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【誰でもわかる! 低音理論のオハナシ】第9回 – 楽譜の基礎知識・その1

  • Text:Takeshi Yamaguchi

前回まででコードのお話は終わり。今月からはミュージシャンにとっての共通言語でもある楽譜について学んでいこう。知っておいて損はない情報が満載だよ!

“楽譜”はミュージシャンの世界共通語!

英語やスペイン語などの外国語が話せなくっても楽譜が読めれば世界中のミュージシャンとセッションすることができるんだ。

言語は通じなくても、1枚の楽譜を見ながらひとつの曲を演奏して作り上げていくことができる……。“楽譜”とはそういうものだ。というわけで、今回からは“楽譜”についてのオハナシを進めていきたい。

もともとこのコーナーは、今さら人に聞けないような“理論の入門”コーナーなので、最初は当たり前のように感じる事柄もあるかもしれない。しかし、ベーシストにとってどれも非常に大事なことであり、(前回までの“コードについて”も同様だったと思うが)徐々に読み進むにつれて“あ、そういうことだったのか”と思うようなことも出てくるに違いない。したがって、簡単そうに思えることでも、ここで再確認するつもりでしっかりと把握しておこう。

いろいろな“音部記号”

楽譜に用いる“五線譜表”は誰でも知っているよね? 小学校でも音楽の時間に“五線紙”を使ったことがあるはずだ。その五線譜表の最初に出てくるのが“音部記号(クレフ)”といって、五線譜表上の音名を決定する基本的、かつ重要な記号なんだ。というのも、これが記されていないと、どの音が何の音だかはっきりわからなくなってしまうからなんだね。では、最も一般的な音部記号を【譜例1~ 3】に示したので見ていくことにしよう。

●卜音記号(Gクレフ

まず【譜例1】は、最も広く用いられている“ト音記号(Gクレフ)”だ(和名と英語名などとの関係については、このあとに出てくる【譜例5】を参照)。この記号の中心であり、五線譜表の第2線(線の呼び方などについては【譜例6】参照)と交わる部分がハニホヘト……という和名の“卜音”となることが“ト音記号”と呼ばれる理由だ。

したがって、ト音記号で書かれたドレミ……はこの譜例に示すような位置になるわけ。ちなみに、このト音記号はおもに高い音域の楽譜に用いられ、この記号で表わす五線譜表を“卜音譜表”という。

●へ音記号(Fクレフ)

【譜例2】はおもに低音域で用いられる“へ音記号(Fクレフ)”だ。ベースの楽譜は基本的にこの音部記号を用いることになる。この場合も、この記号の中心と五線譜表の第4線が交わった部分が、和名の“へ音”となるため“へ音記号”と呼ばれるわけで、この記号で表わす譜表を“へ音譜表”と呼ぶ。

したがって、へ音譜表のドレミ……はこの譜例のような位置に並ぶことになるわけだ。

●ハ音記号(Cクレフ)

【譜例3】はあまり馴染みがないという人がいるかもしれないが、中音域で用いられる“ハ音記号(Cクレフ)” というものだ。これには、その記号の記される位置によって、ソプラノ、アルト、テナー、という3種類があり、譜例はアルトの例だ。

もちろん、この記号で表わした譜表は“ハ音譜表”といい、そのドレミ……は譜例のような位置に並ぶことになる。

それぞれの音部記号の関係

ところで、ひとつの音部記号で統一すればわかりやすいものを、なぜこのようにいくつも分ける必要があるのだろうか?それは、ひとつの音部記号ですべての楽器の音域をカバーしようとすると、五線譜表の上下にやたらと“加線”(【譜例6】の解説参照)を用いることになり、楽譜が読みづらくなってしまうためなんだ。

ちなみに、ベースで用いられるヘ音譜表と、ギターなどに用いられる卜音譜表との間には、どのような関係があるのだろうか。ヴィオラなどに用いられるハ音譜表とともに、その関係を【譜例4】に示しておくので、ベースの指板の位置(【図1】)と含わせて把握しておこう。

和名とその他の音名との関係

●トライアドを使ったプレイ

音楽では“ドレミ……”といったり、“CDE……”といったり、いろいろな言語が使われるよね。これらの音名が“和名のハニホヘトイロ”=“英語名のCDEFGAB”=“イタリア語名のドレミファソラシ”という関係であることも再確認しておこう(【譜例5】)。

これが理解できていないと、【譜例1~3】の音部記号についてもしっかりと把握できなくなってしまうぞ。

五線譜表の“線”と“間”

五線譜表の線や、その間の呼び方は【譜例6】に示すとおりだ。それに加えた線を、第1線、第2線……、またその間の部分を、第1間、第2間……、と呼ぶ、さらにその上下を区別するために、上第1線、上第1間……、あるいは、下第1線、下第1間……、と呼ぶ。

ちなみに、上下に加えた部分の線を“加線”と、それによってできた間を“加間”と呼ぶ。あまり使う場面がないことのように思えるかもしれないが、一度知っておくと、のちのち便利なこともあるので覚えておこう。

というわけで、今回は楽譜の基礎の基礎について触れてみた。楽譜はバンドでプレイするときに必要不可欠なもの。今回の内容は、その楽譜のすべての事柄の大前提となるので、この機会に確実に把握しておこう。次回からはさまざまな音符や休符について、さらにそのあとには楽曲の進行の仕方や用語などについても述べていくぞ。

今回のまとめ:楽譜の知識があれば世界に通用する!(かも?)

◎講師:山口タケシ
東京都出身。小学生の頃ギターを弾き始め、中学生でバンドを作り、ベースに転向。大学在学中にCBS/SONY(当時)よリバンドでデビューした勢いで、新聞記者か小学校教師という進路を変更、親の反対を押し切り就職活動もせずにプロの世界へ。その後はバンドのライヴ活動と同時にスタジオ・ワークやツアー・サポートなどを始める。卒業後、自己のバンドや、数々のアーティストのツアー、レコーディングヘの参加とともに、『ベース・マガジン』誌への執筆や、入門書、教則CD、教則ビデオ制作といった活動も続けている。