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Collectera/Singular/Wood Custom Guitarsが語る、楽器と音楽をつなぐプロジェクト“acira”
- 取材・文:山本彦太郎
- 写真:星野俊
作り手の思想と、奏者の息吹が交わる場所
5つのブランドが共鳴し合う音楽の合流点
関西・北陸のギター/ベース・ビルダー、ショップのほか、プロ・ベーシストといった異なる立場の5人によって2025年に立ち上げられたプロジェクト“acira”。“音と人が出会い、音楽が始まる”をスローガンに掲げ、作り手と奏者が楽器を介して交差する新たな“循環の場”を生み出している。11月14日、15日には展示会と縁のミュージシャンたちによるライヴ・イベントを開催予定だ。
ここではaciraの5人にプロジェクトの全容を聞いたほか、ベース篇として、ベース・ブランドを主宰する3人に鼎談インタビューを実施し、プロジェクト設立にいたった背景や、aciraの掲げる理念に迫っていく。さらに、各々の信念のもと製作された注目の5モデルを紹介。音と人の新たな関係性を創造する、aciraの全貌を見ていこう。
ABOUT “acira”
楽器をきっかけにした出会いから
音楽へとつながる場を創り出す

まずどのような人たちが名を連ねているかというと、兵庫でNishgaki Guitarsという個人工房を運営する西垣祐希氏。プロ・ベーシストであり、西垣氏とCollecteraというブランドを共同主宰する宮地遼氏。石川を拠点に、デザインや工芸、アートワークなどに取り組むクリエイティブ・チームseccaで活動するSingularの北出斎太郎氏。滋賀でWood Custom Guitarsというベース・ブランドを運営する上田和希氏。そして、富山のセレクト・ショップBlue Guitarsの代表であり、同店のオリジナル・ブランドであるstilbluのプロデュースを手がける山田浩幸氏だ。
“acira”(アシラ)とは、ギター製作者やミュージシャン、ショップなど5人が集って立ち上げたプロジェクトの名称だ。
楽器や音楽といったつながりはあれど、微妙に立ち位置の異なる5人が集まり、何を成そうとしているのか。その理念を北出氏はこう語る。
“我々が楽器を完成させておしまいではなく、それを扱ってくれる方がいて、新しい音楽が生まれて、それを聴いた人が刺激を受けて何かを作ったりと連鎖が生まれていく。音楽を愛する人たちが、楽器を中心に交差し、そこから生まれてくるものを一緒に広げていきたいんです”。
その“交差”、山田氏曰く“循環の面白さ”を端的にまとめたaciraのスローガンとも呼べるものが、“音と人が出会い、音楽が始まる”という言葉。それを具現化していくうえで、西垣氏がまず考えたのは、プロジェクトとしての名称だ。
“自分たちが長く続けていく活動であれば、名前があったほうが愛着が湧くだろうということで、僕と北出さんで考えた時に“アシラ”という言葉自体が生まれました。そこから、日本語で“飾る”という意味合いの“あしらう”も連想し、音楽が空間をあしらう、楽器がミュージシャンと共に音になるっていうのは、僕たちがすごくやりたいことだと納得したんです”。

“アシラ”は“アーティスト(a)、コミュニティ(c)、インストゥルメンツ(i)、リレーションシップ(r)、アッセンブリー(a)”の頭文字が当てられて“acira”となる。ビルダーやミュージシャンとして楽器とともに生きているという意味も込め、インストゥルメンツの“ i ”が中心に据えられている。
このような理念を柱にするaciraには、もう1つ大切にしているキーワードがある。それは“シグネチャー”という言葉だ。
