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特集の最後に、歪みエフェクター全10機種の試奏を終えた梅津に今回の試奏を振り返ってもらった。自身もコアなエフェクター・フリークであり、多彩な歪みサウンドを演出する梅津の目に、今回の10機種はどのように写ったのだろうか。

音楽シーンの進化とともに
歪みペダルもブラッシュアップしている

 今回の試奏を通じて、ベース用の歪みペダルのバリエーションと選択肢の広さを改めて実感しました。自分の好みで言うとフェンダーのDowntown Express Bass Multi-Effect PedalやOne ControlのBlackberry Bass ODはオーバードライブとして良いモデルでしたし、ファズならアギュラーのFUZZISTORはバランスも良くて、Shin’s MusicのACID BASS DRIVEのような無二のサウンドを持つモデルも魅力的でした。FREE THE TONEのレンジの広さは画期的でしたし、Vivie Rhinotesのワイルドな歪みも印象に残りました。Darkglass ElectronicsのMICROTUBES X7やVivie Rhinotes、FREE THE TONE BLACK VEHICLEなどはベース用歪みペダルの新機軸となり得るポテンシャルを感じました。加えて、そのどれもがベース用歪みペダルとしての理想型を研究して作られている印象がありましたね。

 ベースはギター用ペダルのように○○系に属するというジャンル分けがないぶん、作り手の個性が如実に表われているのもおもしろいところだと思います。それはサウンドしかり、コントロールを見てもRhinotesの固定されたミッド帯域のセレクトをはじめ、MICROTUBES X7のロー・コンプ、BLACK VEHICLEのプリ/ポスト・ブーストなど、各モデルにしかない操作子があります。各メーカーがベースにとって必要な機能性を熟考した操作子は、どれもかゆいところに手が届くようなものでした。

 今回のラインナップのなかでVivie、FREE THE TONE、Shin’s Musicは国産ブランドですが、操作性の良さや出音の安定感で海外ブランドに引けを取らない印象でしたね。加えて日本の音楽シーンにもマッチしていて、音楽シーンの進化とともに歪みペダルもブラッシュアップしていることを実感できました。僕にとっては歪みペダルは“やる気スイッチ”みたいなもので、盛り上がった気分に応えてくれるもの。自分にあった歪みペダルを見つけて音を出したときの気持ち良さは、ほかに代えがたい魅力があります。みなさんもこのなかから、自分に合った一台を見つけてほしいですね。

【Profile】
うめつ・たくや●1981年生まれ、山形県出身。2008年に結成された3ピース・ロック・バンド、“忘れらんねえよ”のベーシストとしてデビュー。2018年にバンドを脱退して以降は、THEラブ人間や大矢梨華子(ex-ベイビーレイズJAPAN)のサポートなど、多方面に活動を展開する。自身がベース&ヴォーカルを務める3ピース・ロック・バンド、“HOT CAKE”は今年5月に初の音源「Yume」をリリースした。 ◎https://www.hotcake-japan.net/

本記事の内容は10月17日発売のベース・マガジン11月号にも掲載されています。