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    INTERVIEW – 村井研次郎[cali≠gari]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto
    • Live Photo:Mikako Ishiguro

    “歌うベース”のためにある
    超絶&変態テクニックの使い道

    2009年に復活した伝説の V 系バンドによる、約3年ぶりのフル・アルバムが届いた。1990年代にcali≠gariに加入、同バンドの活動休止以降はSEX MACHINEGUNSへの参加を経て、現在もcali≠gari、ELLEGUNSといったバンドでの活動をはじめ、2018年にはソロ・アルバムを発表するなど変態&テクニカルなベース・プレイで唯一無二の低音を響かせてきたベーシストが村井研次郎だ。7年ぶり3回目のビクター復帰から約2年を経てついに完成したニュー・アルバム『15』は、スパニッシュなリズムが疾走する1曲目の「一つのメルヘン」から、とにかくエネルギッシュで独創性あふれる楽曲が並ぶ大傑作。ベース・ラインはすべて“鼻歌で作る”、すなわち“歌心”をなによりも大切にしていると語る彼は、今作の低音世界をどのように作り上げたのか。ベース界屈指の実力者、村井研次郎の最新モードに迫った。

    フレッテッドをフレットレスっぽく弾くのが好きなんです。

    ──新作『15』の制作はいつ頃から始まりましたか? また作るにあたってのコンセプトなどはあったんですか?

     cali≠gariはいつも曲作りはしているので、いつからというのはないんですけど、ただ“元気が出るアルバムを”っていうコンセプトは最初から言ってましたね。cali≠gariらしくないけど(笑)。とにかく、ひたすら爆発力があるアルバムを作ろうとは思ってました。

    ──パンデミック下のリモート環境で、cali≠gariの制作プロセスにはなにか変化はありましたか?

     このバンドはもう10年以上ずっとオンラインで曲作りをしているので、リモートの先駆けみたいなバンドだと思いますね(笑)。LINEとかが出てくる前から、メールでデータを共有しながら作っていたので。なので、制作スタンスは全然変わらなかったんですよ。

    ──レコーディングは基本自宅でということですが、今回はどういう機材環境だったのでしょうか?

     レイクランドのUSA製5弦ベースでほぼ全曲を弾いていて、オーディオ・インターフェースでパソコンに直接つないで録りました。あとはフレットレス・ベースと、最近入手したLTDというブランドのアコースティック・ベースを弾いた曲もあります。レイクランドは2004年くらいに入手したもので、ものすごく音がいいですね。SEX MACHINEGUNSのレコーディングでも弾いていたので、もう18年ほど使っていると思います。それとフレットレスはESPの人が昔作ってくれたやつで(笑)、これもこの一本でずっとやってます。

    ──フレットレス・ベースは、どの曲で使ったんですか?

     「嗚呼劇的」と「光と影 -His Master’ s Voice-」ですかね。それと、「100年の終わりかけ」はアコースティック・ベースで弾いています。

    ──「ケセ」や「この雨に撃たれて – 死すれども冠を捨てず篇 -」でもフレットレスっぽい音が聴こえましたが?

     前にも誰かにそう言われたことありますが、違うんですよ(笑)。僕は普通のベースを弾いてても、フレットレスに聴こえるってよく言われるんです。でも、両者の音にあまり差がないというのは、それはそれで自分でも嬉しいかもしれない。僕はフレットレスをバキバキ弾くのが好きだし、フレッテッドをフレットレスっぽく弾くのも好きなんですよ。

    15
    ビクター

    VICL-65593
    左から、村井、石井秀仁(vo)、桜井青(g)。

    ──“フレッテッドをフレットレスっぽく”とは、具体的にはどういう弾き方になるのでしょう? 

     ひたすらなめらかに弾く、ことですかね。あとは多分チョーキングです。僕は左手をすごくベンドするんですよ。ヘタすると4弦のF♯だったらG♯くらいまではビヨーンって音程を上げてしまう。「ケセ」もそんなプレイばっかりなので、フレットレスに聴こえる瞬間があるのかもしれないですね。

    ──「ケセ」はイントロのベース・リフから、ベンドしていますよね。

     このイントロは実はすごい難しいんです。これ、3弦の開放弦のAと4弦のAを混ぜて弾いてるんですよ。フレーズの1周目が4弦のAに行ってベンド、2周目はプリング・オフで開放弦のAに行っています。AはAでも、1周目はAからB♭にベンドしたいので4弦のAなんですね。あと、このイントロはフレーズがほとんどウラなので、ずっと空ピッキングも入ってるし、弾いてみるとものすごくしんどいと思います(笑)。

    ──そんな村井さんの奏法を語るうえで重要な“ベンド”ですが、どういうきっかけで使い始めたのでしょう?

     90年代からずっと、低音弦でベンドしてしまうんですよね。これ、もともとは爆風スランプの江川ほーじんさんからの影響じゃないでしょうか。高校生か大学生のときにほーじんさんの教則ビデオを観て、えげつないベンドをしていた記憶があります。“1音くらいビヨーンってやっちゃおうぜ”っていう(笑)。でもこれ、けっこう左手の握力がいりますよ。

    ──ベンドの際、左手はどういうフォームなんですか?

     全部の指を使ってやってますね。4弦側から1弦側に弦を下ろす感じで。逆に、4弦側に上げるチョーキングはまったくやらないです。この奏法、cali≠gariには合いますよね。やっぱり変態っぽくしたいんで(笑)。

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