NOTES
ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。今回は“音価”について学びましょう!
はじめに
今回は“音価”についてです。音価とは“鳴っている音の長さ”であり、楽譜上では4分音符や8分音符などの各種音符で定義される音の長さのこと……などということは当連載でも何度か解説していますが、“なぜまた音価なのか?”というと、実はまだとても重要なことを書いておりませんでして……。決して忘れていたわけではないのですが、その理由は読み進めていけばわかります。今回はピッキングするタイミングではなく、音の長さと音を止めるタイミングに着目して音価を掘り下げます。演奏のクオリティが上がらないとお悩みの新米ベーシストさんは特に必読ですよ!
音価の復習
何度も書いていることですが改めて。音価は音の長さのことで、例えば8分音符は4分音符の半分の長さであり、同じ4分音符でも楽曲のBPM(テンポ)が速いほど音の長さは短くなります。複数の音符と休符を組み合わせることでさまざまなリズム・パターンが作れますし、これに音程を組み合わせることでメロディやフレーズを組み立てることができるわけですね。
楽譜には音を出すタイミングと音程が書いてあるわけですが、休符がある楽譜の場合は音を止めるタイミングも書いてありますね。もちろん休符がない楽譜は音を止めなくて良いわけではなくて、異なる音程の音が重なったり途切れたりすることなく、しかるべきタイミングで音程が入れ替わるなり、再び同じ音程の音を鳴らすなりする必要があるわけです。
DTMではMIDI音源などを鳴らすためのデータ(演奏情報)を、縦軸が音程、横軸が発音タイミングである “ピアノロール”という画面で表示するのですが、この画面では音の長さや音程の切り替わりなど、上記の概念が視覚的に捉えやすいかと思います。
仮に上記の譜例を持続音が短い木琴で演奏するならば、よほど速いテンポでない限り単音で音が途切れないように演奏するのは難しいし、そもそも音の長さを意識する必要もないかと思いますが、持続音の長いベースで演奏する場合はピッキングするタイミングと同じくらい、音を止めるタイミング、つまりミュートのタイミングが重要です。なんならベースはピッキングとミュートのタイミングでリズムを奏でる楽器とも言えるかと思います。前回解説した正確に音を止める“ミュート”のテクニックを実践的に活用しましょう。
音価を表現しよう
下記の譜例はどの小節もピッキングのタイミングは同じで、小節ごとに音価が変化しています。つまりミュートのタイミングだけで違いを生むフレーズなのですが、きちんと弾き分けられるでしょうか?
ピアノロールを見ても明らかなように、16分音符は8分音符の半分の長さです。16分音符をスタッカート気味に弾くことで異なるニュアンスを表現することもできますが、16分音符を単に“短い音符”と認識せず、あえてキッチリ8分音符の半分の長さで演奏してみましょう。“たっぷり感”のある落ち着いた演奏に聴こえませんか? この傾向はテンポが遅いほど顕著かと思います。自分の演奏が落ち着かないように聴こえるとか、ノリが安定しないとか、そういった経験がある人は今一度、自分が弾いているフレーズの音符の長さを確認してみてください。
音価で表現しよう
スウィング系のウォーキングです。見てのとおり1小節目では音を切らず4分音符だけ、2小節目では3連8分ウラですべてピッキング、3小節目は3連8分ウラですべて休符、4小節目では3拍目だけ3連8分ウラを休符としています。どれもフレーズとして間違っているというわけではないのですが、1小節目だけではスウィング感を表現できませんし、2小節はやや音符が多くクドい印象は否めません。4小節目のように適度に休符を入れるだけでもスウィング感は演出できます。グルーヴやノリを演出する要素はタイミングや音の長さだけでなく、ベロシティ(音の強弱)も重要な要素ですが、極端な例として挙げれば1小節に1音しか弾かなくても音を切るタイミングをコントロールするだけでスウィング感(ハネ具合)やノリ、グルーヴを表現することも不可能ではないわけです。
音価をコントロールしよう
もうひとつ譜例を弾いてみましょう。何でもない2オクターヴのGメジャー・スケールの昇降ですね。律儀に譜例を厳守するならば休符はひとつもないので音が途切れず、重ならずに弾かなければいけません。どんなに手の大きな人でも、この譜例をフィンガリングのみで弾くことはできないでしょうし、ポジションの移動(シフティングとも言います)が不可欠です。ポジションを移動するとその音程をキープすることはできないので、いかに素早く正確なポジションに移動し、意図しない音切れを目立たなく演奏することができるかが勝負なのです。
これを踏まえて普段弾いている楽曲のフレーズや自分の演奏を再検証してみてください。ポジション移動や弦移動で不用意に音が途切れたり、重なったりしていませんか? もし休符かと思えるほど音が途切れてしまっているなら落ち着かない演奏に聴こえるでしょうし、そもそも不用意な音切れが発生しているうちはいつまで経っても周期性を構築できないので、“心地よいノリやグルーヴのある演奏”にはならないでしょう。
最後に
というわけで、実は今回は前回の“ミュート”の続編という流れでしたので、まだ読んでない人はぜひそちらも読んでみてくださいね。音価を厳守した譜面通りの演奏が必ずしも良い演奏とは限らないし、音価だけがノリやグルーヴを左右するわけでもありませんが、少なくともコントロールされていない音切れは極力減らして安定感のある演奏を目指しましょう。