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Markbass 58Rシリーズ × 山内あいな(SILENT SIREN)
- Photo:Hiroki Obara
- Equipments Explanation:Makoto Kawabe
ベース・アンプ界の先駆者が放つ、稀代の新シリーズを徹底分析!
小型軽量なベース・アンプでアンプ界に新たな潮流をもたらしたMarkbassは、ベース・ギア・シーンの中核を担うブランドとも言える存在だ。同社の最新アンプ・シリーズが“58Rシリーズ”で、アンプ・ヘッド、キャビネット、コンボ・アンプと多種多様な製品群がラインナップ。いずれもベース・アンプ界のパイオニアが提唱する最新の技術が詰め込まれた高品位な逸品たちだ。今回はそんな58Rシリーズを大フィーチャー。長年同社の製品を愛用する山内あいな(SILENT SIREN)のレビューとともに同シリーズの実力を徹底検証していく。
Markbass 58Rシリーズとは?
まずは58Rシリーズの本質を、メーカー・コメントとともに理解していこう。
Markbass 58Rシリーズ(以下、58R)は2023年3月にリリースされたベース・アンプ/コンボ&スピーカー・キャビネットの最新シリーズだ。58Rに共通するトピックは筐体に採用された新素材で、組成などの詳細は公表されていないが、環境に優しい樹脂系素材とのことで、充分な強度を保ちながらさらなる軽量化を実現している。例えばアンプ・ヘッドのLittle Mark 58Rは重量2.17㎏で、ほぼ同サイズの先代モデルLittle Mark Ⅳよりも280gほど軽く、キャビネットのMB58R 104 ENERGYは重量16.5kgと、ユニット構成やサイズが近い従来モデルSTANDARD 104HRに対して5.4kg減という驚愕の軽さを実現。また、アンプ・ヘッドは先代モデルの基本スペックを踏襲しながら、使用パーツや内部サーキットに改良が施され、よりパワフルで現代的なサウンドへとアップデート。キャビネットにおいても高域の追従性に優れたハイファイ・ツィーターを新たに採用(PUREシリーズ)するなど、最先端技術が惜しみなく投入されている。
ブランドのアイデンティティを保ちつつも音楽スタイルの変化やユーザーのニーズに反応し、いち早く製品に反映する従来どおりのスタンスは58Rにも貫かれており、昨今需要が増えつつある宅録環境でアクセスの多いアンプ・ヘッドの入出力端子をフロント・パネルに配置し、音楽スタイルで嗜好が分かれるツィータ―のアッテネーターはスイッチ式を採用するなどの変更も施されている。
なお58Rの製品は、信頼性を担保するとともに、地域の活性化と世界市場での競争力を両立すべくイタリア本国で生産される。環境に優しい新素材の採用もあわせ、世界と未来を見据えた施策と言えるだろう。フロント・パネルなどには従来製品と同様にイタリア国土のほか、同社を率いるCEOマルコ・デ・ヴァージリスのイラストが描かれているが、シリーズ名の“58”はマルコ氏の年齢に由来するとのこと。本シリーズに対する自信のほどが伺えるネーミングだ。
#1:Amp Head
ここからは58Rシリーズにラインナップする製品群の実力を、アンプ・ヘッドから順に確認していく。
音作りの可能性を飛躍させる2種の多機能アンプ・ヘッド
Little Mark 58R
Little Marcus 58R
Back Panel(両モデル共通)
Little Mark 58Rは初代モデルから約20年が経過する“Little Markシリーズ”の最新モデル。新素材による筐体でさらなる軽量化を実現し、電源入力とスピーカー出力以外の入出力端子をフロント・パネルに配置。4バンドEQやscooped-mid(いわゆるドンシャリ・サウンド)スイッチ、OLD SCHOOL (250Hz以上の周波数帯をカットしてヴィンテージ感を演出)といった機能やスペックは先代機を踏襲しているが、内部はブラッシュ・アップされており、マークベースらしさを失うことなく、よりモダンで追従性の良いベース・サウンドが作りやすいようデザインされている。
