GEAR
近年急速に認知度を高め、気鋭のベーシストたちの足下を黒く染め上げている国産ペダル・ブランドSONIFIX。一切の装飾を排した漆黒の筐体には、現代のアンサンブルに直結する次世代の低音哲学が宿っている。本特集では、新機種を含めた現行モデルの解説と、日本を代表するセッションマン・二家本亮介による試奏レビューでそのポテンシャルを検証。妥協なきサウンドの真髄に迫っていく。
AURION
Bass Preamp / Overdrive
現場主義を突き詰めた新感覚歪みペダル

新進気鋭の若手ビルダーいとう氏によるブランドSONIFIX。ベーシストでもある同氏が理想のベースの歪みを追求して生み出した“オーバードライブ3部作”のうち、AURIONは原音のニュアンスを生かしつつ、音に厚みや艶を加えることができる、いわゆるナチュラル・オーバードライブだが、歪ませること自体が目的なのではなく、アンサンブルに馴染ませるとか、ベースの音色自体を太く立体的にするといった、極めて現場主義的な目的を達成するためのアイテムであり、オフィシャルの言葉のとおり“歪みの質感で音を作るプリアンプ”といえるだろう。
6つのコントロールのうち、下段のLow/Character/Toneはいずれもウェット(歪み)成分のみに効く仕様となっており、Lowは単なる低音域の増量ではなく、膨張感やフィット感を、CharacterやToneも歪みの質感や抜け感をコントロールする機能という印象だ。上段のBlend/Level/Driveのうち、Levelは単なるウェット成分のレベル調整ではなく、上げるほど歪み成分の存在感や硬質なプッシュ感を増す音色変化の特性を併せ持つ。
トータルでのEQ機能がないのも特徴だが、どのノブも効果が有機的かつ相互に作用する面がある。そのため、限りなくクリーンに近い浅めのサチュレーションから、フレーズの輪郭を明確にプッシュする濃密なオーバードライブまで、実に多彩な音色表現を可能にしてくれる。

Specifications
●コントロール:ブレンド、レベル、ドライブ、ロー、キャラクター、トーン、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9Vアダプター●外形寸法:94(W)×123(D)×57(H)mm●重量:412g●価格:38,500円
GRAVION
Modern Bass Overdrive
“モダン”を刷新する次世代型オーバードライブ

昨今のシーンに急速に浸透しつつある“歪みありきのモダンなベース・サウンド”をSONIFIX流にアップグレードさせ、絶妙なバランスでベース本来の重心や低音域の量感を損なわずに深い歪み量と明瞭な抜け感の両立を可能にするGRAVION。コントロールはMaster/Blend/Level/Driveという4つのノブと、Tone/Hi/Lowからなる3つのスイッチで構成される。
3つのスイッチはそれぞれ3ポイントで、例えばToneは標準的なNormal、輪郭を強調するEdge、なめらかさを重視するWarmを選択できるなど、プリセットEQやモード切替のように機能するが、選択するモードや歪みの深さなどによって各コントロールが相互に作用する傾向もある。各スイッチはちょっとしたニュアンスの違いを選択できる面もあれば、歪みの根本的な質感や方向性を切り替えるといった面も兼ね備えているため、セッティングにはじっくりと取り組みたいところだ。
GRAVIONとAURIONはコントロールだけでなく内部の回路構成もまったく別物で、表面的な共通点は少ないように思えるが、トータルでのEQ機能がなく、3つのスイッチがウェット(歪み)成分にのみ機能するとか、Levelが単なるレベル調整ではなく歪みの存在感や抜け感にも作用するといった設計思想に於ける共通点が多々ある。両機種の音色の構築方法は似ていて、方向性が異なるとはいえ音色バリエーションは実に多彩だ。

Specifications
●コントロール:マスター、ブレンド、レベル、ドライブ、トーン・スイッチ、ハイ・スイッチ、ロー・スイッチ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9Vアダプター●外形寸法:94(W)×123(D)×57(H)mm●重量:415g●価格:38,500円
NIKAMOTO’S IMPRESSION
– AURION & GRAVION
どんなセッティングでも芯のある歪みが作れる。

