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第5回:レッド・ツェッペリン『Led Zeppelin』【ジョー・ダートの「レコードが僕に教えてくれたこと」】

  • Translation:Tommy Morley

ミニマム・ファンク・バンド、ヴルフペック(Vulfpeck)のベーシスト、ジョー・ダートが自身のベーシストとしてのルーツとなったアルバムの魅力を語る本連載。第5回で取り上げるのはレッド・ツェッペリンが1969年にリリースした彼らのデビュー作! 意外な選盤となった今回……その真意とは?

Episode05:
レッド・ツェッペリン『Led Zeppelin』
(1969年)

実際のところ、彼らはリズム&ブルースのバンドなんだよね。

4人組バンドであるレッド・ツェッペリンの楽器陣は基本的にトリオ形式なんだけど、そのシンプルな編成が生む生々しさやヘヴィネス、ファンクネスから僕が受けた影響はものすごく大きかったんだ。というわけで、今回は自分にとって最も思い入れのある彼らの1stアルバムを紹介したい。10代の頃の僕はファンクもたくさん聴いていたけど、レッド・ツェッペリンやザ・フーのような古いロックにも心酔していたんだ。

“レッド・ツェッペリンはハードロックやヘヴィ・メタルの源流”って多くの人は言うけど、実際のところ彼らはリズム&ブルースのバンドだと思うよ。彼らはモータウンやマッスル・ショールズを始めとしたアメリカ南部のリズム&ブルースを大いに取り入れたりコピーしていた。彼らはアメリカ生まれの音楽を追いかけながらイギリス人のフィルターをとおして新しい発明をしていたバンドなんだ。

レッド・ツェッペリンがデビューした“1960年代後半”という時代はずっと僕にとって憧れだった。もちろん現代でも素晴らしい音楽は生まれているけど、当時の僕は音楽の絶頂期はこの時期にあると思い込んでいたよ。レッド・ツェッペリンやクリーム、ジミ・ヘンドリックスのようなヘヴィなサウンドがある一方で、同時にビートルズのようなバンドもいたことが興味深かった。演奏が削ぎ落とされたヘヴィで生々しい音楽と、綿密に作り込まれた音楽がコインの裏表のように存在していた時代にこのアルバムは生まれたんだ。もし自分が1940年代後半に生まれて、この時代に音楽をやっていたら“どんなものを作っただろう?”と想像することも多々あったよ(笑)。

『Led Zeppelinの1曲目「Good Times Bad Times」は最高のオープニング曲だし、世界中の人があのイントロで最初にツェッペリンに出会ったと思うと胸が熱くなる。この曲では超ヘヴィなドラム・フィルが炸裂していて、ベース・ラインも強烈だ。ジョン・ポール・ジョーンズが真にファンキーなベーシストであることを証明している曲だと思う。

彼のプレイは本当にメロディックで、「Your Time is Gonna Come」はその最たる例さ。演奏自体の生々しさに加え、真空管プリアンプをハードに歪ませたオーバードライヴ・サウンドが魅力的で、70年代以降のヘヴィ・サウンドともまた少し違う、この時代特有の質感が出ている曲だよね。

それから、ジョン・ポール・ジョーンズが単なるベース・プレイヤー以上の存在だという点も僕にとっては刺激的だった。彼はマルチ・プレイヤーだし、このアルバムでもオルガンを少し弾いていたんじゃないかな? ポール・マッカートニーはもちろんだけど、ベーシストにはプレイヤーにとどまらず、プロデュースや作曲、アレンジに深く入り込んでいる人が多いんだってことを学んだよ。

以前ヴルフペックのジャック・ストラットンと、“ベーシストが違う人物だったらここまで成功していなかったバンドって何だろう?”という話をしたとき、それはレッド・ツェッペリンだということで意見が一致したよ。ジョン・ボーナム(d)や、ジミー・ペイジ(g)がバンドを華やかにしていることは10代の自分の耳にも明白だった一方で、ジョン・ポール・ジョーンズの貢献の大きさに気付くまでに時間がかかってしまったけど。彼がいなかったら、レッド・ツェッペリンはまったく違うバンドになっていたと思うよ。(ジョー・ダート)

作品解説

ロック史を変えた記念碑的デビュー・アルバム

1969年1月にリリースされた、レッド・ツェッペリンのデビュー作。エリック・クラプトンやジェフ・ベックを輩出した“ヤード・バーズ”の最後のギタリストとなったジミー・ペイジが、ジョン・ボーナム(d)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b)、ロバート・プラント(vo)とともにバンド名を改名し再出発の狼煙を上げた本作は、デビュー・アルバムにして全米10位、全英6位という好成績を記録した。オープニング・ナンバーから、当時のブルース・ロックと一線を画すヘヴィ・リフとリズム&ブルース由来のグルーヴィなアンサンブルで聴く者を圧倒し、ハードロック黄金時代の幕開けを告げた記念碑的作品。(編集部)

●第1回

●第2回

●第3回

●第4回(本誌2024年2月号に掲載)

●連載一覧はこちらから。

【Profile】
ジョー・ダート●1991年4月18日、米国ミシガン出身。幼少の頃からアース・ウインド&ファイヤーやタワー・オブ・パワーといったストレートアヘッドなファンク・ミュージックに傾倒する。ベースは7、8歳頃に弾き始め、中学では学校のジャズ・バンドに参加、その後ミシガン音楽大学に入学し、ヴルフペックのメンバーと出会った。2011年に結成されたヴルフペックはロサンゼルスを拠点に活動し、トラディショナルなブラック・ミュージックを現代的にアップデートするミニマル・ファンク・バンド。

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