マーカス・ミラーとの共同開発による“Little Marcusシリーズ”もLittle Marcus 58Rとして今冬新登場。Little Mark 58Rと同サイズ、同重量で、シルバーを基調としたフロント・パネルにはLittle Mark Vintage譲りのクラシカルなノブが並び、エフェクト・センド/リターンとXLRラインアウトの入出力端子や機能も前面に配置された。EQ1とEQ2の機能は先代機を踏襲しているが、EQ1の5バンドEQ(±16dB)は、中心周波数が65Hz/100Hz/500Hz/1.4kHz/6kHzにアップデートされた(先代モデルは65Hz/180Hz/500Hz/1.4kHz/3.8kHz)。また、EQ2のMILLERIZER(5~12kHzの帯域を+10dBまでブーストできるバンド・パス・フィルター)とOLD SCHOOL(200Hz~20kHzより下の帯域を通すロー・パス・フィルター)のスペックは先代機と変わりないが、マーカスとの協議により細かな修正が加えられ、良質なヴィンテージ・サウンドや抜けの良いスラップ・サウンドがより素早く設定できるようになったという。500W(4Ω)出力のクラスDパワー・アンプやBI-BAND LIMITERにも改良が加えられ、ダイナミクスに対する追従性を高め、高音域の余裕とナチュラルなサウンドを実現している。
Specifications
●出力:【両機共通】300W(8Ω)、500W(4Ω)●プリアンプ:【両機共通】ソリッドステート●パワーアンプ:【両機共通】クラスD●コントロール:【Little Mark 58R】3ウェイ・ロータリー・スイッチ、ミッド・ロー、ミッド・ハイ【Little Marcus 58R】ウルトラ・ロー、ミッド、ハイ・ミッド、ミラーライザー【両機共通】ゲイン、ロー、ハイ、オールド・スクール、ライン・アウト、マスター、オン/オフ・スイッチ、ミュート・スイッチ、プリ/ポストEQスイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ●入出力端子:【両機共通】インプット、フットスイッチ、スピーカー・アウト×2、スピコン・アウト、センド・エフェクト、リターン・エフェクト、ライン・アウト●外形寸法/重量:【Little Mark 58R】276(W)×256(D)×83(H)mm/2kg【Little Marcus 58R】276(W)×250(D)×83(H)mm/2.17kg●価格:【Little Mark 58R】121,000円、【Little Marcus 58R】148,500円
Sound Check by 山内あいな
Little Mark 58Rは、いつもの自分のヘッド(Little Mark Ninja)で設定しているツマミ位置で弾いてみましたが、鳴らした瞬間、“やっぱこの音だ”って安心感がありました。OLD SCHOOLのツマミがすごく良くて、いなたさのある、渋めの雰囲気に変わってくれます。scooped-midも便利で、エフェクターで作ったようなドンシャリ感を一発で再現してくれる。だから各EQと組み合わせながら、絶妙な塩梅を見つけてあげると良いですね。私は今ほぼエフェクターを使っていないんですけど、どうしても存在感やハイが欲しい場面が出てくる。そういう際にアンプで音色を一変できるのは嬉しい限りです。
Little Marcus 58Rは、見た目/音ともにインパクトがあります。まずウルトラ・ローが付いているのでロー感とパンチ感がすごい。“マーカス=スラップ”ってイメージがあるかもしれないけど、このパワーと抜け感は指弾きやピック弾きでもオススメ。特に5弦ベースを使う人には効果的だと思います。MILLERRIZERはハイ・ミッドあたりが持ち上がって、パワー感のある音に変化するんですけど、質感が一気に変わる。OLD SCHOOLと組み合わせて、奏法ごとに音を作り込みたいですね。ズドンと出てくるこのローは圧倒的で、EQ設定次第で輪郭も出せるし、普通のアンプでは出せない個性的なサウンドが作れると思います。
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