これについて上田氏は“世界中に楽器が溢れているなかで、僕たちの楽器を選んでもらえているのはなんでなんやろって考えたんです。自分が良いと思って作っているものが僕たちのシグネチャー・サウンドになっているんだとしたら、それを強く押し出していかないと意味がない。僕らが作っている意味も、宮地くんが弾いている意味もない。それに、お客さんもそれぞれ自分のシグネチャーがあるはずなんですよ”と語ってくれた。
その作り手の“シグネチャー”と、(プロ/アマ問わず)弾き手の“シグネチャー”が合わさり、さらに弾き手に限らず音楽を愛する聴き手がそれらを観測した時の面白さ。それを見つけ、体感するための場の提供も、aciraの大きな役目の1つと言えるだろう。
2026年5月に大阪で開催された『サウンドメッセ2026』で、aciraのお披露目となる5ブランド共同展示を行なった。さらに11月に予定している展示会と縁のミュージシャンたちによるライブ・イベントについて西垣氏は、“僕たちが作れる楽器の本数には限りがあるので、実際に手に取ってもらえる機会はやはり限られてしまう。とは言え、たくさんの人に弾いてほしいので、“会いに行けるビルダーたち”という形で“acira”というパッケージを出せるかなと考えています。皆の“面白い”をぶつけあった結果出力されたものを、目撃してもらいたいです”と語る。
インターネットを通じて世界中の様々な楽器にアクセスすることが容易となった現在、一方で実際に楽器に触れてみたり、その楽器がどのような音楽を生み出すのかを体感する機会は意外と少なくなっているかもしれない。関西・北陸を中心に活動するaciraの実像に触れる機会もまた貴重なものであり、これが全国行脚へとつながることも期待してしまう(註:団体名の候補には“caravan”という言葉もあったそう)。その一歩を踏んだaciraの面々だが、その人となりが垣間見える彼らの“シグネチャー”の一端を以下でご覧いただこう。
CROSS TALK
ここからは“ベース篇鼎談”として、Singularの北出斎太郎氏、Wood Custom Guitarsの上田和希氏、ジャズ・ベーシストでありNishgaki Guitarsの西垣祐希氏とともにCollecteraを共同主宰する宮地遼氏の3人に、aciraの理念や各ベース・モデルについて話を聞いていく。なお、ギター・マガジンWebでは、“ギター篇鼎談”を掲載しているため、コチラよりチェックいただきたい。
また、11月14日、15日のイベントで展示予定の各社の一部モデルを紹介する。

楽器製作者として、
目の前にある木と対峙している
━━ 上田和希
⸺“acira”はいつスタートしたのですか? どなたか発起人のような人がいたのでしょうか?
北出 そもそもはサウンドメッセに出展するというのがスタートですね。
上田 そう、西垣くんのNishgaki Guitarsと僕のWood Custom Guitarsが共同でサウンドメッセに出展しようかという話からですね。
宮地 その意味で言うと、明確に誰が発起人なのかっていうのは難しいかも。
上田 同時にいろいろスタートしていた感じもあるし……発起人という形はないかも。ただ、やっていくなかで思ったのは、僕としてはギター作りは楽しいんですよ。お客さんが選んでくれたら嬉しいし、ミュージシャンが使ってくれたら嬉しい。ただそれは自分の中の別々の部分での楽しいだったり嬉しいなんです。それが最近自分のライフワークを考えたときに、毎年恒例のイベントとか自分の人生を豊かにするものがないなあと気づいて……。
西垣くんと話をしていたときに、これは自分の人生も豊かになるし、ミュージシャンや自分たちの楽器の音を聴いてくれた人も豊かになるイベントになっていけたらいいなと思ったんです。
⸺そもそも5人はどのように知り合ったんですか?
