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  • 注目のベース用歪みエフェクター
    10機種を徹底検証

    現在発売中のベース・マガジン11月号にて表紙&巻頭80ページ以上に渡って展開したSpecial Program“歪みベーシストという生き方”。当特集内では、各ブランドが自信を持ってお薦めする歪みエフェクター10機種を試奏/レビューする“ベース用歪みエフェクター10選”をお届けした。
    今回、BMwebではそのWEB版を掲載。誌面で伝えることができない各機種のサウンドを映像とともにお伝えする。試奏を担当するのは、自身もエフェクター・フリークのひとりであり、歪みエフェクターをこよなく愛する梅津拓也だ。それでは各機種の実力をチェックしていこう!

    ベース・マガジン2020年11月号

    梅津拓也 × ベース用歪みエフェクター10モデル

    aguilar
    FUZZISTOR

     アンプ・メーカーであるアギュラーがクラシックなファズ・サウンドを追求して開発したファズ・ペダル。歪みの心臓となるパーツにはシリコン・トランジスタを使用している。入出力はイン/アウトのみで、コントロールは歪みの深さと音色を調節するファズとトーン、エフェクトの音量バランスを調節するレベル、原音とエフェクト音のミックスを調節するブレンドの4つ。ファズながらに過激な歪みからクランチ系まで、多彩な音色に対応できる。また、使用時に電源が切れても信号が途切れないギグ・セイヴァー・バイパス回路など、ライヴ時の使用を想定した作りとなっている点もポイントだ。

    【Specifications】●コントロール:ブレンド、レベル、トーン、ファズ、オン/オフ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:9V乾電池/アダプター●外形寸法:68(W)×140(D)×58(H)mm●重量:520g(電池含む)●価格:¥30,000

    製品に関する問い合わせ:コルグお客様相談窓口(☎︎0570-666-569)
    http://www.korg-kid.com/aguilar/

    Umetsu’s Impression

    aguilar/FUZZISTOR

    音程感が明瞭で聴きやすいファズ・サウンド

     自分が好きな昔のファズみたいなニュアンスがありますね。70年代のロック・ベーシストがチューブ・アンプをフル・ヴォリュームにして、結果としてファズになってしまっているような感じで、グランド・ファンク・レイルロードとかマグマあたりのサウンドを彷彿させます。低域がしっかりと歪みに付いてきてくれるので、音程感も明瞭で、聴きやすい印象でした。ファズのツマミはフルまで上げても破綻せず、音楽的に聴こえるのも驚きでした。トーンのツマミを絞った状態だとアンプの歪みっぽい感じで、上げていくと徐々にファズのチリチリしたニュアンスが出てきます。ファズのツマミと同じく12時方向よりも上げたセッティングのほうが、このペダルの本来の良さが出ると思いました。ブレンドのツマミもありますが、芯の残る歪み方をしてくれるので、そこまで原音を混ぜなくても良い気がします。アンサンブルのなかでラウドなギター・サウンドと混ざっても、埋もれずにしっかりと聴こえてきそうな歪みですね。

    Darkglass Electronics
    MICROTUBES X7

     ラウド系のプレイヤーから支持を受けるダークグラスエレクトロニクスのディストーション・ペダル、Microtubes。こちらは4バンドのグラフィックEQを搭載したモデルとなる。本機の特徴は入力信号をロー・パス/ハイ・パスの2系統に分岐することで、音圧を損なわずにアグレッシブなサウンドを得られるところ。ロー・パス信号はコンプレッサー回路によって低域感を調整し、後者はCMOS回路によって歪みを付加する。ロー・パス/ハイ・パスは可変式で、歪ませる帯域を自在に選択可能。さらに4バンドのグラフィックEQを加えることで、プレイする音楽ジャンルや楽器に合わせて、サウンドを緻密に作り込むことができる。

    【Specifications】●コントロール:ロー・コンプ、ロー・レベル、ハイ・レベル、ハイ・ドライブ、マスター、ロー・シェルフ、500Hz、1kHz、ハイ・シェルフ、ロー・パス・ フリケンシー・スイッチ、ハイ・パス・フリケンシー・スイッチ、オン/オフ・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット、パラレル・アウトプット、ダイレクト・アウトプット●電源:9〜18Vアダプター●外径寸法:94(W)×120(D)×46(H)●重量:320g●価格:オープンプライス(市場実勢価格:¥35,500前後)

