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【BOSS】OCシリーズの系譜と未来——OC-5 feat. わかざえもん

  • Text:Akira Sakamoto
  • Interview:Zine Hagihara
  • Photo:Takashi Hoshino

OCシリーズの系譜についてわかったところで、ここからは自身のYouTubeチャンネルで演奏動画を多数投稿し、近年ではマキシマム ザ ホルモンによる世界初のバンド・フランチャイズ“コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)”にも参加するなど、多方面で活躍するスタジオ・ベーシスト=わかざえもんを迎えてOC-5の実力を検証していこう。普段はOC-2を愛用しているという彼女は、OC-5をどのように感じるだろうか。

WAKAZAEMON’s IMPRESSION

わかざえもん

新技術によって最新の音楽のなかで活躍できるように進化してる

━━普段はOC-2を使っているそうですね。どのように活用していますか?

 いろんな使い方をそのときどきでしていて。飛び道具的な感じでオート・ワウと一緒に使ったり、ディストーションと組み合わせて派手な音色にしてリード・プレイをしたりっていうときに使います。あとは、アンサンブルのなかでもうちょっとロー感がほしいなっていうときですかね。例えば少ない編成でギターがリードを弾いたりしているときに、ベースの低音感を増やすことでアンサンブルを支えるっていうやり方です。

━━BOSSのオクターバーはOC-3もありますが、やはり名機と呼ばれるOC-2が一番フィットするんですか?

 オクターバーを探しているときに、“OC-2はハンパない名機だ!”って聞いて。それでOC-2を見つけて……OC-3はOC-2よりも機能が多いじゃないですか。私、エフェクターを使い始めたのがちょっと遅くて、あんまり詳しくなかったんです。OC-2のほうがツマミも少ないし、使いやすいのかなって(笑)。エフェクト・サウンドそのものがカッコいいし、今では気に入っていますね。

━━なるほど。では、OC-5を触ってみてどのように感じましたか?

 まず、VINTAGEモードのサウンドが、OC-2を再現していることにものすごくびっくりしました。実際に音を出す前はまさかとは思っていたんですけど、ここまで忠実に再現しているなんて……。ここまでできるもんなんだって(笑)。OC-2の劣化版になっていないのがすごいなと思うんです。いろんな機能が増えると、そもそもサウンドのキャラクターが変わってきちゃったりすることもあるじゃないですか。そういったことはまったくないですね。
 OC-2って1オクターヴ下のエフェクト・サウンドが、“行ったれ!”って声を上げたくなるぐらいにカッコいいじゃないですか。そもそもサウンドそのものがカッコいいから人気があると思うんですけど、その形容し難い“カッコよさ”もそのまま。音を出してすぐ、“うん、これこれ!”って思うハズです。

━━OC-2は、サウンドはカッコいいものの、少しレスポンスが独特だったり、低音部で誤検出を起こすところがありますよね。

 そうそう。でも、OC-5のVINTAGEモードはサウンドがOC-2で、弾き心地がすごくよくなっているイメージ。ただ再現しているだけじゃなくてより進化しているんですよね。レイテンシーもないし、弾いていると違和感がなくて。ちゃんと原音のスピードに対してエフェクト音がしっかりついてきてくれますね。ハイ・フレットで弾いているときにレイテンシーがあるとよりわかっちゃうと思うんですけど、どのポジションで弾いてもなかったので、最新の技術の賜物だなって感心しました。
 あと、OC-5の場合は4弦の5フレット以下とかの低いところでもちゃんとオクターヴ下が鳴ってくれるんですよ。濁らないんですよね。“モワ〜”っと揺れることがなくて、ピタッとキレイな波形で鳴ってくれる感じです。音も濁らないしレイテンシーもないので、速いフレーズとかもしっかりついてきてくれますね。私はあんまり速弾きとかをするタイプではないんですけど、演奏したいフレーズに不自由することはないと思います。本当にいろんなタイプのフレーズにしっかりと対応する懐の広さがあるので、いろんなプレイをしっかりと受け止めてくれるオクターバーなんです。

━━1オクターヴ上を再生する機能が追加されたことに関してはどのように感じましたか?

 びっくりしたのが、VINTAGEモードでも1オクターヴ上を追加することができるじゃないですか。なんていうか、OC-2らしさを保ったままプラスの機能がついているというのが不思議ですごくおもしろいです。こういった新機能は、サウンドからインスパイアされて新しいフレーズや曲を思いつくわけで、すごく楽しいですよね。飛び道具っぽくほかのエフェクターを組み合わせたりするときは、よりいろんな組み合わせを試したくなりました。

━━ではPOLYモードについてはどのように感じましたか?