上田 僕と北出くんは以前同じギター・メーカーで働いていて、山田(浩幸)さんのBlue GuitarsでNishgaki GuitarsとWood Custom Guitarsを取り扱ってもらっていたつながりから西垣くんと出会い、そこから宮地くんと知り合ったみたいな、数珠つなぎな感じでしたね。ただ、いろいろと話をしていくなかで、宮地くんが入ってくれると全然違うことをスッと言ってくれるんですよね。僕たちは楽器製作者として、目の前にある木と対峙しているし、山田さんもお客さんにより喜んでもらえるように集中している。そういうときに宮地くんは、さらに奥の聴いている人の人生をどう豊かにするかってことをポッと言ってくる。
宮地 立場が違う意見っていうのがシェアされるっていうのが良いんですよね。逆に言うと、僕も作り手のアイディアとか想いをわかりたいと思いつつわかりきれていないところがあるし、だからこそ、この5人が集まっている意味があるなと思います。
“acira”を応援してくれる人、関わってくれる人に
豊かになってもらいたい
━━ 宮地遼
⸺“acira”のキーワードのひとつである“シグネチャー”という言葉について、もう少しそれぞれの考えを教えてください。
上田 思うんですけど、楽器って安い楽器だろうと高い楽器だろうと、どこかに使い所が必ずあるんですよね。どんな価格帯であろうと良い物は良いし、それでしか得られない特別なサウンドがある。そういったことを大切にしていかないと僕らも生き残っていけないし、それが今後肝になっていくんじゃないかと思っています。
北出 同じ楽器でも人によって出る音が全然違うし、僕が作った楽器にも関わらず、宮地くんが弾いたのを聴いて“あれ? この楽器ってそんな音が出るの!?”なんて感じたこともあります。シグネチャーっていう考えからは、そういった気づきをもらえましたね。
上田 弾き手の個性と楽器の個性が合わされば化学反応が起きて、知らないサウンドや音楽になるかもしれない。
宮地 そもそも音楽って、ひとりひとり自分が持っているものだと思いますし、正味な話、音楽をするっていう行為自体は、楽器がなくてもできると思うんです。歌えば歌になるし、手や足を鳴らせばリズムになる。それが音楽だと思うし、僕の音楽性っていうのは、楽器がなくても自分の音楽はあると言えます。これは音楽を極めている極めていないとかは関係なくですね。
じゃあなんで楽器を使うかというと、僕のシグネチャー・トーン、シグネチャー・ミュージックがあるなかで、僕の音楽性と楽器というツールを使ったときに出て来る結果が全部違うんですよ。それが僕にとってはすごく面白いんですね。上田さんが言った化学反応と一緒で、この楽器を持つとこういう気分にさせてくれるっていうのがある。楽器は必須じゃないと思いますけど、だからこそ自分がいろいろな表現をしたいときに手助けをしてくれたり発想をくれる、相棒のような存在だと思っています。
すべての楽器がシグネチャーを持っていることによって、僕のシグネチャーと合わさったときに新しいシグネチャーが生まれる。それが僕にとって良い連鎖反応だと思いますね。
上田 集まったらこういう話もするんで、そこで気づくこともあるし、どんどん幅が広い人間になっていけたらいいですよね。
宮地 “acira”を応援してくれる人、関わってくれる人に豊かになってもらいたいと思うし、そういう提案ができれば良いと思うと同時に、内側もみんなお互いから何かを受け取るのを期待して集まっている部分があると思います。
北出 いろいろな音や考え方にじっくり触れて、それが誰かの何かのきっかけになるような機会をもっと設けたかったっていうのもありますね。
エレキ楽器にはまだ楽器が進化していく余地が
たくさんあるんじゃないか
━━ 北出斎太郎
⸺今回お持ちいただいたベースにはどのようなこだわりがありますか?
北出 そもそもの入口はアコースティック・ギターの製作で、独立して地元の金沢に戻ってからはさまざまな分野のクリエイターが集まるseccaというチームで、デザインやアートワークにも関わりながら、そのなかでSingularというブランドを立ち上げて、設計から製作まで自分でやっています。Singularが最初に作ったのがB1というソリッドベースなんです。
アコースティック・ギターってすごく長い歴史がありますが、エレキは比較的新しい楽器といえますよね。エレキ楽器にはまだ楽器が進化していく余地がたくさんあるんじゃないかっていう可能性を感じたんです。なので最初からオリジナル・デザインで始めましたし、弾きやすさや音の良さはもちろん大前提として、身体への収まり方やストレスの軽減、一体感を持たせることで、自然と音に集中できることを大事にしています。
そのためスモール・ボディのデザインになっていますし、ジョイント・プレートも含めて3D加工していて角となるところがない。ピックアップ・カバーには立体成型した革を被せていて、親指を置いたときに当たりが柔らかくなるようにしていますし、弾く以外のところから与えられる感触、そこで得られる心地好さが演奏体験に反映されるという考えで楽器を作っています。
