UP

坂本竜太が弾くゲンツラー・ペダル

  • Photo:Takashi Yashima

現場主義の先見性と高い技術力を惜しみなく投入した製品で、革新的なベース・アンプを送り出してきた米国産ブランド、ゲンツラー。このたび、同社初のエフェクト・ペダルが2種登場した。その実力を、さまざまな現場で活躍する敏腕ベーシスト坂本竜太の試奏を通して紐解こう。

What’s Genzler?

初のエフェクト・ペダル発表に至るゲンツラーの歴史を振り返る。

 ゲンツラーの創業者であるジェフ・ゲンツラーは、もともとベーシストとして活動していた人物で、その活動のなかで“よりスマートで信頼性の高いアンプ・システムの必要性”を感じ、1984年にアメリカ・アリゾナ州フェニックスにてアンプ・ブランド、“ゲンツ・ベンツ”をスタートさせる。設計チーム全員がミュージシャンとしての経歴を持ち、“ミュージシャンがミュージシャンのために作り上げる”ことを理念にしたゲンツ・ベンツの製品は、高い真空管技術と最先端のアンプ技術による革新的なもので、ジェフの“アンプ・システムはベース自体のトーンに色づけしてはならず、透明な存在であるべき”との考え方を反映していた。ベース・アンプに限らずギター・アンプやPA用スピーカーなども手がけ、多くのプロ・ミュージシャンに支持されたが、ゲンツ・ベンツは2015年に惜しまれつつ生産を終了してしまう。

 しかし、アンプ作りへの情熱を持ち続けたジェフは、ニューヨークを拠点に新たなブランド、ゲンツラーを立ち上げる。ゲンツラーでは、“次世代を担う製品を作ること”をコンセプトに製品開発に取り組み、数個の小型スピーカー・ユニットが垂直に配置される“ラインアレイ・システム”を世界で初めてベース用キャビネットに搭載したBA12-3を始め、高音質で実用性の高い製品を送り出している。

 このたび、ゲンツラー初のエフェクト・ペダルとして登場した4 ON THE FLOOR(オーバードライブ)とRE/Q(イコライザー)は、ジェフと、かつてゲンツ・ベンツの主要エンジニアとして活躍していたアンディ・フィールドのコラボレーションによって生まれたものだ。オーバードライブとイコライザー/フィルターのコンセプトは、ゲンツ・ベンツからゲンツラーに至るまでに送り出してきた数々のバラエティー豊かな製品での実績を核とし、さらに現代のベーシストによるリクエストも加味して製作。両機ともにハイパス/ローパス・フィルターを装備しているのが特徴で、より直感的なサウンドメイクを実現している。そのほか、アンプ製作で培ってきた頑丈なデザインと工業製品的な側面を引き継ぎ、高品質な素材や高い組み込み技術、扱いやすいレイアウトが合わさることで、従来のゲンツラー製品と同様の高いクオリティを実現している。

MG350-BA10 Combo
ひとつの10インチ・ネオジウム・ウーファーと、縦に4基並んだ2.5インチ・ネオジウム・ラインアレイ・ドライバーが、同一上に並べられているのが最大の特徴。これにより、ベース・アンプの正面をハズれた位置に立っていても、モニターしやすくなる。

4 ON THE FLOOR
Classic Bass Overdrive Pedal

1970年代の真空管アンプを彷彿させる歪み

 4 ON THE FLOORは、4段階でドライブの深さを切り替えることができる、オール・アナログ回路のオーバードライブ・ペダルだ。1970年代の伝統的な真空管アンプ回路のエミュレーションをもとに設計されており、これまでのゲンツ・ベンツ〜ゲンツラー製品に用いられてきたいくつかの異なるオーバードライブ・トーンを内蔵。ドライブ感度の切り替えスイッチと歪み量の設定次第ではファズに近い領域まで歪ませることができる。歪みセクションは、歪みの深さとそのヴォリュームを個別に調整でき、原音の信号量をコントロールするクリーン・ヴォリュームを備えることで、ベースらしい重心の低さをキープして歪みを得ることができる。トーン・コントロールはハイパス/ローパス・フィルターを装備し、ハイパスは歪みセクションに入る際の低周波帯の量を、ローパスは歪みセクション後の高い倍音の量を調整する。

 電源は9~18Vで動作し、極性を自動判定する安心設計。そのほか、軽量なアルミ・シャーシや堅牢なスイッチの使用感も良い。

①Filters
トーン・コントロール・セクション。ハイパスでは設定した値以下の低域が、ローパスでは設定した値以上の高域が、それぞれカットされる。エフェクト音のみに作用する。

②Drive Sensitivity
ドライブつまみ、ドライブ・ヴォリュームつまみと連動した、感度切り替えスイッチ。必ずしもパッシヴ/アクティヴ・ベースでの切り替え用というわけではない。

③Drive Select
4段階で歪みの深さを切り替えることができるスイッチ。伝統的な真空管回路に見られるオーバードライブの質感を忠実に再現する。

④Drive & Clean
歪みの深さを決めるドライブ、歪みの信号量を司るドライブ・ヴォリュームに加え、原音の信号量を調整するクリーン・ヴォリュームを装備。サウンドのロー感を操ることができる。

Specifications
●コントロール:ハイ・パス、ロー・パス、ドライブ・センシティビティ・スイッチ、ドライブ、ドライブ・ヴォリューム、クリーン・ヴォリューム、ドライブ・セレクト、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9V~18Vアダプター●外形寸法:127(W)×104(D)×59(H)mm●重量:450g●価格:オープンプライス(市場実勢価格:29,700円前後)

Sakamoto’s Impression

腰高にならずに重心を保ったまま歪む。

 名前のとおりクラシックなアンプ、1970年代の感じがするね。歪みの質感が、70年代のソウルとかで、アンプをエアーで録っている、あの音。これはいいね。アンプっぽい。それこそ、ハーモニクスを鳴らしたときにすごく出てくる。

 歪みのセレクトは1から4で段階はあるけど、1がすごく使えるね。歪ませるというよりは、オケのなかでちょっと埋もれるなっていうときにほんのちょっと足しておくと、グッと前に出てくれる。コンプで潰れるのってイヤでしょ。そうじゃなくて前に出る感じ。

 ドライブ・セレクトを4とかにして、行くとこまで行けばファズっぽい感じでも歪んでくれる。クリーン・ヴォリュームがあるから腰高にならずに重心を保ったまま歪んでくれるね。ドライブのコントロールはドライブとドライブ・ヴォリュームのふたつあるのがいい。ドライブでめちゃくちゃ歪ませて、ドライブ・ヴォリュームを下げて、思いっきり歪ませた成分をほんの少しだけ足すという使い方もできる。ハイパス/ローパスのフィルターも、ちゃんといいカーブになっていてコントロールしやすいんじゃないかな。

坂本竜太のオススメ・セッティング

70年代アンプの感じだけど、わりとクリーンで使うイメージ。ハーモニクスもキレイに出て、ソロとかのタッチもよく出る。
ファズ的な歪み。歪ませてもG音がちゃんと鳴るのがいいね。ロー感を失わずにクラシック・ロックの感じが出せる。

▼ 続きは次ページへ! ▼