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『ロックマン3』呼吸の間隔で曲を展開するベース・ライン【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】– 第2回

  • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
  • 挿絵:長谷川カオナシ

2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。それを記念して始まった長谷川カオナシによる本連載コラムでは、多彩な趣味を持つ長谷川が特にハマっているという、“レトロゲームのベースの世界を案内します。

私もロックンローラーの端くれですから

子供の頃の愛読雑誌はボンボンとガンガンでした。その思い出は億千万にもわたるという……。

そんな長谷川カオナシによるレトロゲーム喫音堂はこちらです。どうも。

第2回目の今回はロックマンの話をしていきましょう。私もロックンローラーの端くれですから。

ロックマン。人気アクションゲームです。

当時『コミックボンボン』では本筋の『ロックマン』シリーズ(池原しげと先生※1)をはじめ、さまざまなロックマンが連載されていました。同誌に同じキャラクターの別漫画が存在するってスゴイ! それぐらい当時から人気ゲームだったということですね。

主人公“ロックマン”は可愛らしい所謂ショタロボですが、海外版では“Megaman”と改名され、イラストもムキムキのオジサンとなっていました。何故?

池原先生風キツネマン(左)とMEGAMAN風キツネマン(右)

『ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?』(1990年/カプコン)

今回喫音していくのが『ロックマン3 Dr.ワイリーの最期!?』(1990/カプコン)※2

思い出は億千万とか言いながら3ですみません。私が最初にプレイしたロックマンであり、思い入れも強いのでどうかひとつ!

まず、ファミコンが同時に発声できる音数は、含音程3トラック+無音程1トラックの計4トラックしかありません。これは楽曲を構築するにあたってかなりの制約です。普通ギターには6本の弦が張られているけど、ファミコンの音源で同時に鳴らせる限界は4音。ギターをジャラ〜ンとかき鳴らすことさえままなりません。

1弦ギターが3本。あとドラム・スティックが1本。それだけを4人の男に支給して、“はい、それじゃあ演奏お願いしまーす”、みたいな状態です。そんな無茶な。

ギターとファミコンの同時発音数比較図

ロックマンのBGMはロック・テイスト。

この過酷な状況で先述の4人組が何をするかと言うと、
ひとり目はメロディ、
ふたり目は伴奏、
3人目はベース、
4人目はノイズを使ったリズム
といったように上手に振り分けられています。

そう、4トラックという制約のなかで、4ピース・バンドのサウンドを表現しているのです!

特にロックマンのBGMにおいてふたり目の役割はフレキシブル。基本的には伴奏に徹しますが、あるときはメロディのエコー効果を演出をしたり、効果音が鳴る場面ではそちらを優先したり※3とかなり融通の利く立ち回りをしています。

しかも弦が1本しかないギターで。

我々も見習いたい、トラック2の男

さてベース・ラインです! 今回は私の好きな“スネークマンステージ”のBGMを解析します。

まず曲の構成は、短いイントロからのサビ→Aメロ→Bメロ。クリープハイプの楽曲で言うと「オレンジ」がこれに近いです。

ベース・ラインもそれぞれのセクションで異なったパターンとなっております。

サビは“タッタタッタタ”の繰り返し。
Aメロは“ターァタッタ、タラララ”の繰り返し。
Bメロは“ターァタッタ”の繰り返しと思いきや4回目だけ“タラララ”を混ぜるという組み合わせ。

私このたび、演奏してみて驚きました。呼吸の間隔がセクションによって全然違う!

おわかりいただけるでしょうか?

サビは“スーハー”という細かい呼吸(2拍のループ)。
Aメロは“スーゥー、ハーァー”という大きな呼吸(4拍のループ)。
Bメロは“スーハー、スーハー”“スーゥー、ハーァー”というエクササイズみたいな呼吸(2拍+2拍+4拍というループ)。

一般的に、楽曲のなかでベースが担うひとつの大きな役割として“リスナーに曲の展開を説明する”というのがあります。“スネークマンステージ”のBGMは、この呼吸間隔の使い分けによって実に見事にそしてさりげなく、曲の展開を説明しているのですねー。

説明というよりは“匂わせ”と言えるかもしれません。この“匂わせ”スタイルは私の理想とするベース像でもあり、今回分析してみてとても勉強になりました※4

サビの“タッタタッタタッ”は16分音符と16分休符が小刻みに入り乱れるループ。ふたつ目の“ッ(休符)”の位置にちょうどスネアが来るので、自分の休符でスネアを鳴らすイメージで弾きましょう。

さて今回は音符記号を多用しての解説になっちゃいましたが、うまく伝わっていたら幸いです!

それではまた来月までご機嫌よう。

(※1)
^手塚治虫先生のアシスタントを経た池原先生。先生の描くロックマンからは、どこか鉄腕アトムのような、ふっくらとした温かさが感じられる。奇しくもアトムもロックマンも少年ロボットという点は一致してますね。

(※2)
^サウンド・コンポーザーはBUN BUNこと藤田靖明先生。ほかにも『天地を喰らうII 諸葛孔明伝』『ブレス オブ ファイア 竜の戦士』『美少女戦士セーラームーンS こんどはパズルでおしおきよ!』など、担当されたゲームがことごとく“BGMが良い”と評価されている巨匠です。

(※3)
^効果音の種類によっては、別のトラックがその役割を担うこともあるようです。例えば低い音の効果音ならベースのトラックが請け負います。

(※4)
^本文では触れませんでしたが、こちらで“スネークマンステージ”での“トラック2”の役割を解析してみます。

まずサビはメロディ・ラインとユニゾンしていますが、若干タイミングをズラしています。これによりコーラスのような効果を演出しています。

次にAメロではアルペジオ風のバッキング。Bメロは広めのフレーズで裏メロディを奏でています。この動きの幅が実に巧妙でカッコいいので、ぜひ注目して聴いてみてください!

◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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