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【第131回】 “弾き間違えた”ときにベーシストが最もやってはいけないこと 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
ライヴで音を間違えた! そんなときベーシストが最もやってはいけないこととは?
誰でもライヴ本番で弾き間違えたことがあると思います。そもそも間違えないように準備する、というのはまあ当たり前のことなので置いておきます。人間、準備していても間違えるときは間違えます。大事なのは間違えたあとにどう対応するか、なんですね。
ひと口に弾き間違いと言ってもいろんなケースがあるので、対応のしかたも実際にはケース・バイ・ケースにはなるんですが、ここでは一番基本的な考え方をお話しします。
弾き間違えたときにベーシストとして一番まずい対応は何か? それは“間違えたことで焦ってしまい演奏を止めてしまうこと”です。
これは、ベースが楽曲の土台だからです。ベースは、その曲のグルーヴを作り、コードの最低音を担っています。そのベースがいなくなると、アンサンブル全体の迫力がガッツリ薄れてしまいます。ベースがいなくなることの影響はめちゃくちゃ大きいわけです。言い換えれば、“ベースの音が鳴っていること”が大事なんです。
だから、間違えても弾き続ける。これが大事です。前回の動画でも「本番モードでは、間違えても気にしません」と言いましたよね。
ただ、経験した人ならわかると思いますが、何かを弾き間違えたときって、その続きのフレーズもしばらく間違ってしまうことが多いです。ということは、間違えても止まらずに弾き続けると、しばらく間違った音が鳴り続けることになります。それでも、ほとんどの場合、僕は弾き続けます。これは別に、間違った音を弾いていても問題ないということではなくて、“ベースの音が間違っていること”よりも“ベースの音が鳴っていないこと”のほうが影響が大きい、と思うからですね。ベースの音が間違っていると、多くのオーディエンスは「あれ? なんか変だぞ」と感じます。「あ、ベースが間違ったな」と気づく人はたぶん少数です。でもベースの音が消えると、たぶんオーディエンスはほとんど全員「ええ!? 急にバンドの迫力がなくなった!」とびっくりするでしょう。
だから、間違っても弾き続ける(間違った音だけどベースの音は鳴っている)ことが大事だけれども、当然、できるだけ早く元のフレーズに戻るべきです。ここで重要なのが、過去数回で取り上げてきた曲の覚え方です。指の動きで覚えているだけだと、間違ってから復活するまでに時間がかかることが多いです。でも、キー、構成、コード進行、ほかのメンバーのフレーズなども覚えていれば、より速く復活できる可能性が上がります。
この話を聞いて「なるほど、そうか!」と思ったとしてもそれだけでできるようになるわけもなく、基本的には実際のライヴで場数を踏んで学んでいくことだとは思います。ただ、前回の動画でも言ったように、“日ごろの練習の中で本番モードで演奏する時間を作っておく”ことで、 ある程度は慣れることはできます。
間違えないのが一番ですが、たとえ間違っても絶対に止まらない、弾き続ける。そしてできるだけ早く復帰する。こういう、バンドをしっかり支えられるベーシストを目指しましょう。石村順でした!
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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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