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【ベースの日2022】Bass Magazine & ZEMAITIS/Greco presents ヒロシ × 樋口豊(BUCK-TICK)

  • Photo:Takashi Hoshino

“ベーシスト”としての奇跡の邂逅

 芸人/ソロ・キャンパーのヒロシによるベース・マガジンでの連載コラム『孤独な低⾳キャンプ』の連載1周年を記念した、ベースの日2022対談イベントの2日目は、連載でもヒロシがその影響を公言しているBUCK-TICKから樋口豊を迎えて行なわれた。

 いたるところでBUCK-TICK愛を公言しているヒロシだが、実は樋口と対面するのは初めてだということで、当日の打ち合わせも時間をズラして別々で行ない、本番にて初対面するという趣向。開演後、まずはヒロシが登場して司会と軽いトークを交わしたあと、いよいよ樋口が呼び込まれて緊張の対面を果たす。ヒロシは直立不動で迎えて深々と一礼し、“はじめまして。高校生の頃から聴いてました”と第一声。樋口は“はじめまして。ありがたいですね”とにこやかに答え、対談がスタートした。

 お互いにベースを始めた頃を振り返ったエピソード・トークのあと、話題はこの日、樋口が会場に持ち込んでいた2本の貴重なベースへ。1本は近年のライヴ/レコーディングでメインとして使用していたゼマイティスのメタル・フロント・モデル。樋口が軽く音を出すと、メイン・ベースの音をこの距離感でダイレクトに聴ける貴重さに、“たまらんね”とヒロシ。そしてもう1本が、樋口がグレコとエンドースして最初に入手したというモデル。小ぶりなボディにJタイプ・ピックアップが2基搭載されているPXBモデルで、樋口が弾いているのを見たヒロシが“弾きやすそうですね”と言うと、“弾いてみますか?”と樋口。恐縮しながらもベースを受け取るヒロシに、樋口が“『SEVENTH HEAVEN』(1988年発表)の頃に使っていたかな”と言うと、“えぇぇぇぇ〜〜!!!”と声を上げつつ、“これ、いただけるんですか!?”とボケも忘れない。ヒロシがおもむろに「ICONOCLASM」のベース・リフを弾き出すと、それを見た樋口がゼマイティスを手に本家の演奏を聴かせ、開放弦やブリッジ・ミュートの活用を伝授。さらに、リフの作り方に関して問われた樋口は、「ケセラセラ エレジー」「キラメキの中で・・・」「唄」のリフを演奏した。また、ヒロシが速いダウン・ピッキングの持久力について質問すると、“けっこうズルしていますよ”とのことで、「ユリイカ」を実演しながら、“歌に入ると、全部8分じゃなくてアタマを4分にしたり”と秘訣を伝授するが、8分部分の粒の揃い方はさすがのひと言だった。

 ヒロシからさまざまな質問が投げかけられながら時間は進み、話題は作品ごとに大きな変化を遂げてきたBUCK-TICKサウンドへと向かう。樋口は1993年に発表された『darker than darkness -style 93-』をターニング・ポイントに挙げ、“レッチリとかも出てきて、時代が横ノリになったんですよね。それがどうしても馴染まなくて。それまでずっと縦を弾いてきたから、よくわからなかった。さっき弾いた「キラメキの中で・・・」とかも本当だったらレゲエみたいにハズむんですけど、ハズめないから、ああいうちょっと冷たい、なんだこれ、気持ち悪いなみたいな感じになったんですよね”と語る。一方のヒロシは、“バンドが売れて、普通だったら「BUCK-TICKらしさ」を続けてもいいのに、全然違うことをやっていくのがすごい”と称賛。最近は歌謡曲の要素をBUCK-TICK流に昇華した「舞夢マイム」が好きだと語ると、樋口が「舞夢マイム」のバッキングを弾き、“歌いますか?”とひと言。樋口のベースに合わせてヒロシが歌い、“贅沢なカラオケ!”とご満悦の様子だった。

