プランのご案内
  • GEAR

    UP

    【お宅のエフェクト・ボード拝見!】#4 − HIDEYAN(Calmera)

    プロ・ベーシストのエフェクター・ボードをフィーチャーし、ベーシストの“最新足下事情”を徹底検証していく当連載企画。第4回は8人組ジャズ・バンドCalmeraでの活動のほか、多くのサポートやセッションもこなすHIDEYANが登場! エレキ・ベースとアップライト・ベースの使い分けを実現させる、こだわりに溢れたエフェクト・システムを検証していこう。

    “二刀流”を具現化する
    緻密なエフェクト・コンビネーション

    HIDEYANのエフェクト・ボード。上段右から、ズーム製MS-60B(マルチ・エフェクター)、フリーザトーン製PT-1D(パワー・サプライ)。中段右から、TRIAL製HIDE PREAMP EQ-01(プリアンプ)、Vivie製Rhinotes(オーバードライブ)、SONIC RESEARCH製ST-300mini(チューナー)。下段右から、VOCU製Magic Switching&Loops(ライン・セレクター)、Limetone Audio製focus(コンプレッサー)、Inner Bamboo製D-Ⅱ(プリアンプ)。

     自らを“エンタメ・ジャズ・バンド”と称し、多彩なジャズ・サウンドを提示するCalmera。そのサウンドのカギはエレキとアップライトを使い分ける“二刀流”ベーシスト、HIDEYANのエフェクト・ボードにも隠されていた。

     ベースからの信号はまずVOCU製Magic Switching&Loops(ライン・セレクター)へと入り、ここから2系統へと分岐。1系統目の“マルチ”と記されているチャンネルはその名のとおりズーム製MS-60B(マルチ・エフェクター)のみを介している。MS-60Bは昨年末のツアーから導入したとのことで、スラップ時に浅めにコーラスやディレイをかける用途で使用するそうだ。その音色についてHIDEYANは“カントリー・ギターで使うようなライトなかかり方のエフェクトで使いやすいんです。ウチのバンドは音数も多いので、強くかかり過ぎると下の音域がなくなっちゃうんですけど、コレはちょうどいいかかり方にセッティングできますね”と語る。

     2系統目“オーバードライブ”と記されたチャンネルはLimetone Audio製focus(コンプレッサー)、TRIAL製HIDE PREAMP EQ-01(プリアンプ)、Vivie製Rhinotes(オーバードライブ)をループしており、主にスラップ用とのことだが、ループ内で各エフェクターのオン/オフを切り替えることもあるようだ。HIDE PREAMP EQ-01は音をロー〜ロー・ミッドに寄りに溜めたいときに使用する。“僕はエレキとアップライトを同じステージで使うんですけど、どうしてもエレキはアップライトのローには勝てないんです。だからエレキのほうに下の音域を足したいときはRhinotesをオフにして、HIDE PREAMPのみを使うこともあります”。続いて歪み専用機として用いられるRhinotesについては、“僕らはジャズ・バンドでありつつロック色の強い曲もあるので、その際コレの歪みで対応しています”と語ってくれた。Focusは長尺でのベース・ソロの際など、特に音粒のばらつきのコントロールが要求される際に使用される。以前は独立させていたが、スイッチを踏んだ際のクリップ音を抑制するために現在はループを介しているとのことだ。

     以上の2チャンネルをループしてMagic Switching&Loopsへと戻った信号は、メインのプリアンプとして使用するInner Bamboo製D-Ⅱ(プリアンプ)に接続。本機はA/Bの2チャンネルを擁しておりエレキとアップライトの2種類を使い分けるHIDEYANにとっては必需品とも言える。“竿が2本あるのでアンプ・ヘッド一個だとイコライジングができないんですよね。だから1系統を自己完結で独立させて音作りできるコレはありがたいです。チャンネル切り替えだけじゃなくて同時に鳴らすこともできるし、個性も強くてしっかりかかるから使い勝手もいいんです。優れものですね”。そしてD-Ⅱを通過した信号は最後にSONIC RESEARCH製ST-300mini(チューナー)を経由してアンプへと接続されるが、チューナーにもこだわりが込められている。“このチューナーは反応速度がめちゃくちゃ速くて、弾いた瞬間に音を判別するんです。アップライトを弾いた際、多くのチューナーは「頂点」の音で反応するんですけど、それだと正直遅い。この反応速度はアップライトやウッド・ベースのユーザーには特に適していると思います。まぁ、逆に速すぎっ!て思うこともありますけど(笑)”。

     “現在のCalmeraの活動ではこのラインナップで足りています”と語る本ボードは、飛行機での国内移動が増えたことを受け、持ち運びを重視して考案されたもの。エレキとアップライトの2本を運搬する必要があるため、必要最低限のペダル・ラインナップにまとめられている。現在はスーツケースを本ボードが入るよう改造し、そこに着替えや衣装なども入れて運搬しているようだ。

    Pick up!

    ズーム製MS-60Bで用いるエフェクトのひとつが“SLAPBACK DELAY”。本エフェクトについて、“長尺のスラップ・ソロでの3連・6連フレーズだと音が潰れがちになるので、より歯切れ良く聴かせるために使います。ディレイというよりは、リズム感を出すための味付け的な用途ですね”と語る。

    Inner Bamboo製D-ⅡはA/Bの2チャンネル仕様となっているが、上がエレキ用で、弦高を低くセッティングしていることで損なわれるロー感を補うイメージでツマミが設定されている。下はアップライト用で、ベースをカットしつつ、ゲインを必要に応じてブースト/カットすることで抜けを出しているようだ。

    ◎Profile
    ひでやん●1979年10月8日生まれ、大阪府出身。OverSkaDrives、Loco-Passionといったバンドで活動したのち、2010年に8人組のエンタメ・ジャズ・バンドCalmeraに加入する。またバンド活動と並行し、ジャンルを問わず数多くのアーティストのサポートのほか、テレビドラマやCM音楽への参加、またミュージカルでの生演奏と幅広い分野で活動を展開している。Calmeraは2021 年に結成15 周年を迎え、2021年5月12日に12thアルバム『誰そ彼レゾナンス』をリリースしている。2022年5月には、14日大阪・味園ユニバース、29日東京・キネマ倶楽部にて単独公演“ロックンロール・キャバレー”を開催予定だ。

    ◎Information
    Calmera:HP Twitter YouTube
    HIDEYAN:Twitter Instagram