    製品に関する問い合わせ:キョーリツコーポレーション ✉️support@kyoritsu-group.co.jp
    https://kcmusic.jp/darkglass/

    Umetsu’s Impression

    Darkglass Electronics/MICROTUBES X7

    画期的な安定感を持ったローのニュアンス

     これはいいですね。僕が思っていた以上に欲しいと思う歪みが出せました。ヴィンテージのアンペグのチューブ・アンプのように、ベースの根っこからドライブさせたようなパンチ感があって、弾いていて気持ちいいですね。ロー・コンプ とロー・レベルのコントロールが印象的で、いわゆるブレンドのツマミとは違って、歪ませたときにずっと低音が残るんです。ブレンド機能は時に原音がパキっとし過ぎてしまうものもありますが、このペダルは心配無用。この安定感のあるローのニュアンスは画期的だと思いますよ。グライコの効きもかなり良いので、音をしっかりと作り込むことができます。歪みのキャラクターはチューブっぽいので、ピッキングのタッチで歪みの深さも変わるし、指でもピックでもペダルの個性がはっきりと出せます。これは歪みが好きな人にはたまらないですね。試奏していて、人気モデルである理由がよくわかりました。

    EBS
    Billy Sheehan Signature Drive ULTIMATE

     EBSが発売するビリー・シーンのシグネイチャー・ドライブ・ペダルの最新機。コントロールは歪みを調整するドライブ、フィルター的な役割を持つトーン、音量を調節するレベル、原音をブレンドするクリーンの4系統のツマミを実装。トーンのフリケンシーを選択できるハイ/ロー・スイッチが幅広い音作りをサポートするほか、フェイズの逆相・正相の切り替えはロー・エンドのニュアンスを変化させる。コンプ・スイッチはビリー・シーンのサウンドを生み出す肝となる機能だ。ブースト・スイッチのレベルは内部トリムポットで調整も可能。ループ用の入出力も装備し、拡張性に優れた仕様となっている。

    【Specifications】●コントロール:トーン、レベル、ドライブ、クリーン、フリケンシー切り替えスイッチ、フェイズ・インバーター切り替えスイッチ、コンプレッサー切り替えスイッチ、ブースト・スイッチ、アクティヴ・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット、クリーン・ループ、ドライブ・ループ●電源: 9Vアダプター●外径寸法:83(W)×115(D)×48(H)mm●重量: 420g●価格:¥30,000

    製品に関する問い合わせ:モリダイラ楽器(☎︎03 -3862-5041)
    http://moridaira.jp/ebs

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    EBS/Billy Sheehan Signature Drive ULTIMATE

    ビリー・シーンらしい存在感のあるミドル

     ペダルにつないで音を出した瞬間、“おお、あの音だ!”という驚きがありました。ビリー・シーンのベースって、圧倒的な演奏力はもちろん、ミドルの存在感の強さでほかの帯域を補っている感じがありますが、彼のベースのミドル感を見事に再現しています。彼が使用する機材はアンプを2台鳴らしたりと、けっこう複雑ですが、このコンパクトなペダルひとつであの音が手軽に出せるというのは驚きでした。コンプのスイッチを入れると、音がちょっと引っ込みますが、コンプを入れることで出る“潰れた”ニュアンスが、ビリー・シーンらしさを演出してくれます。低音が強調されるフェイズ・スイッチは使う楽器やアンプによって設定すると効果的に使えますね。ブーストはゲインが上がるので、ソロで歪みを足したいときに重宝すると思います。良い意味でシグネイチャー・モデルなので、ビリー・シーンの音が出したいというベーシストにぜひオススメしたいモデルです。

    Fender
    Downtown Express

     オーバードライブ/コンプレッサー/イコライザーの3セクションからなる、フェンダーのマルチ・エフェクト・ペダル。先述した3つのエフェクトは独立した回路で構成されており、各スイッチでオン/オフの切り替えが可能。オーバードライブはレベル/トーン/ドライブ、コンプレッサーはブレンド/ゲイン/スレッショルドと、それぞれ3つのコントロールを備えており、歪みとコンプの接続順のセレクトも可能だ。イコライザーはベース、ミドル、トレブルの3バンド仕様、ペダル全体のレベルを調整するマスター・コントロールも搭載。XLRアウトやチューナー・アウトの端子も備え、マルチらしく多用途に対応した一台だ。

