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【第127回】全楽器共通! 曲の覚えかた① 曲をなかなか覚えられない人は必見です 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

“曲をなかなか覚えられない”という人、このやり方でやってみてください!

割とよく相談されるのが、“曲をなかなか覚えられない”という悩みです。皆さんはどうですか?

“曲を覚えるとき、どういうプロセスで覚えていますか?”と尋ねると、“音源を何回も聴く”とか“音源に合わせて何回も演奏する”という人が多い印象です。このアプローチそのものは全然悪くないし、耳や身体を使って感覚で把握する、というのはむしろとても音楽的なプロセスだと思います。

ただ、そういう人に例えば“じゃあ2番のBメロから弾いてみよう”と言うと、2番の最初からでないと弾けなかったり、そもそも曲の最初からでないと弾けなかったり、ということがときどきあります。これは、感覚的に覚えているだけだからそうなるのではないかな、と思います。なので、曲を覚えるときは、曲の構成やコードとコードの相対関係など、論理も使って覚えるといいです。すると、頭の中によりはっきりした曲の見取り図ができて覚えやすいと思います。

ちなみに僕が曲を覚えるときにどうしているかというと、“ディテールよりも先に全体像を把握する”アプローチをしています。いきなり曲頭のフレーズから覚え始めるのではなく、まず全体像を把握するところから始めて、だんだん個別のことを把握していきます。もう少し具体的に説明しましょう。

まずは曲調を把握します。

もう少し具体的にいうと、“その曲の基本的なグルーヴは何か?”ということです。ファンク系か、8ビート主体のロック系か、古いスタイルのR&Bか、レゲエか、みたいなことです。そして、イーヴン(ストレート)なリズム(ハネてないリズム)なのか、かっちり3連でハネているシャッフル・フィールなのか、それとも微妙なハネ具合なのか。

そしてテンポも重要です。テンポも含め、ここまではリズムの話ですね。音楽の土台はリズムなのでリズムから把握します。

そしてキーを特定します。その曲のトニック(中心となるコード)はどれか、ということです。これがわかれば、このあとコード進行を覚える段階で、“すべてのコードをトニックとの相対関係で理解できる”ので、ただひたすらコードを出てくる順番でひとつひとつ覚えるよりも、より深く理解できるし覚えやすいです。

そして、キーの次に曲の構成を把握します。これは例えば、イントロから始まって、Aメロ、Bメロ、Cメロ、間奏、2番の A、B、C、ギター・ソロ、再びCを2回繰り返して、エンディング、というようなことです。要するに、曲のセクションごとに名前をつけるわけです。このセクションの名前のことを、譜面ではリハーサル・マークと言います。名前の付け方にルールはありませんが、ポップスでは上記のように名前をつけることが多いです。ビッグ・バンドや歌謡曲の譜面を見ると、曲の始まりがAで、そこからB、Cと順番につけていき、極端な話、M、N、O、Pみたいなところまである譜面もありますが、個人的には同じモチーフのセクションには同じアルファベットを割り振って、1Aと2Aと3Aのように数字で区別したほうが、曲の構成を覚えやすいと思います。

同時に、セクションごとにグルーヴが変わる場合はそれも一緒に覚えます。Bメロだけハーフ・タイムのフィールになる、2番のAメロは白玉(2分音符や全音符などの長い音符)になるとか、そのようなことですね。

また、セクションごとの小節数も把握します。たとえば、イントロ8小節、Aメロ8小節、Bメロ8小節、Cメロ12小節、間奏4 小節、2Aは1番と違って9小節、みたいな感じです。

こうやって、まず最初は、曲の構成と、それぞれのセクションの小節数や特徴といった“大枠の形”を把握して覚えます。 この続きは次回の第2弾で説明します。

石村順でした! 

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石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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