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    良質な栄養はとても大切【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】– 第4回

    生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史による、以前本誌にて掲載していた当連載がBM Webにて復活! マニアックなものからビギナー向けのお勉強企画まで、豊富な機材知識を持つ高松がエフェクターを語り尽くします。第4回は、エフェクターを使用する人なら誰もが気になる“パワー・サプライ”について。その選び方から注意点まで、独自の目線で高松が解説してくれた!

    K.E.S KIP-V.A.C.9/KIP-AC208MS

    Bass Magazine Webをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。

    11月に入りました。11月1日からThe Novembersのツアーを開催していて、これを書いている今もツアー真っ只中です。

    今回のツアーは新曲をたくさん演奏しているので、新鮮な気持ちでとても楽しいです。

    さて、ツアーに合わせてペダル・ボードの電源を入れ替えました。第4回である今回は、そのパワー・サプライについてお話ししようかと思います。

    今回僕が導入したのは、K.E.Sの“KIP-V.A.C.9”と“KIP-AC208MS”の2機種。どちらも最近話題のパワー・サプライなので、既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

    僕がパワー・サプライを選ぶとき、

    ①出力(何Vが何mA出ているのか)
    ②フル・アイソレートか否か
    ③+αその機種の個性
    ④ポート数

    こんな感じで優先順位をつけています。それぞれの理由や今回導入した2機種はどうなのか、といった点を解説していきます。

    ①出力(何Vが何mA出ているのか)

    まずは音にかなり影響する部分ですね。エフェクターというのは、例えば“9V”と記載があっても、9.0Vと9.5Vでは音に違いが出ます。少なくとも弾いている本人は変化を感じられると思います。前回も触れましたが、電圧が上がると音はくっきりとして、例えばオーバードライブなどの歪み系エフェクターはゲインが下がる傾向にあります。この音の変化も、もちろん個人の好みで選択するべきなのですが、僕は少し高めの電圧のほうが好みとなることが多いですね。特に歪み系は音の芯が強くなる印象があるので。

    ただし、電圧が高すぎるのもどうなのかな? とは思っています。経験したことはないですが、“9V”と記載されていて9.9Vで駆動したら壊れてしまう、なんてことも、もしかしたらあるかもしれません。製品開発の際に余裕を持たせて作られているとは思いますが……。

    個人的には多少電圧が高いくらいが、“そのエフェクターのキャラクターがありつつ、音が少しクリアになる”感じがして良いかなと思っています。公式ホームページによると、KIP-V.A.C.9とKIP-AC208MSはどちらも無負荷時供給電圧が約9.8V、高負荷時でも9.4V を確保できるよう設定されているようです。……9.8V、少し高すぎるかもなとは思いつつも、しっかりクリアな音になったのでこれはこれでアリです。

    ②フル・アイソレートか否か

    これについては僕のペダル・ボード内にいくつかデジタル・エフェクターがあるので、フル・アイソレートのほうがいろいろとラクである、という感じです。やはりアイソレートされていないパワー・サプライでデジタルとアナログが混在してしまうと、ノイズが出てしまうので……。

    近年、フル・アイソレートの機種が増えてきているので、音ほど重要ではないかなといったところです。また、フル・アイソレートのほうが優れている、ということではないので誤解なきよう。あくまでもそれぞれの使用状況、環境によって選ぶべきだと思います。

    今回導入したパワー・サプライはどちらもフル・アイソレートです。バッチリですね。ノイズも気になりません!

    ③+αその機種の個性

    最近はフル・アイソレートの製品が増えてきていて、それに加えて個性的な機能が搭載されている機種が多いです。その個性に惹かれるものがあったりもしますよね。またまた公式ホームページによるとKIP-V.A.C.9は、“ボルテージ・アジャスト機能により6.5V~18Vの間を無段階で 任意の電圧に設定可能(Port7-9)。電流も可変となります。目安として12V時 375mA 18V 250mA”とあります。ようするに自分で好きな電圧に調節できるポートが3つある、ということなのですが、これがすごくおもしろいなと。

    たとえば先ほども例に挙げた、9.0Vと9.5Vの音の差を知れたり、そのエフェクターがどのくらいの電圧だと自分の好みの音になるか知れたりするので。ただ、小さくて回しにくい&けっこうシビアなので、そこは難しいですね……。僕は9.4〜9.5Vの範囲で設定することが多いです。

    KIP-AC208MSはACコンセント出力があるので、電源タップ的にも使えるのが目玉機能でしょうか。僕のボードの場合、スイッチャー用の電源と、KIP-V.A.C.9用の電源を取っています。

    ④ポート数

    ペダル・ボード内には10〜15個ほどのエフェクターを置くことが多く、おのずとパワー・サプライもふたつ以上必要になるため、あまり重要視していません。が、人によってはとても重要かもしれません。
    KIP-V.A.C.9が9ポート、KIP-AC208MSが8ポートなので、僕のペダル・ボードには少し多いですが、音や機能を重要視しました。

    以上、僕のパワーサプライの選び方や、実際に導入した理由なんかを綴ってみました。

    何度も言いますが、その人それぞれの環境や状況に応じて重要視する点は変わってきます。あくまで、僕はこうだったよ、という参考例的に読んでいただけたら幸いです。

    エレキ・ギターやベースはエフェクターの電源、アンプの電源など、電気がないと音が出ません。なので、電気の質はとても重要だと思います。意外と軽視してしまいがちですが、電源を見直すと大きな変化があったりしますので、いろいろと試してみてくださいね。

    最近は素晴らしい機種がたくさんありますので!  機会があれば電源のケーブルなどについても取り上げられたらおもしろいかもしれませんね。

    それでは、今回はこのへんで。ご覧いただきありがとうございました!

    ◎Profile
    たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からTHE NOVEMBERSとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。

    ◎Information
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