 VINTAGEモードよりも若干アクティヴ・ライクなサウンドで、ブリっとした感じの音なんですよね。どっちにも良さがあるので、VINTAGEとPOLYの音色の違いを使い分けるのもおもしろいのかなと。POLYモードは和音に対応するポリフォニックということで、ベーシストが和音のアプローチをすることも珍しくないと思うんですけど、和音の音を濁らずにエフェクトしてくれるので、素直にすごいなと思います。例えば、今まではオクターバー・サウンドで弾いているときに、高音でダブル・ストップを弾こうと思いついても、オクターバー・ペダルによっては演奏をためらうこともあったんですけど、OC-5ならしっかりとついてきてくれるっていう安心感があります。私、普段はあまり和音のフレーズは弾かないんですけど、たくさんやってみたくなりますね。

━━そうなんですね。

 あと、私はDTMで音楽制作をすることがかなり多いんですけど、OC-5にはダイレクト・アウトが付いているので、POLYモードでハイ・ポジションの和音を弾きながらドライ音を同時に収録して、それらをミックスしたり、個別にさらにエフェクトを掛けたり、卓上でできることがたくさん思いつくのもおもしろいですね。DTM時代のベーシストにも打ってつけのペダルなんじゃないかな。

━━ライヴと録音の両方で大活躍ですね。

 レンジ・ツマミを一番左にすると、和音の一番低い音にだけエフェクトがかかるっていう機能(=LOWEST)も、“どうなってんの!?”って思うぐらいに技術の革新を感じさせてくれて、本当に感動します。これって、例えば3ピースとかの人数が少ない編成のライヴで、ベースが高音やリードを弾いているときに、アンサンブルの低音感を損わずに弾けるってことですよね。いやあ、すごい。OCシリーズに愛着があるので、新しい機能が付いていると“じゃあこうやって弾いてみようかな”って思いますし、よりOCシリーズが好きになりました。

━━なるほど、わかりました。OC-5は、BOSSのオクターバーを愛用してきたわかざえもんさんも納得の出来でしたね!

 はい。OC-2でのオクターバー・サウンドってもはや伝統だと思うんですよ。伝統的であることってすごく素晴らしいことで、どれだけ新しいオクターバーが生まれても“やっぱりOC-2だよね”って戻ってくるような、そういう素晴らしさがあると思う。でも、OC-2のなかでも当時の技術では不可能だった範囲と、今の技術だったらもっとこういうこともできるよねっていうこともあると思うんです。このOC-5は、その伝統のサウンドを守りながら、今できる新しい技術で最新の音楽のなかで活躍できるように進化させている。そのことをVINTAGEモードで確認できましたね。
 さらにPOLYモードによってプレイ・スタイルの幅をすごく広げてくれるし、“このエフェクター、ここがいいけど、ここはよくないよね”っていう部分を極力なくしていると感じますね。だから“これ、めっちゃよくない?”って人に言いたくなる(笑)。例えば、人から“いいオクターバー知らない?”って聞かれたとして、“こっちはこういうタイプで、こっちはこういうのに強くて……”っていう風にいろんなタイプのペダルの特性だったり強みがあると思うんですけど、OC-5だったらいろんなスタイルのプレイヤーにお薦めできる。最強のオクターバーだと思いますよ。

【Profile】
わかざえもん●レフティ・ベーシスト。17歳よりサポート活動をはじめる。片平里菜、鎖那、ずっと真夜中でいいのに。、みみめめMIMI、むらたたむ、などのライヴ・サポート、つるの剛士、中川翔子、HoneyWorks、のレコーディングなど、さまざまなジャンルのアーティストの活動に関わっている。2019年5月にはマキシマム ザ ホルモンが行なった世界初のバンド・フランチャイズ化、コロナナモレモモ(マキシマム ザ ホルモン2号店)のベースに抜擢され、SUMMER SONIC 2019など多数のフェスに出演。2020年には、片平里菜「夏が待ちきれない」(『一年中』収録)、HoneyWorks「ヒロイン育成計画 feat. 涼海ひより(CV:水瀬いのり)」(『好きすぎてやばい。〜告白実行委員会キャラクターソング集〜』収録)、PEDIOPHOBIAのアルバム『PAS DE QUATRE』全曲、MAD VIOLET「ヨルニジ」、sequick「夜行園(feat. Wakazaemon)」など、多数のレコーディングに参加。特徴的なルックス、激しいライヴ・パフォーマンスに加え、宅録、DTM、アレンジ、作曲、ミックス/マスターまでこなすなど精力的に活動している。

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