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BOSS GX-100 feat. 長谷川カオナシ(クリープハイプ)

  • Text:Makoto Kawabe
  • Photo:Takashi Hoshino

自分がライヴで使っているエフェクターの機能は、
これが1台あるだけでまかなえる。

GX-100の注目機能を把握したところで、長谷川カオナシによる試奏レポートをお届けしよう。

“普段のライヴでは、エフェクターは指弾き用とピック弾き用の歪みを足下に置くくらいであまり使用していなくて、マルチ・エフェクターに本格的に触れること自体も実は初めて”だという長谷川による本機の評価はいかに!?
オリジナルのエフェクト・チェインも2パターンを作成してくれたので、これについても解説してもらった。

アンプの立体感や空気感が
うまく表現されていますよね。

━━第一印象について教えてもらえますか?

 今回はプリセット・メモリーは使わずに、まっさらの状態からエフェクト・チェインに各エフェクトをドラッグ&ドロップで音色をチェックしていったのですが、かなり直感的に、簡単に操作できるのが印象的でした。

━━まさに、本当にすぐ使いこなしていましたよね(笑)。気に入った音色はありましたか?

 オーバードライブが馴染みのある、知ってる音色という感じでよかったです。それから、歪みのあとにノイズ・サプレッサーを使ってみたのですが、ノイズ・サプレッサー自体、初めて使ってみたんですよね。演奏していないときのノイズをカットできて、すごく便利だと思いました。

━━そういった、今まで触れてこなかった新しいエフェクターとの出会いもマルチ・エフェクターを使う醍醐味ですよね。アンプの各パラメータを操作しながら入念に音色をチェックしていましたが、アンプについてはいかがでしたか?

 立体感や空気感がうまく表現されていますよね。アンプはマイクの距離や位置も変えられるんですけど、すごく細かいところまで調整ができていいですね。僕がGX−100を導入するとしたら、アンプの部分が主力になりそうという気さえしました。

━━長谷川さんが本機を使うとしたらどんな場面で活用したいですか?

 ライヴだったらエフェクト機能を最大限に活用して飛び道具として使うと思いますが、宅録の用途にも使いやすそうだなと思いました。家でデモ作りとかするときはプリアンプのセクションが重宝しそうです。アンプ・シミュレータはDAW上だと重いソフトもあるので、こうして外部の機材でエフェクト部分を完結できるのはメリットですね。

━━ルーパーの機能にも興味を持っていたようですが、いかがでしたか? 4小節ほどのベース・ラインに、歪んだ音色でメロディ・ラインを足して、最後に空間系のエフェクトをかけたコードなどをダビングしていました。

 ルーパーは普段は使わないですけど、これは試しておかないといけない機能だなと(笑)。3和音とノイズしか鳴らせないようなファミコンのアクション・ゲームの曲っぽくできるかなと思って、遊んでみようと思いました。GX−100だけで別々の音色を重ねられるのがすごく楽しい。いろいろな音色を出したいときにそれを1台で完結できるので、ソロ・パフォーマンスをしたい人にとってはすごく便利に使えると機能だと思いました。

━━そのほかに気に入った機能はありますか?

 今日まずは最初にチューニングから試させてもらったのですが、チューナーは弦を1本ずつチューニングするモノフォニック・チューナーだけでなく、開放弦を一度に全部鳴らしてチューニングできるポリフォニック・チューナーも選べることに驚きました。ポリフォニック・チューナーに触れたこと自体初めてだったのですが、これはライヴでもかなり実践的に使えそうですね。

━━さて今日はふたつのオリジナルのエフェクト・チェインも作ってもらいました。まずは、ひとつ目のエフェクト・チェインについて解説してもらえますか?

長谷川が作成したひとつ目のエフェクト・チェイン

 宅録をいい音で録るためのプリセットです。あんまりピッキングのニュアンスを消したくないけどもペラッとしたくもない、という意図で作っています。アンプ感も出したいけど、個人的にはスタジオによくある大型ベース・アンプの音色は苦手で、でもあのふくよかさは出したいところでもあって……という雰囲気をラインで出そうとするとこういう感じかなと。いい感じにアンプ感は出せたと思いますけど、むしろ実際にアンプで鳴らすよりもスッキリしていて扱いやすいかもしれないですね。オーバードライブは曲の展開や必要に応じてフットスイッチでオン/オフする前提です。ノイズ・サプレッサーはオーバードライブを使ってるときに手を放しても大丈夫なように保険的に使っています。まぁ、あんまり深くはかけてないですけどね。

各エフェクトのパラメータ
(※BOSS TONE STUDIO画面)

━━ふたつ目のエフェクト・チェインについてはいかがですか? ふたつの音色のラインを作り、これらをミックスして音作りをしています。

長谷川が作成したふたつ目のエフェクト・チェイン

 GX−100にラインナップされているエフェクトをたくさん詰め込んだ感じのプリセットで(笑)、曲中でちょっとだけ目立ちたいところで使えるような音色を目指して作りました。原音にはコーラスをかけて派手さを出しつつ、うっすらハモを入れてみたりしたんですけど……本当は一日中いじり倒してもっと作り込みたい雰囲気の音色ですね(笑)。空間系の音色は歪ませたくなかったので、おっしゃるとおりDIVIDERを使ってルーティングを歪ませるラインと空間系のラインに分けてミックスしているのがポイントです。かなり歪ませていますけどサッとノイズを消せるノイズ・サプレッサーは本当に優秀ですね。こういう複雑なルーティングを個別のコンパクト・エフェクターでやろうとするとけっこう大変ですけど、GX-100だとすごく簡単にできちゃうのがすごくいいなと思いました。

各エフェクトのパラメータ
(※BOSS TONE STUDIO画面)


総評

 自分がライヴで使っているエフェクターの機能は、これが1台あるだけでまかなえるなと感じました。USBオーディオ・インターフェイスとしても機能するので、家でベースを録音するときにも重宝しそうです。自分があんまり足下にエフェクターを並べない理由のひとつに、“音色をいろいろと試そうとすると組み替えが大変”というのがあるんですけど、GX−100なら組み替えが簡単でたくさんの音色を気軽に試せるし、そのまま本番クオリティで使えるのが強みだと思いました。タッチ・パネルで、より直感的に操作できるのもいいですね。自分が学生の頃のマルチ・エフェクターには、豊富な音は出せるもののどうしても奥行きがなくて、いかにも“マルチっぽい音色”がするという印象があったんですけど、GX−100はアンプの空気感もリアルに表現されているし、アンプを通して出した音もGX−100を通すと少し上品さをまとった、まとまった感じの音になる気がして、これがかなり好みでしたし、ビックリしましたね。

 それから何度も触れていますが、やはりノイズ・サプレッサーはすごくよかったです。地味なんですけど(笑)。ライヴでたまにファズを使うんですけど、オンにしたまま待機するときとかすごく気をつかうので、これがあったらかなり助かりますね。

 エフェクターを多用する人はもちろんですけど、自分みたいにあまりエフェクターを多用しない人でも上質な音色を出すために使えるマルチ・エフェクターだなと思ったので、そういう人にはぜひ試してほしい一台です。いろいろなエフェクターの機能や効果を研究するのにもすごくいいですよね。

長谷川カオナシ(クリープハイプ)

Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2021年11月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。Bass Magazine Webにて“レトロゲーム”のベースの世界を案内する『クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂』を連載中。

◎Information
長谷川カオナシ
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