宮地 CollecteraのS-1は、僕はショート・スケールが元々好きだったんですけど、解決したい部分、もっとこうだったらっていう部分がいくつかありました。そのひとつはテンションが緩くてサステインが伸びにくいこと。あと、スケールが短いがゆえに、ピッキングするときの右手の位置がいつもより手前に来てしまい、それで使う筋肉や指の当たる位置が変わることで出音も変わってしまうんです。僕としてはショート・スケールゆえの扱いやすさ、テンションが緩いからこその低音のふくよかさは生かしつつ、もっと自由に弾ける楽器、サステインももっと伸びる楽器ができないかなと思ったんです。
こだわったポイントとしてはまず弦長を伸ばすこと。これはショート・スケールは弦の選択肢が少ないので、それへの対応でもありました。それからピックアップの位置も、構えたときに一般的なシェイプ、スケールのベースと同じ位置に来るように設計しています。
Nishgaki GuitarsのTEMPESTAは、 西垣が作りたかったチェロのようなサウンドで鳴るエレクトリック・ベース。特徴としてはやはりホロウ・ボディ。これだけのボディ厚があって、中が空洞のベースってなかなかないと思います。ホロウ・ボディによるエアーの感じは、アコースティック・ギターのようなニュアンスも入ってきますね。弾いていてすごく気持ち良いですよ。
2本ともホロウ構造のわりにドッシリしているのは僕のリクエストもありますね。僕は歌うようなプレイやギター・ライクにコード弾きするようなこともしますが、ベースはベース。なので、アンサンブルを支えるポテンシャルがないとベースとは呼べないと、僕は強く思っています。
上田 このVibeはブランドを始めた当初からずっと同じスタイルで作っているモデルです。ちゃんと道具として使えるものをって考えで作っていますね。僕はエバートーンっていうプロジェクトのメンバーでもあるんですけど、レコーディング・エンジニアの人と仕事をする機会が多くて、現場の意見をしっかりと取り入れて作った感じもある楽器ですね。
エンジニア目線で言うと、やっぱり発音の良さは大事だそうです。特に今みたいに同期とか楽器じゃないものが鳴っている中だと、ベースの音を抜けさせるためには発音の良さとピッチの正確さが大事ですし、音色的にもきれいに抜けてくるよう、エバートーンも含めてこだわっています。あとは多弦の場合だと各弦のバランスの良さを特に意識して製作しています。木材の構成はもちろんですが、パーツなどの選定もより良い結果になるよう一本一本合わせて製作をしています。
Voiceは僕の個人名で作ったベースです。Vibeなどはやっぱりトラディショナルな系譜で、そこにはしっかりとした求められている答えがあるわけですけど、このVoiceはまだ答えがないタイプなので、好きなようにやってもいいかなって考えています(笑)。フレットレスで音の境目もないですし、演者の声になれば良いかなと思って作りました。発端は箱モノベースでこういうタイプが少ないっていうのと、そのわりに意外とこういうベースを弾くプレイヤーが増えてきたということですね。
宮地くんとも話していたんですけど、やっぱりコントラバスは多弦の選択肢が少ないことや、ハイ・ポジションに行くと音程感が失われがちになる。もっと前にピューンと音が飛んできて、ソリッド感がありつつ箱感もあるって意外とないので、答えがないんだったら好きに作って、そのできたものが答えになるって思って作り始めたんです。
通常の箱モノは、魂柱はひとつでブレイシングが付けられていますが、これはブリッジのちょうど下に2本の魂柱が入っていてノン・ブレイス仕様です。ベースとしてはダブルベースの系譜が入る感じだし、実際その雰囲気を入れようと思っていたんですが、僕がデザインするとやはり自分のデザインになってしまう(笑)。まあこれも僕の個性かと思いますし、皆それぞれ個性のある楽器を製作しているので、“acira”の中でも住み分けがあって面白いと思います。
【Information】
acira LIVE & SHOWCASE Vol.2
<日時・場所>
【Live】
2026年11月14日(土)
Rittor Base(東京都千代田区神田駿河台2丁目1−1 お茶の水クリスチャン・センタービル B1)
Open 16:30 / Start 17:00
チケット ※SOLD OUT
・前売り……6,000円
・当日券……7,000円
※ご来場者にお土産付き
出演
小沼ようすけ、KAN、笹井BJ克彦、須川崇志、西村ケント、藤井伸昭、藤本一馬、宮地遼
【Showcase】
2026年11月15日(日)
Rittor Base(東京都千代田区神田駿河台2丁目1−1 お茶の水クリスチャン・センタービル B1)
Open 11:00 / Close 16:00
チケット ※好評発売中
・前売り……1,000円
・当日券……2,000円
※ご来場者にお土産付き
出展ブランド
Collectera, Nishgaki Guitars, Singular, stilblu, Wood Custom Guitars
●詳細はこちらから
https://www.acira.jp/

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