普段のライヴやレコーディングでは、リアルのベース・アンプは使わずにアンプ・シミュレーターを使っています。キャビネット・シミュレーターは空気感が出せる反面、位相感が悪くなるのであまり使わないですね。個人的にはベースの音色がクリーンすぎると浮き過ぎたり、ローがもう少し欲しくなったりするので、少し滲ませてアンサンブルに馴染むようにするためにもオーバードライブなどの歪みエフェクターを使っています。音作りの必須アイテムでもありますね。
AURIONはブレンドを最大(ウェットのみ)にしても原音からニュアンスが離れないですね。Toneはジャリジャリ感が増して、Characterは歪みの質感が変わる感じですね……音色のバリエーションは多彩だけど個人的にはあんまり歪ませ過ぎずに常時ONで使いたいかな。少し歪ませる際もLowを上げれば膨らみ過ぎずにロー感が加えることができるので使いやすいと思います。
GRAVIONはモダン系のオーバードライブですね。最近は作家さんがこういう音でデモを作ってくることも多くて、需要が高いんですよ。スイッチはNormalから始めましたけど、一発で音色を劇的に変えられるのが面白いですね。ここを切り替えるだけでもいろいろと音作りを追い込めそうです。太くて温かい系の音色も、高い音域がジャキジャキ言ってるような激歪み系の音色も作れるけど、どれも芯がある感じがとても良いです。Levelの位置で歪みのニュアンスが結構変わりますね。こういうのはあんまり馴染みがなかったけど、慣れれば使い勝手が良いのかもしれないですね。
AXYON
Bass Preamp / Overdrive
ベース用プリアンプを再定義した至高の逸品

SONIFIXのオーバードライブ3部作のラストを飾るAXYON。長い開発期間を経て完成した本機は、オールドスクールなベース・プリアンプが持つ、ベースらしい存在感やキャラクターが大きく加わる感覚をSONIFIX流に再構築し、現代的で扱いやすいサウンドへと昇華させたモデルだ。不要な帯域を整理した心地よいドンシャリ感を持ちながらも、サチュレーションによって生み出される密度の高いミドルを付加することで、原音と剥離しない絶妙なバランスを実現している。そこにキメ細やかで有機的な歪みを組み合わせることで、確かな存在感と弾き手のニュアンスを両立した、現代的で扱いやすいサウンドに仕上げている。
コントロールはMaster/Blend/Drive/Low/Toneという5つのノブと、Body/Edgeのふたつのスイッチで構成されている。それぞれのスイッチはBoostとNormalの2択切替(実質的にはオン/オフ)となっており、Bodyは中音域の押し出し感や量感、歪み感をブーストさせ、Edgeはギラっとした高音域の歪み感をブーストすることでアタックやフレーズの輪郭を明確にする効果が期待できる。LowとToneはAURIONと同様にウェット(歪み)成分のみに効き、歪みそのものの質感を追い込む仕様となっており、マスターEQ機能は搭載されていない。マスターEQが必要な場合は次ページのAdd Pre搭載モデルを選択しよう。

Specifications
●コントロール:マスター、ブレンド、ドライブ、ロー、トーン、ボディ・スイッチ、エッジ・スイッチ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9Vアダプター●外形寸法:94(W)×123(D)×57(H)mm
●重量:418g●価格:38,500円
NIKAMOTO’S IMPRESSION
– AXYON
ベーシストみんなが好きそうな音色だと思う。

AXYONはどちらかというとAURION寄りのキャラクターで、歪ませ過ぎずに常にオンで使いたいモデルですね。自分のボードに入れるならそういう感じでほんの少し歪ませてロー感を埋める感じで使いますかね。
AURIONはオーディオ寄りの綺麗な音色のイメージがありましたけど、AXYONはコントロールを全部センターにしても良い音って感じで、ベーシストみんなが好きそうな音色だと思います。とても気に入りました。セッティングによってはジャキジャキ感が多めのモダンな音色にもなるしバリエーションが豊富ですよね。ふたつのスイッチは極端に効き過ぎず、実用の範囲内なのも好印象です。TONEは歪みの倍音の量がコントロールできる感じで、ニュアンスが細かくコントロールできる印象ですね。
AURIONとGRAVIONよりも操作性が直感的な印象があります。開発に時間がかかった面が功を奏しているのかもしれませんが(笑)、洗練されているというか完成度が高いというか……多くのベーシストが“おぉっ!”って思うんじゃないかな。(次で紹介の)Add Preは付いていればいじるかもしれないけど、AXYONに関してはAdd Preなしでも良いかもしれないです。それくらい欲しい音色がすぐ作れるし、コントロールをいじらずに好みの音色が出せました。
Add Pre
3-Band EQ Module
1台で音作りを完結させるアドオン・モジュール

