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【第128回】全楽器共通! 曲の覚えかた② 頭の中に“曲の見取り図”を作る方法 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

“曲をなかなか覚えられない”という人向け『曲の覚え方』第2弾です。

前回の動画をご覧になってない方はまずこちらからご覧ください。

曲を覚えるときは“まず全体像を把握するアプローチ”がおすすめです。ひたすら繰り返して弾いて覚える方式の“耳と身体を使う感覚的な覚え方”は音楽的なアプローチではあるものの、それだけじゃなく“論理的な覚え方”もすると頭のなかに曲の見取り図ができて覚えやすいんですね。前回いくつかのステップを説明しました。そのやり方で“曲の大枠の形を把握”したら、少しディテールの情報を加えます。

まず曲の始まり方をはっきりさせます。曲の始まりが、たとえばドラムのカウントなのか、フィル・インなのか、ピアノだけなのか、というようなことです。そしてカウントならシングル・カウントなのかダブル・カウントなのか、フィル・インなら何拍のフィルなのかを把握(ドラマーに確認)します。ここが曖昧だと、曲の頭からつまづいてしまうので大事です。

次に、自分が弾く場所、弾かない場所を把握します。曲頭から入るのか、それともBメロから入るのか。あと、たとえばギター・ソロの後のサビは抜けて7小節後に復帰という展開があるなら、それも把握します。

また、曲のダイナミクスの流れも把握します。フォルテで始まるのか、ピアニッシモで始まるのか。1番のサビから盛り上がるのか、それともまだ抑えめなのか。2番のAメロは1番のAメロと比べてどうなのか。こういった、音量の強弱やそれに伴った音色の変化を、大きな流れとして把握します。

そして当然、曲の終わり方も把握しましょう。インテンポ(テンポを保つ)のまま終わるのか、リタルダンド(だんだん遅く)するのか? もしリタルダンドするなら、誰がリードするのか? 最後の音は伸ばして静かに切るのか、それともジャーン!と1音打つのか?  こういうことを曖昧にせず、はっきりさせておきます。終わり良ければすべて良し、とまでは言えないかもしれませんが、逆に終わりがダメだと曲全体の印象が損なわれてしまいます。

ここまでで、だいぶ曲の形が見えてきました。そろそろベース・ラインに取り掛かりたいところですが、その前にコード進行を把握します。まあ実際にはベース・ラインとコードはほぼ同時進行で覚えるかもしれませんが、僕はコード進行の方を優先します。なぜかというと、もし本番でフレーズを忘れてしまったとしても、ほとんどの曲の場合、コード進行・構成・各セクションのグルーヴに沿って演奏できるなら、“ベーシストとして最低限の役目”は果たせるからです。

さてコード進行を覚えるとき、前回説明した“キーを把握する”ステップが役立ちます。どのコードがトニック(キーの中心)か、トニックと他のコードの相対関係はどうなっているか? これらを知らずに、ただ闇雲にCとかDmとかFとかのコードネームを覚えようとすると大変です。でも、こういうときに理論が役立ちます。それぞれのコードの相対関係を理解していれば、しかもそれが指板の上に見えるレベルで感覚に落とし込んであれば、コード進行を覚えるのはだいぶ楽になります。これは、トニックをI(1)として、それ以外のコードをトニックからの度数で(数字で)把握するやり方ですが、これはまた別の機会に説明します。

コード進行を把握したら(把握しつつ)ベース・ラインを覚えます。ここでも、フレーズの音とコードのルートとの相対関係とか、基本的なリズムの形とかを理解しながら覚えると覚えやすいです。

それと、曲のメロディー。これは最低でも口ずさむレベルでは覚えておくべきだし、時間がない場合でも歌い出しや歌い終わりなど重要な箇所だけでも覚えておくべきです。

また、他の楽器のフレーズも覚えておくといいです。特に、ベースの出入りとか、セクションが切り替わるきっかけとなるフレーズを覚えておくと、曲の構成を覚えやすくなります。 次に曲を覚えるときは、こんなふうに“まず全体像を把握して段々ディテールに移っていくアプローチ”でやってみてください。

石村順でした! 

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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