 この日は、グレコ&ゼマイティスとの共同イベントということで、会場には、それぞれのブランドの最新モデルが持ち込まれており、次はその試奏コーナー。ゼマイティスのA22Bメタル・フロントを手に取り軽く音を出した樋口は、“あ、いい音だな”とポツリ。ゼマイティス ・ベースに抱いていた憧れを語ったあとグレコの現行モデルに持ち替える。実は樋口の現在のライヴでのメイン・ベースはグレコのカスタムBGベースで、リバース・ヘッド仕様、アクティヴ/パッシヴ切り替えが可能というスペックで使用している。今回会場に用意されたのは市販品のため、通常ヘッドのパッシヴ・モデルだが、太く厚みのあるサウンドが好印象だった。同じくグレコを手にしたヒロシがおもむろに「FUTURE FOR FUTURE」を弾くと、“古いですね〜! 30年以上弾いてないですよ”と笑いながら、フレーズをなぞる。さらにヒロシが「EMPTY GIRL」を弾くと、樋口も即座にフレーズを重ねるなど即興のセッションも。同じグレコのモデルを弾いているものの音色が違うことから、ヒロシがピックの当てる角度に注目。樋口はいわゆる“逆アングル”で弾いているようで、ヒロシにピックの当たる角度を伝授する。さらにピックの種類にも言及すると、“ピックで全然音が違いますね。重要なんですね”とヒロシも感心しきりだった。現在、樋口は指弾きのほうが多いそうで、指弾きをすることで改めてピック弾きの良さにも気づいたそうだ。また、“親指で弾くようになったのは細野晴臣さんの影響”と意外な経緯も話してくれた。

 試奏コーナーの最後は、ソロ・キャンパーのヒロシにおすすめのベースということで、トラベラー・ギター製品の紹介。先にベースを手に取った樋口は“すごい軽い! ホテルで練習するのに良さそうですね”と話し、ヒロシも“練習用にちょうどいいですよ”と同意。ただ、ボディ下部の座奏時にボディを支えるアタッチメントが気になったようで、“これがハズれたら持ち運びになおいいんですけど、ハズれないでしょ?”とネタ振り。司会から“実はハズれるんです”との言葉を引き出すと、“え〜〜〜”と大きなリアクションのお約束の流れを作り、会場の笑いを誘った。

 1時間半があっという間に過ぎ、“楽しかったです。こんなに有意義に話せて”と笑顔の樋口。ヒロシも“この2、3年、自分の思いもしなかった人生の流れができてきている感じがして。本当に楽しい”と語り、“バンドを組んで売れて、BUCK-TICKのフェスとかに呼ばれたら嬉しい”と、今後のベーシストとしての抱負も語った。最後は、ヒロシの近著である『ヒロシのひとりキャンプのすすめ 公式本』を樋口にプレゼント。そして、“逆にこれをいただける?”と、最後まで樋口所有のグレコのベースを持ち帰ろうとしていたヒロシであった。

イベントにて試奏した機材を紹介!

ZEMAITIS A22B MF

Black
Walnut

メタル・フロントが目をひく、王道スペックの普遍的サウンド

 ゼマイティスを象徴する、ボディの前面を覆うように取り付けられたメタル・プレートが映える、同ブランドのベースにおける唯一の現行モデルだ。低音弦側が14フレット付近まで伸びたモノカット・シェイプのアルダー・ボディに、メイプル・ネック、22フレットのローズウッド指板という王道のウッド・マテリアルで構成されており、ネックを深くジョイントさせることで、クリアでパンチのあるミッド・レンジと豊かなサステインを実現。またメタル・プレートは、見た目のインパクトのほか、ノイズ軽減にも寄与している。

 ピックアップはオリジナルのJタイプを2基搭載しており、2ヴォリューム/1トーンというシンプルなコントロール・レイアウトと相まって、直感的なサウンドメイクが可能。そのほか、ペグにはオリジナル製MHB-17150Z、ブリッジには軽量かつ弦交換がしやすいブラス・サドルとアルミ製ベース・プレートを使用したヒップショット製FB-B Style 4STGを採用している。ボディ・カラーはブラックとウォルナットの2色がラインナップ。マットな雰囲気で手触りもなめらかだ。なお購入時には専用のギグバックが付属する。

 ダニー・オブライエンによる芸術的な彫金を継承したメタル・フロントの洗練されたルックスに王道のスペックを携えた、普遍性の高い万能なモデルと言えるだろう。

Specifications
●ボディ:アルダー/アルミニウム・プレート●ネック:メイプル●指板:ローズウッド●スケール:34インチ●フレット数:22●ピックアップ:オリジナル・Dragon-J×2●コントロール:ヴォリューム×2、トーン●ペグ:オリジナルMHB-17150Z●ブリッジ:ヒップショットFB-B Style 4STG●カラー:ブラック、ウォルナット●価格:324,500円(税込)

