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【新連載】ジョー・ダートの「レコードが僕に教えてくれたこと」第1回:レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Blood Sugar Sex Magik』

  • Translation:Tommy Morley
  • Photo:Dara Munnis
  • Interview:Shutaro Tsujimoto

ミニマム・ファンク・バンド、ヴルフペック(Vulfpeck)のベーシストにして新世代のベース・ヒーロー、ジョー・ダート。純度の高いファンク・ベースで世界中を魅了するジョーが、“愛聴していたベース名盤”をテーマに毎回1枚セレクトし、自身のルーツを振り返る新連載が本誌2023年11月号よりスタート!

記念すべき第1回では、ジョーが“ベーシストとしての原点を語るうえでハズせない”と語る、あの名盤をセレクトしてくれました。初回ということで、連載のコンセプトについて語ってもらったインタビューもWeb記事限定で公開! お楽しみください!

Episode01:
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ『Blood Sugar Sex Magik』
(1991年)

 

顔面に迫るような生々しさや迫力のあるベース・プレイに心惹かれたんだ。

 僕が初めて聴いたレッチリのアルバムは『Californication』(1999年)で、当時僕は8、9歳だった。ギターを弾いていた3歳年上の兄がずっと聴いていたから自然と僕も影響を受けたんだ。「Around the World」と「Californication」は初めて聴いたときから記憶に深く残ったよ。その後、彼らには「Under the Bridge」というヒット曲があるということを知り、収録作の『Blood Sugar Sex Magik』を聴いてみたいと思ったんだ。このアルバムの顔面に迫るような生々しさや迫力のあるベース・プレイに心惹かれたんだ。それはリック・ルービンによる剥き出しのプロデュースによるところもあったと思うし、3ピースの楽器隊による演奏だけで構成されていたからかもしれないね。

 『Funky Monks』(1991年)というこの時期の彼らを追ったドキュメンタリー作品があって、10代中頃にこれを観てバンドの実態について深く知ることができたんだ。彼らはともに生活してファンク・パンクの精神を培っていて、ジョージ・クリントンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンらからの影響を話していたね。彼らがファンクの系譜を追及していることに誇りを持っているってことを僕はそこで知ったので、読者のみんなにもアルバムと一緒にこのドキュメンタリーもチェックしてもらいたいよ。彼らがどのようにしてあのアルバムを作っていたかが詳細に記された、素晴らしい映像作品なんだ。

“ベース・ラインは曲を引っ張っていける”ということはフリーから学んだよ。

 このアルバムでフリーはハードコアなスラップをけっこうやっていて、「The Power of Equality」、「Sir Psycho Sexy」、「Blood Sugar Sex Magik」は僕にとってとても重要な曲なんだ。スローだけどかなりヘヴィで、「Sir Psycho Sexy」なんてベースが曲を引っ張っていて、もはやドラムとベースによる曲にジャングリーなギターが乗っていると言うべきだろうね。“ベース・ラインは曲を引っ張っていける”ということはフリーから学んだよ。それから、「Give It Away」はこのアルバムのなかで一番有名なビッグヒットだけど、僕はこの曲を最近かなり久しぶりにライヴで演奏したんだ。ボナルー・フェスティバルのスーパー・セッションをコリー・ウォン(g)がホストして、そこに参加したときのことなんだけど、YouTubeに動画が残っているよ。「Give It Away」はスライドするベース・ラインが特徴的な名曲で、ビートルズの「Come Together」に匹敵するくらいスライドがフックになっている。

 このアルバムの曲のベース・ラインってすべてアイコニックで、特に「Naked in the Rain」ではクラシックなフリーのスタイルが聴ける。YouTubeにあるチャド・スミスの教則ビデオの映像で、ふたりがこの曲をプレイしている動画があるんだけど、フリーはスラップしたり飛び跳ねたりしまくっているよ。かなり強烈に弦を叩いていて、そこで彼のスタイルを深く学んだ気もするね。音だけじゃわからなかった彼のスラップ・テクニックを映像で学んだんだ。今でもあの映像は大きな影響を与えてくれているので、このアルバムは僕の原点のひとつなんだよ。

