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    レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Californication』が教えてくれたこと【ジョー・ダート(Vulfpeck)連載】第11回

    • Interview & Text:Shutaro Tsujimoto
    • Translation:Tommy Morley

    ミニマム・ファンク・バンド、ヴルフペック(Vulfpeck)のベーシスト、ジョー・ダートが影響を受けたアルバムを語りおろす本連載。今回取り上げるのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RHCP)が1999年にリリースした7作目のアルバム『Californication』だ。(本連載でRHCPの作品を取り上げるのは、第1回の『Blood Sugar Sex Magik』(1991年)に続いて2度目!)。ギタリストのジョン・フルシアンテの復帰作となった本作での、フリーのベース・プレイについて熱く語ってくれた。

    第11回:レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Californication』(1991年)

    まるでザ・スミスを聴いているときのような
    クールなインタープレイに心を奪われるんだ。

    『Californication』のタイトル・トラックでは、フリーはとてもメロディックなベース・ラインをプレイしているよね。この曲が象徴するように、アルバム全体としてもスラップはあまり登場せず、指弾きで演奏している曲が多いんだ。オーバードライブを効かせたサウンドや、ハンマリング、トリルなどのテクニックも随所に見られる。ベーシストとしての成熟が感じられる作品だと思うし、当時のフリーは本当に自信に満ち溢れているように感じるんだ。

    本作のあとに出たライヴ映像作品『Off the Map』(2001年)では、『Californication』の多くの楽曲をプレイしているフリーの姿を観ることができる。彼はアクティヴのベースにブライトな弦を張り、強烈なサウンドを鳴らしている。そのプレイ・スタイルはジョン・エントウィッスル(ザ・フー)に通じる部分もあって、リード・ベースのように動き回りながらも、チャド・スミスのドラムとタイトに組み合っている。そしてジョン・フルシアンテのギターに見事に溶け込む美しいメロディーを奏でているんだ。

    特に、“Summer Time”を逆から読んだ「Emit Remmus」なんかでは、常識にとらわれないプレイが聴ける。フリーはオーソドックスなベース・ラインにとらわれず、自由に表現することをまったく恐れないんだよね。それでも彼のベースは主張しすぎることなく、ほかのメンバーのための”余白”もきちんと残している。フルシアンテの煌びやかなギターと、フリーのパワフルかつメロディックなベースが絶妙に絡み合っていて、まるでザ・スミスを聴いているときのようなクールなインタープレイに心を奪われるんだ。

    彼らは”安全策”を取らずに
    音楽を楽しんでいるんだと思う。

    ジョン・フルシアンテはバンドを離れては戻り、また離れては戻ってきた(※篇註:1992年〜1998年の間バンドを脱退していた)。その過程がバンドに新たなフレッシュさをもたらしたんじゃないかな? もしジョンがずっと在籍し続けていたら、こうはならなかったかもしれない。彼らの関係性にはどこか子供らしいところあって、ずっと変わらなかった部分があるんだと思う。彼らは、今でも単にジャムってるだけなんだろうね。彼らがステージに立つときは、心から楽しんでいるのが伝わってくるし、そこから僕自身もインスパイアされているよ。

    僕は『By the Way』(2002年)ツアーを観たことがあって……あれは、スレイン・キャッスルのライヴ映像(『LIVE AT SLANE CASTLE』/2003年収録)と同じ時期だと思うんだけど、彼らはステージに出てきて最初の1曲を丸ごと、完全なインプロヴィゼーションで始めたんだ。ノープランでジャムる姿は、本当にクールで素晴らしかったよ。リスキーな部分もあるだろうけど、彼らは”安全策”を取らずに音楽を楽しんでいるんだと思う。

    今でも映像で彼らのライヴを見ると、その頃のアティチュードが保たれているのが感じられる。彼らに年齢は関係なくて、フリーはいつまでもパワフルで、その秘訣は恐らく彼が常にベースを弾き続けているからだろうね。自分の人生を音楽に捧げていることが伝わってくるし、今でも僕のヒーローなんだ。

    ヴルフペックで一度、オースティン・シティ・リミッツ・フェスティバルで彼らの直前にプレイしたことがあって、フリーに会えるんじゃないかと期待していたんだ。だけど残念ながら10フィートのところまでには行けたのだけど、話しかけることはできなかったよ。でもいつの日か彼と再び会える日が来ると信じていて、少年時代に手紙をもらったことについて伝えるつもりなんだ。あの出来事はとてつもなく大きなインパクトを僕に与えてくれたからね。手紙は額縁に入れて保存しているよ! フリーに絶対にいつか見せたいんだ(笑)。

    作品解説

    レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
    『Californication』(1991年)

    復帰したジョンのメロディ・センスが開花
     
     レッド・ホット・チリ・ペッパーズによる7作目のスタジオ・アルバム。1992年に脱退したジョン・フルシアンテ(g)の復帰作で、彼のメロディ・センスが開花したことで、ファンク色の強い過去作から一転し、メロウで枯れた、生まれ変わったバンド像を提示した。「Scar Tissue」や「Otherside」、タイトル曲「Californication」など、メロディアスな楽曲を多数収録し、フリーのベースもメロディックなアプローチを多用している。全世界で1,500万枚以上を売り上げた、彼らのディスコグラフィのなかで最も“売れたアルバム”でもある。

    【Profile】
    ジョー・ダート●1991年4月18日、米国ミシガン出身。幼少の頃からアース・ウインド&ファイヤーやタワー・オブ・パワーといったストレートアヘッドなファンク・ミュージックに傾倒する。ベースは7、8歳頃に弾き始め、中学では学校のジャズ・バンドに参加、その後ミシガン音楽大学に入学し、ヴルフペックのメンバーと出会った。2011年に結成されたヴルフペックはロサンゼルスを拠点に活動し、トラディショナルなブラック・ミュージックを現代的にアップデートするミニマル・ファンク・バンド。

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