Greco BGWB22

  • Aged White
  • Metallic Grey
  • Light Green

米国プロデュースの高い汎用性を備えたパッシヴ・モデル

 老舗国産ブランドの雄として長きにわたり多くのプレイヤーから親しまれているグレコ。本器は1980年の登場当時、“ブギー”の愛称でギタリストに支持されたオリジナル・モデル“BG”のベース版である“BG Bassシリーズ”の、米国にてプロデュースされた2020年発表のモデルだ。

 ボディ材はアルダーで、歴史あるBGボディ・シェイプをもとに、バック/エルボー・カットが施されているほか、トップ/バック側のエッジのRを変え、バック側がより丸みのあるエッジにシェイピングされている。またネックは木材を高熱処理で乾燥させ吸湿性を低下させることで高い安定性を与えたローステッド・メイプル、指板は近年多くのブランドが指板材に採用しているパーフェローという木材構成で、ネック・ジョイントはプレートなしの4点止めのボルト・オンで固定されている。

 ピックアップにはオリジナル製Jタイプを2基搭載し、コントロールは各ピックアップ・ヴォリュームとマスター・トーンというシンプルなレイアウト。ブリッジは表通し/裏通しの両方に対応するほか、トラスロッドはネック・エンド側での調整が可能なアジャスト・ホイール式を採用している。

 カラー・ライナップはエイジド・ホワイト、ライト・グリーン、メタリック・グレーの3色で、いずれもマッチング・カラーのヘッド・ストック。特徴的な形にシェイピングされた3プライのピックガードなど、ルックスでも楽しめる汎用性の高いモデルだ。

Specifications
●ボディ:アルダー●ネック:ローステッド・メイプル●指板:パーフェロー●スケール:34インチ●フレット数:21●ピックアップ:オリジナルJタイプ×2●ペグ:オリジナル●ブリッジ:オリジナル2ウェイ●カラー:エイジド・ホワイト、メタリック・グレー、ライト・グリーン●価格:102,300円(税込)

Traveler Guitar Ultra-Light Bass

  • Natural Satin finish
  • Gloss Black

超コンパクト・サイズに秘めた本格派サウンド

 “旅行に、キャンプに、出張先に”をコンセプトに掲げ、超コンパクトなデザインで注目を集める米国発のギター/ベース・ブランド、“トラベラー・ギター”。本器は同社のヘッドレス・ベース・モデル“Ultra-Light Bass”シリーズの4弦モデルで、重量約1.5kg、全長約857mm、30インチ・スケールという非常にコンパクトかつ軽量な設計ながら、ブラック・ウォルナットの指板には22フレットを備え、本格的な演奏が可能だ。

 ボディとネックはメイプル材を用いた一体型のスルーネック仕様となっており、ボディの高音弦側には座って演奏する際にひざの上に乗せるための着脱式ラップ・レストが付属。もちろんストラップを取り付けて立奏も可能だ。ペグはボディ中央部分に2:2のレイアウトで設置されており、弦はボディ背面に配置されたストリング・ポストに巻きつけて固定する。また低音側のペグの間には指弾きの際に重宝するフィンガーレストを装備している。

 シャドー製のアンダーサドル・ピエゾ・ピックアップの信号はエンドピン・ジャックから出力され、外部のアンプに接続することで、エレクトリック・アコースティック・ベースとしても使用可能だ。カラーはサテン・フィニッシュのナチュラルとグロス・フィニッシュのブラックの2色で、4弦モデルのほか5弦モデルもラインナップしている。

 自宅の寝室やリビングで手軽に演奏できるギアとしてはもちろん、文字どおり旅行先やアウトドアなど、さまざまな用途が考えられる一本だ。

コンパクトなヘッドレス・デザインで、それぞれのペグ・ポストはボディ背面に設置されている。
ボディ中央に覗く低音弦用ペグの間には、指弾き用のフィンガーレストがあり演奏性を高める。
座奏時にボディを安定させるラップ・レストは取りはずし可能で、運搬時にはコンパクトにまとまる。

Specifications
●ボディ/ネック:メイプル●指板:ブラック・ウォルナット(サテン・ナチュラル)/メイプル(グロス・ブラック)●スケール:30インチ●フレット数:22●ピックアップ:ピエゾ・タイプ●ペグ:オリジナル●ブリッジ:オリジナル●カラー:サテン・ナチュラル、グロス・ブラック●価格:62,700円(税込)

製品に関するお問い合わせは、神田商会カスタマー・サポート(☎︎03-3254-3616)まで。 ◎http://www.kandashokai.co.jp/