二家本氏をはじめ複数のプロの意見を踏まえて周波数帯域を決定し、SONIFIXが開発したEQ拡張モジュール。KarDianの協力のもと製品化された。Bass(80Hz)/Mid/Treble(4kHz)の3バンドEQで、Midは300/600または750(内部Dipスイッチにて設定)/1.2kHzの3ポイントをスイッチにて切り替え可能。
AXYONを含むSONIFIX製オーバードライブ3機種は、歪みの質感そのものを追い込むことで帯域バランスを整え、EQに頼りすぎることなく音色を成立させる設計思想だが、1台で音作りを完結できる利便性と現場の声を反映して当初からADD Preを搭載する構想があり、既発のSONIFIXユーザーでも追加オプションにてAdd Preを搭載できる。物理的スペースさえあれば他社製エフェクターでも搭載可能とのことだ。

Specifications
●コントロール:ベース(80Hz)、ミッド、トレブル(4kHz)、ミッド周波数切替スイッチ(300Hz / 600or750Hz 内部スイッチ切り替え / 1.2kHz)●価格:SONIFIXペダルへ搭載 : 11,000円、他社製ペダルへの加工 : 13,000円、ADD PRE搭載版3機種 : 49,500円
NIKAMOTO’S IMPRESSION
– Add Pre
さらに音色を追い込みやすくて使いやすい。

AURIONとGRAVIONは以前にもお借りしたことがあって、位相感がとても良くて、これまでのオーバードライブとは明らかに違って好印象でした。ただ劇伴のレコーディングとかだと曲調が多彩で竿の持ち替えも多くて、それに合わせてサッとローを上げたい場面もあったりして、そういう現場では使い慣れてる機種に戻したという経緯があって……そのときにマスターEQを付けてほしいって要望を出したんですよね。今回それが実現したと(笑)。
AURIONのLowでも“ロー感”は増えるんだけど、ADD PreのBassはストレートにロー自体が上がる印象ですね。80Hzっていう設定もバッチリです。変化がわかりやすいのって結構重要なんですよね。作家さんやエンジニアさんにも納得してもらいやすいので。
MidとTrebleもかなり可変幅が大きくて、高域の抜け感とか中音域の質感をかなり細かく設定できますね。帯域設定が絶妙で痒い所に手が届くというか。Midは600Hzだったらゲイン下げめで、750Hzだったら上げめで使いたくなるかな。個人的にはAdd Preがあると安心だし、さらに音色を追い込みやすくて使いやすい印象があります。
TOTAL IMPRESSION
どのモデルも芯がなくならずに研ぎ澄まされている。
世の中のオーバードライブってパッシヴ・ベースだと効きが良いけど、アクティヴ・ベースだと潰れちゃってイマイチっていう機種が多い傾向があるように感じていて。でも、SONIFIXはどのモデルも潰れる感じがまったくなくて、受けきってくれる印象はありますね。
歪み系ってどうしてもほかの楽器と干渉してローがないだの、聴こえないだの、埋もれてるだのって言われがちですけど、SONIFIXはどのモデルも芯がなくならずに研ぎ澄まされていて、ベースらしい存在感を発揮できるように考えられていると思います。この3モデルがあればベースの歪みキャラクターのほとんどを網羅していると思いますし、これだけの内容なのに結構リーズナブルですよね。これにMuteスイッチが付いたらレコーディングですぐに導入したい感じです(笑)。
シンプルなルックスでデザイン性が高いのもSONIFIXの魅力ですよね。プレイヤーのジャンルを問わず、多くのベーシストから愛されている背景には、この無骨な筐体デザインも一因としてあると思っています。こういった面も踏まえ、唯一無二の路線を貫いたオリジナリティに溢れるブランドだと思いました。
Profile
二家本亮介(にかもと・りょうすけ)●山口県岩国市出身。14歳でベースを始め、高校卒業後に音楽学校メーザーハウスに入学。2012年に有形ランペイジでデビュー。その後、世界的ギタリストのリー・リトナーや上原ひろみとも共演し、現在国内ファースト・コールのサポート・ベーシストとして、近年では、ずっと真夜中でいいのに。、Mrs. GREEN APPLE、Reol、WANDSをはじめ、乃木坂46、King & Prince、SnowMan、『スプラトゥーン3』、『龍が如く8』のサントラなど、ジャンルレスに多くの楽曲に参加している。
X Instagram
製品に関するお問い合わせは、SONIFIX公式HP内のコンタクトフォームより。

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