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    マーティ・ホロベックが石若駿、渡辺翔太と作り上げた最新トリオ作『Trio IV: The City, It Whispers』を語る!【後篇】

    • 取材:辻本秀太郎(ベース・マガジンWEB)
    • 写真:Kana Tarumi

    インタビュー前篇はこちら

    僕と駿はいつも一緒に演奏しているので、今回は少し音を変えたかったんです。インディ・ロックのような質感というか、ガレージっぽくて、クリーンすぎないドラム・サウンドにしたかった。

    バスドラムは大きくて、スネアは少しデッドでありながら広がりのある音にしてもらいました。クラップ・シンバルも持ってきてもらうようにお願いして、あとは駿の最高のアプローチに任せました。ミックスを担当したジョーさんもドラマーなので、ドラムの音はいつも本当に素晴らしいです。

    最初に冒頭のリフを書いて、翔太とユニゾンするつもりで作りました。それからコードとベース・リフを同じ世界観で組み立て、リズム・パターンを作って、そこにメロディを乗せていきました。

    ひとりで家にいて、リフをループさせながら「じゃあ、次はどう展開しよう」と考えていく。これは、僕がたまにやる好きな作曲スタイルです。ピアノはすごく難しいんですが、翔太は完璧に弾いていましたね。

    僕はリフが大好きで、『Trio I』に入っている「Snack Bar」や、井上銘の去年のアルバム『Tokyo Quartet』に書いた「Are You Full?」も、リフから作った曲です。

    これは駿が書いた曲なんですが、彼が本当にヘンで、汚い譜面を持ってきたんです(笑)。朝の3時半くらいに初見で演奏することになって、僕と翔太は「えっ、どういうこと!?」という感じでした。

    駿から「ウッド・ベースでお願いします。翔太はピアノでお願いします」と言われたので、コントラバスですごく激しく、アグレッシブに弾きました。

    自分でも笑ってしまうくらいヘンな曲(笑)。でも最高のアプローチになったと思います。あの時間帯だったからこそ、「もう、やるしかない!」というテンションになって、良いテイクが録れました。

    もう、自分しかないですね(笑)。駿が僕のために書いた曲だから、マーティっぽさがほしいと思いました。

    全然怒ってはいないけど、「なんで、こんなヘンな曲を朝の3時半に持ってきたんだ!」とはなりましたね(笑)。レコーディング中は「これは大丈夫かな?」と思っていたけど、すごく良いものになりました。翔太のピアノもやばすぎますよね。うますぎます。

    そうです。翔太が書いた曲で、メロディはシンプルで美しいんですが、しっかりスパイスも入っている。実は6拍子で、リズムもすごく複雑なんです。“マーティっぽいメロディ”と思って書いてくれたのかもしれないですね。アレンジも最高です。

    駿は、ほとんどすべての曲を初見で叩いたと思うんですが、この曲も完璧に演奏してくれました。「6拍子だけど、広がりのあるリズムにしてほしい」と話したんです。ほかのドラマーだったら、もっとビジーに叩くかもしれない。でも、駿は理解がすごく早くて、シンプルだけど最高のアプローチをしてくれました。翔太のディレクションも素晴らしかったですね。

    最初のメロディを2回繰り返して、すぐにベース・ソロへ入る構成もすごく新鮮で、さすが翔太だなと思います。

    今ちょうどオーストラリアの実家に帰っているんですが、確かに、この広さが自分のルーツかもしれないですね。家の周りには山もビルもなくて、すごく開けていて、地平線まで見えるんです。

    「Eternal」は、今まで書いた曲のなかで一番好きかもしれないくらい、気に入っています。メロディもハーモニーもすごくシンプルです。でも、“シンプルに良い曲”を書くのは本当に難しい。この曲では、それができたという自信があります。

    実はおもしろい仕掛けがあって、コード進行は3小節でループするんですが、メロディは4小節のループになっているんです。こういう構造もおもしろいですよね。

    バッハからの影響は、常にあります。僕はバッハの音楽がすごく好きで、音数が少なくても、ハーモニーやメロディが本当に音楽的で、際立っていますよね。本当に特別な人だと思います。

    これは以前、翔太とのデュオのために作った曲です。でも、そのときは曲数が多くて、お蔵入りになってしまった。良い曲なのに、すごくもったいないと思っていたので、今回のトリオでもう一度録音しました。

    駿には、「クラシックのマーチング風だけど、駿っぽい感じで」と伝えて、スネアのロールをお願いしました。

    確か3テイク録って、テイク3を採用したと思います。

    最初はずっと2回目のを聴いていたんですが、ミックス前に最後に聴き直したら、テイク3のほうが良いと思ったんです。インプロビゼーションで一番大切なのは、アンサンブルのリアクションや“音楽のなかでの出会い”です。誰かが音を弾いて、誰かが休む。僕が急にピックでウッド・ベースを弾き始めたりもする。

    それぞれの音の“聴き方”がおもしろかったテイクを選びました。メンバー同士の出会い方が一番良かったのが、テイク3だったんです。

    これもヘンな曲で、10小節のメロディ、8小節のBメロ、最後は11小節という変則的な構成になっています。エレキ・ベースでバックビートを強調したテイクなど、いろいろ試しました。でも結局、ファースト・テイクで録った速いスウィングのヴァージョンが一番おもしろくて、エキサイティングだったので採用しました。

    ベース・ソロの途中で5拍子や3拍子に変わったりするんですが、ずっと一緒にツアーをしている翔太は、僕のやり方を完全に理解してくれている。コード・バッキングも最高でした。

    曲順はすごく迷ったんですが、ermhoiに相談して決まりました。僕が悩んでいると、彼女が「これはダメです。この曲順はどうでしょうか?」と提案してくれて。それが本当に最高だったんです。

    Prophetの音から始まる、ミュート・ベースのバラード「The Things We Carry」を1曲目にしたのは大正解でした。この曲は前作『Mountains』では最後に収録されているので、『Mountains』から『City』へ物語が流れていくようなおもしろさがあります。

    1曲目の「The Things We Carry」はすごく評判が良いので、嬉しいですね。

    そうですね。おそらく、次は“Trio V”のアルバムになるかもしれません。この前、辻本さんも来てくれましたが、アコースティック・ベースと、閑喜弦介、井上銘のアコースティック・ギターという編成で、生音のライヴをやりました。

    良かったです。聴いている場所によっても全然聴こえ方が違うし、おもしろいですよね。レコーディングするときの音の作り方も常に考えていて、完全なアコースティック編成をマイク1本で録るのか、ステレオで録るのか、いろいろと試行錯誤していきたいです。次作も、これまでとはまったく違う空間の使い方をしたアルバムを聴かせられると思いますよ!

    ◎Profile
    マーティ・ホロベック ● 1990年9月3日生まれ、オーストラリア出身で現在は東京在住の音楽家。自身のTrioシリーズをはじめ、SMTKやHishakaku Quartetの共同リーダーを務めるなど、複数のプロジェクトを率引している。サイドマンとして、日野皓正、石橋英子、ジム・オルーク、Answer to Remember、ROTH BART BARON、ermhoi、崎山蒼志、藤原さくら、HIMIなどのアーティストと共演する。2019年から2021年までNHK『ムジカ・ピッコリーノ』にレギュラー・メンバーとして出演。2025年4月1日にリリースした『TRIO IV: THE CITY, IT WHISPERS』のほか、これまでに6枚のリーダー・アルバムを発表している。
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