のニュアンスとはだいぶ違う感じがするし、グルーヴも変です。つまり、ハンマリングとかスライドとかグリスとかは、とりあえず使えばいい感じになるわけではなくて、どこでどう使うかが大事なんですね。やみくもに使うんじゃなく、使いどころを吟味すべし。

弾き方③

次はハンマリングやスライドの使いどころをもっと歌のニュアンスに近づけた弾き方をします。

僕的にはだいぶ歌のニュアンスに近づいた感じがします。まあ歌い方も感じ方も人それぞれなので、この弾き方は違うよと感じる人もいるかもしれないけど、それで全然良くて、その感じ方の違いこそが個性なので大切にしたいところです。

演奏的には何をしているかというと、基本的に“バ”と歌っているところは右手で弾いてます。そして、それ以外の音は基本的には左手でハンマリングやプリングしたり、右手で弾くにしても少し弱めに弾いています。ハンマリングやらスライドをするために押弦のポジションや運指も変えています

それから大事なポイントですが、この弾き方に伴ってリズムの感じ方も変わるというか、むしろリズムの感じ方を変えたからこういう弾き方になったと言ったほうが正しいかもしれないけれど、フレーズを弾き始める音も変えています。1拍目のオモテからではなく、その手前の4拍目の最後のEの音から弾き始めて、次の1拍目のオモテのG音は人差指でハンマリングして弾いています。そして、その人差指をスライドさせて次のA音にシフトしてピッキング、次のB音はハンマリングで弾いてます。こういう、2フレット分のちょっとしたスライドとかも、1拍目のG音を伸ばしている最後のあたりのニュアンスが変わるので、やるのとやらないのではグルーヴとかなめらかさが変わります。

こんな感じで、まずイメージや歌い方を決めて、そのニュアンスに合わせてハンマリング、プリング、スライド、グリス、音の強弱などの使いどころをよく吟味して決めていくといいです。正解はひとつじゃないと思うので、自分が一番気持ちいいのはどれなのか、っていう感性を磨いていきましょう!

次回は“ベースでメロディックに歌うテクニック 後篇”ということで、音の装飾について話します。石村順でした!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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