作品解説

キャリア最初の頂点を迎え、新たなミクスチャー・ロックを提示した記念碑的作品

 オリジナル・メンバーのヒレル・スロヴァク(g)の逝去後、ジョン・フルシアンテ(g)とチャド・スミス(d)が加入しリリースされた『Mother’s Milk』(1988年)に続く5作目のアルバム。今作より以降のレッチリ作品を手がけるプロデューサー、リック・ルービンが迎えられた。ファンク、ヒップホップ、グランジ、メタル、オルタナティブ、パンクなど、さまざまなジャンルのスタイルを混在させた独自のミクスチャー・サウンドを確立し、多くのフォロワーを生んだ90年代オルタナ・ロックを代表する名盤だ(編集部)。

Short Interview:連載開始にあたって

ここでは本連載を開始するにあたり、選盤のコンセプトについて語ってもらった。

━━ついに連載が始まりました! これから毎月12枚のアルバムを紹介してもらいますが、どのような基準でアルバムをセレクトしていきますか?

 今回アルバムを選盤するにあたり、“ベーシストとしての自分を形成する時期に聴いていたもの”を思い浮かべたんだ。10~17歳の頃って楽器を介した自分の“声”を探していた時期で、この連載で紹介するアルバムたちはその頃に何度も聴き返してベースを学んでいった作品を紹介していくつもりさ。

━━曲単位ではなく、“アルバムをとおして聴いていた”というのも重要ですね。

 1曲目から最後の曲まで、グレイトな曲がギッシリ詰まったアルバムを紹介していくよ。特定の数曲だけを目的で聴くようなものではなくて、どれも聴くときには必ず頭から全部をとおして聴いていたようなアルバムだね。

━━初回はレッド・ホット・チリ・ペッパーズのアルバムをセレクトしてくれました。

 彼らは、ジャミロクワイと並んで本当に大きな影響を及ぼしてくれた存在なんだ。“僕に大きな影響を与えてくれたベーシストって?”と考えたときに、フリーはもちろんハズせないね。ピノ・パラディーノ、ジェームズ・ジェマーソン、スチュワート・ゼンダー、ヴァーダイン・ホワイト、ロッコ・プレスティアといったベーシストたちも僕にとって欠かせない存在で、彼らによって僕は自分のサウンドを見つけることができたんだ。

━━そのあたりのベーシストがプレイする作品も登場が期待できそうですね。

 そうだね。楽しみにしていてほしい! こうして日本のベース・マガジン読者のみんなに連載をとおして僕について知ってもらえることが本当に嬉しいし、ワクワクしているんだ。また日本でプレイできる日のことも心待ちにしているよ!

Bass Magazine Webでは、ジョー・ダートによる本連載を毎月更新予定! 次回もお楽しみに!

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【Profile】
ジョー・ダート●1991年4月18日、米国ミシガン出身。幼少の頃からアース・ウインド&ファイヤーやタワー・オブ・パワーといったストレートアヘッドなファンク・ミュージックに傾倒する。ベースは7、8歳頃に弾き始め、中学では学校のジャズ・バンドに参加、その後ミシガン音楽大学に入学し、ヴルフペックのメンバーと出会った。2011年に結成されたヴルフペックはロサンゼルスを拠点に活動し、トラディショナルなブラック・ミュージックを現代的にアップデートするミニマル・ファンク・バンド。

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現在発売中のベース・マガジン2023年11月号【AUTUMN】にもジョー・ダートの連載記事を掲載しています!

11月号ではそのほか、メイン特集『ピック弾きの大逆襲―低音で鳴らす“アタック”の美学―』にて、ピック弾きベーシストによる特別対談、さまざまなジャンルでピック弾きの可能性を拡張してきた国外のベーシストたちのプレイ・スタイルや名演に注目し、ピック奏法の真髄に触れる『ピック・マスターたちの肖像〜世界の名手とそのスタイル』、そして『ピック弾きの歴史を辿る、日本人ベーシストの軌跡』、『For All Players 究極のピック弾きメカニズム』……など、ピック弾きについて深く掘り下げたコンテンツを総力特集しています。詳細はこちらから!

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