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    『ワギャンランド』制約を乗りこなす解放的なベース・ライン【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】– 第7回

    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
    • 挿絵:長谷川カオナシ

    2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。それを記念して始まった長谷川カオナシによる本連載コラムでは、多彩な趣味を持つ長谷川が特にハマっているという、“レトロゲームのベースの世界を案内します。

    お酒のお供に……“しりとり”はいかが?

    “りんご”、“ゴリラ”、“ラケット”、“とまれ”……

    うっ、“レ”で始まるのがひとつも、ない!!

    いえ、あります! こちらレトロゲーム喫音堂です。

    4月から始まったこの連載も今回で7回目。

    今年度も折り返しですね。

    先日、弊堂の半年間の連載突破を記念して、友人夫妻からこんな粋なものをいただきました。

    アッもう飲んでる!

    純米大吟醸“黒狐”。ありがとうございます。

    私によく似た狐さんがラベルに描かれていますね。

    製造は富士酒造株式会社、使用酒米は美山錦、酵母は山形酵母、必ず冷やしてから御賞味あれ、とのことです。

    早速いただいてみましょう。

    ……おいしい!

    しゅわっとした口当たり、爽やかな甘味と、留まり過ぎない酸味。

    これは今日も良い喫音日和になりそうですね。

    それでは第7回目はお酒のお供によさそうなゲームをプレイしていこうと思います。

    『ワギャンランド』(1989年/ナムコ)(※1)

    そもそもはナムコから発売された、おしゃべり恐竜おもちゃの“ワギャン”。

    彼が主人公となり音波砲で戦うアクション・ゲームがこの『ワギャンランド』です。

    一般的な横スクロール・アクション・ゲームですが、なぜかボス戦で唐突に

    “神経衰弱”と“しりとり”勝負が始まります(※2)

    勝てば道を通してもらえますが、負けるとワギャンの残機が1機奪われます。


    ……まさにデス・ゲーム

    映画化したら盛り上がりそうですね。

    “しりとり”とは“命のやりとり”である

    今回喫音していくのは後半ステージのアクション・パートのBGM。

    ファミコンが一度に鳴らせる和音数に関しては、喫音堂第2回第6回で言及してきたようにかなりの制約があります。


    こちらのBGMもその制約のなかで、独特な構成になっています。

    まずはトラック編成を見てみましょう!

    ①メロディ・トラック
    ②ベース・トラック
    ③タム・トラック
    ④リズム・トラック

    超前衛的バンド編成

    なんということでしょう。

    メンバー4人中2人が打楽器を担当している。

    音程のある伴奏がベースしかいない

    高校生が学祭のために無理矢理組んだバンドでもまず見かけない編成ですね。

    しかしこのベーシストがなかなか曲者でおもしろいです。

    曲が始まって5小節目、ここのコードの響きは、メロディ的に“Dメジャー”かと思われます。“Dメジャー”の構成音は下から順にレ、ファ♯、ラ。

    ベース・ラインを構築する際のセオリーとして、“小節の1拍目はコードの1番下の音を弾く”というのがあります(※3)

    したがってここでは1拍目にレを弾くのが安全ですが、この曲のベースはなんとファ♯を弾いています。

    これにより、それまでの伴奏然としたベース・ラインが、一瞬だけメロディに近寄ったような印象になります。

    ベース・ラインを考える際、先述のセオリーは私にとって、道しるべになってくれるありがたい存在です。

    ですが曲によっては足かせのように感じることもあります(※4)

    ですがどうでしょうか。

    『ワギャンランド』のベーシストは、4和音という制約、特殊なメンバー構成という制約、さらにはベース・ラインのセオリー。

    どれからも不自由さを感じません。

    制約を乗りこなす解放的なベース・ラインと言えるでしょう。

    今後ぜひ参考にしようと思います!

    さて今回はファミコンの『ワギャンランド』を喫音してみました。

    すっかり寒くなりましたが、体調に気をつけて、ゲームと音楽を楽しんでいきましょう!

    それではまた来月までご機嫌よう。

    (※1)
    ^  “おんがくのおねえさん”は“クラッシュ なおみ”と“ストロング よしえ”。当時ゲーム業界ではスタッフの引き抜きが多く、一風変わった名前でクレジットすることで対策していたんだとか。“ストロング よしえ”の正体は荒川美恵先生。ワギャン以降も『鉄拳』シリーズや『マリオカートアーケードグランプリ』、『太鼓の達人』などナムコ開発のゲームに数多く携わっておられます。

    (※2)
    ^  後続の作品ではほかにも“モザイク当て”と“数字探し”のミニ・ゲームが追加されました。どれもおもしろいのでお酒のお供に最適かなと……。

    (※3)
    ^  あくまでも筆者主観のセオリーです。

    (※4)
    ^ 特に同じコード進行が続く楽曲は難しいです。

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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