    【Specifications】●コントロール:マスター、オーバードライブ/コンプ接続順切り替えスイッチ、ミュート・スイッチ、イコライザー・スイッチ、オーバードライブ・スイッチ、コンプレッサー・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、DIシグナル・パス・スイッチ、LEDオン/オフ・スイッチ【オーバードライブ】レベル、トーン、ドライブ【イコライザー】ベース、ミドル、トレブル【コンプレッサー】ブレンド、ゲイン、スレッショルド●入出力端子:インプット、チューナー・アウト、アウトプット、XLRアウトプット●電源:9Vアダプター●外径寸法:187(W)×123(D)×44(H)mm●重量:1085g●価格:¥27,000

    製品に関する問い合わせ:フェンダーミュージック(☎︎0120-1946-60)
    http://www.fender.co.jp

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    Fender/Downtown Express

    フェンダー・アンプを歪ませた乾いた歪み

     フェンダーのペダルと聞いて、乾いた明るい感じの歪みかなと思っていたので、良い意味で予想どおりというか、フェンダーのベースマンを歪ませたようなサウンドですね。アンペグのように滲む感じはなく、“バリーン”という荒っぽい歪みで、マイク乗りが良さそうな音がします。トーンを上げていくとより一層、明るいニュアンスが出ます。コンプとオーバードライブの接続順を変えられるのはとても良いですね。コンプは音圧をけっこう稼げるので、オーバードライブだけでなくコンプやEQを併用すれば、さらに音を作り込めます。あと気に入ったのはスピーカー・エミュレーション機能で、ラインで録音した音をプレイ・バックで聴いてもライン臭さがまったくないのが印象的でした。それもあって、フェンダーのアンプとキャビネットを鳴らした音をマイクで拾ったような音がします。マルチ・エフェクトではありますが、オーバードライブのセクション単体でもしっかりと音作りできるので、デモ演奏ではコンプやEQは使わないで録りました。

    FREE THE TONE
    BLACK VEHICLE

     プロを中心に愛用者の多いフリーザトーンのベース用ドライブ・ペダル。同社の代名詞でもあるHTS回路を見直し、音ヤセを防ぐだけでなく、エフェクターのオン/オフ時の音の質感を揃えることができる。また信号の位相ズレを最小限に抑えることで、歪ませたときでも音程感や輪郭を維持したサウンドを実現した。コンロールは歪みの量を調整するレベル、原音とのバランスを取るミックス、ゲインに加えて、EQのトレブル、ベースはドライブ・サウンドのみにかかるようになっている。またブーストは、歪み回路のプリ/ポストの選択が可能。オーバードライブからディストーションまで、幅広い歪みが得られる。

    【Specifications】●コントロール:レベル、ミックス、ベース、トレブル、ゲイン、ポスト・ブースト、プリ・ブースト、オン/オフ・スイッチ、ブースト・スイッチ●入出力端子:インプット、アウトプット●電源:DC9V専用アダプター●外径寸法:95(W)×124(D)×51(H)mm●重量:約640g●価格:¥37,000

    製品に関する問い合わせ:フリーザトーン ✉️info@freethetone.com
    http://freethetone.com

    Umetsu’s Impression

    FREE THE TONE/BLACK VEHICLE

    レスポンスの良さが際立つタイトな歪み

     良い意味でイメージを裏切られましたね。分離が良くてキレイな歪みの優等生タイプかと思ったら、原音への歪みの絡み方がすごくて、そこまでゲインを上げなくてもすごくカッコいい歪み方をしてくれる。思っていたよりも悪い音が出せました(笑)。歪みは切れ味が鋭くて、ピッキングに対するレスポンスが速いです。レコーディングで歪ませても、リズムがはっきりするでしょう。アタック感でバンドに勢いを出したいベーシストにもピッタリですし、タイトなのでスラップのときに歪ませてみてもカッコ良くなりそうです。歪みのキャラはどちらかというとエフェクターっぽくハードに歪みますが、嫌味がなくてレンジがすごく広いのが印象的です。試奏で使ったプレベのゴツっとしたニュアンスも聴き取れましたし、楽器の良さをちゃんと生かしてくれるハイファイ感が素晴らしい。このペダルをつないだだけで楽器の音が良くなったようにも感じました。万能タイプながらに、ほかにない歪みのキャラクターを兼ねていて完成度の高さを感じました。

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