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【BOSS】OCシリーズの系譜と未来——OC-5 feat. わかざえもん

  • Text:Akira Sakamoto
  • Interview:Zine Hagihara
  • Photo:Takashi Hoshino

数あるオクターバー・ペダルのなかでも、その特徴的なサウンド・キャラクターから人気を博しているBOSSのOCシリーズ。OC-2、OC-3と続いたこのシリーズに、伝統的なOC-2サウンドを再現しながらも最新技術で安定感のある演奏を実現するOC-5が加わった。今回は、OCシリーズの系譜を再確認しながら、新進気鋭のスタジオ・ベーシスト=わかざえもんとともに、BOSSオクターバーの集大成とも言えるOC-5の魅力に迫る。

What’s OC series?

最新モデルであるOC-5を試す前に、まずはこのOCシリーズにまつわる歴史について解説しよう。不動の人気を誇るオクターバー・サウンドはどのように生まれ、音楽シーンにどのような影響を与えたのか。

長きにわたって愛される名機OC-2
トレンドの中心にあったBOSSオクターバー

 さまざまなタイプのエフェクターを網羅したBOSSのストンプ・ボックス製品群にあって、原音から1オクターヴ下と2オクターヴ下の音を生成するオクターバー・ペダルのOCシリーズは、かなり特殊性の高いエフェクターであるにもかかわらず、発売以来40年近くもの長きにわたって根強い人気を保っている。

 OC-2はもともと、ギターでベースのような低音を出すのを主目的として開発されたと思われる。そんなOC-2が、ベーシストの間で人気が高まったのは、エレクトロニカやヒップホップなどで聴けるシンセ・ベースのようなサウンドを、エレキ・ベースで再現するというアプローチが流行り出したこともきっかけのひとつだった。ディープなシンセ・ベース・サウンドを得るために、1オクターヴ下の音を調節するOCT 1をフルテン、Direct Levelと2オクターヴ下の音を調節するOCT 2をそれぞれゼロにする設定は、人力エレクトロニカ・ユニットとでも言うべきトリオ、Nerveのドラマー兼リーダーの名を冠した“ジョジョ・メイヤー・セッティング”と呼ばれている(ベーシストはジョン・デイヴィス)。そのほかでは、デヴィッド・ボウイの遺作『★』(2017年)にも参加した名手=ティム・ルフェーヴルがこのサウンドで数々の名演を残しており、メディアでそのサウンドを実現する際にジョジョ・メイヤーと意見を交わしたと述懐している。
 また、必ずしもシンセ・ベースのサウンドを再現するためでなくても、ヒップホップなどの影響を取り込んだ音楽において、グルーヴに重量感や音圧を加えるには有効ということで、OC-2の人気は2000年代以降からそれまで以上に高まったようである。

ティム・ルフェーヴルは、キース・カーロック・トリオ、ラザー、米国のテレビ番組“David Letterman Show”のハウス・バンド、Knowerなど多数のプロジェクトに参加。原音をカットしたオクターバーを、歪みペダルでブーストするというシンセ的ベース・サウンドは彼の代名詞として知られている。
撮影:佐藤拓央/写真提供:ブルーノート東京

 2003年になるとアナログ式のOC-2は製造中止となり、後継機としてデジタル方式を採用したOC-3が登場する。OC-3は、OC-2と同じくOCT1、OC2、Direct Levelのツマミ類を引き継いだのはもちろんだが、それに加えて、原音とドライ音にディストーションをかけることでよりシンセ・ベースに近いサウンドが再現できるDRIVEモードと、和音でも使えるPOLYモードが選択できるように進化を果たしていた。また、原音に対する追随性を高めるために、ギターとベースのそれぞれに専用の入力が設けられ、出力も原音が常に取り出せるように、専用のDIRECT OUTが用意されていた。

BOSS/OC-3

伝統と革新の共存、OC-5

BOSS/OC-5

 そしてついに、2020年に最新モデルOC-5が新しく登場した。OC-3が発売された2003年以来、さらに発達したデジタル技術を生かしたモデルとなっている。ギターとベースのそれぞれにペダルの機能を適正化するスイッチを装備し、原音とエフェクト音を別々に取り出せる出力系統、単音入力と和音入力を切り替える機能はOC-3を引き継いでいるが、単音入力はOC-2のサウンドを忠実に再現したVINTAGEモードとなり、POLYモードは和音の入力に対応するだけでなく、コードの最低音を検出して、その音だけを1オクターヴ下げる設定(=LOWEST)もできるようになっている。これによって、ベースでもより明瞭なコード・プレイが可能になったわけだ。さらに、最新のトラッキング技術によりレイテンシーもなく、低音部での演奏時に起こりがちな誤検出を防いでいる。

ボディ天面には、エフェクターの機能をギターとベースのそれぞれに適した状態に切り替えるスイッチが用意されている。

 また、新たに追加された+1 OCTというツマミで1オクターヴ上の信号も取り出せるので、メロディを弾いたりソロを取ったりするときなど、より幅広い活躍が期待できる。そのいっぽう、OC-3のDRIVEモードは廃止されたが、コントロール系統が整理されたことでむしろ操作性は向上し、持てる機能がより生かしやすくなったと言えるだろう。名機OC-2は現在、プレミアが付いて高価に取引され、市場に出る個体数も少なくなってきている。OC-5はそれと同様の使い方ができるばかりでなく、従来のシンセ・ベース的サウンド・アプローチの枠を超えて、プレイヤーのイメージに応じてバリエーション豊かなフレーズをもたらしてくれるハズだ。

コントロールは左からダイレクト・レベル、1オクターヴ上の音を調整する+1 OCT、1オクターヴ下の音を調整する-1 OCTに加えて、右端のツマミではVINTAGEモード時には2オクターヴ下の音を調節し、POLYモードではエフェクトのかかるレンジを調節、またはLOWESTの選択ができる。

Specifications

●コントロール:ダイレクト・レベル、+1 OCT、-1 OCT、-2 OCT/RANGE、VINTAGE/POLY切り替えスイッチ、GUITAR/BASS切り替えスイッチ
●入出力端子:インプット、ダイレクト・アウト
●電源:9V乾電池、ACアダプター(別売)
●外形寸法:73(W)×129(D)×59(H)mm
●重量:440g(乾電池含む)

価格:オープンプライス(市場実勢価格:¥14,000前後/税抜)

お問い合わせ:ローランドお客様相談センター TEL:050-3000-9230 メーカー・サイト

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